対ドルで史上最安値更新止まらずトルコリラ円も史上最安値更新
〇トルコ円、6/7に5.96の安値をつけ、史上最安値6.17を大幅に割り込む、8日午前も安値圏で推移
〇対ドル、7日早朝からリラ売り勢い付き、午前中に22リラ台へ到達、夕刻には23リラを突破する暴落商状
〇外貨準備高の実質枯渇で中銀介入薄まり、リラ安抑制できず暴落か
〇通貨危機的な暴落商状に見通し困難ながら、当面は対ドルでの落ち着きどころを要見定め
〇6.10超えからはいったん戻しに入るとみて6.15前後への上昇を想定するが、戻り一巡後の反落警戒
〇5.90割れからは5.80、5.70台前半を順次試す下落を想定
【概況】
トルコリラ円の6月7日は概ね6.47円から5.96円の取引レンジ、8日早朝の終値は6.03円で前日終値の6.47円からは0.44円の円高リラ安となった。
エルドアン大統領再選を挟んでリラの先安感が勢いを増して対ドルでは連日の史上最安値更新が続いてきたが、7日はトルコ中銀によるリラ安阻止への市場介入が薄まり歯止めが効かなくなったとの見方からリラ売りがさらに勢いを増して一時は前日比で7%を超える暴落商状となった。
トルコリラ円は昨年7月からリラ安を気にしながらもドル円の騰落を追いかける展開で推移してきたが、ドル円が5月2日への上昇で3月8日高値に迫った局面でトルコリラ円の戻りは鈍く、5月18日のトルコ大統領選挙第1回目投票でのエルドアン大統領優勢とその後に再選見通しがさらに強まる中でドル高リラ安が加速したためにトルコリラ円はドル円の騰落について行けなくなり、ドル円が1月16日以降の高値を更新する上昇へ進んだものの、トルコリラ円は1月16日と3月24日に同値で付けた6.74円のダブル底型の下値支持線から転落した。
6月7日の急落はタガが外れた状況での暴落商状となり、トルコリラ円は2021年12月20日に付けたこれまでの史上最安値6.17円を大幅に割り込んだ。
6月8日午前序盤も5.96円から6.02円のレンジで最安値圏にとどまっている。
当面は対ドルでのリラ暴落が落ち着くところを見定める必要があるが、通貨危機的な暴落商状の場合は下値目途に対して高を括れないということも念頭に入れておきたい。
【対ドルでのリラ安続き、1ドル23リラ台へ】
ドル/トルコリラの6月7日は概ね23.31リラから21.57リラの取引レンジ、8日早朝の終値は23.25リラで前日終値の21.57リラからは1.68リラのドル高リラ安だった。
エルドアン大統領の再選によるリラの先安不安が勢い付いて連日の史上最安値更新となり、2021年12月にかけての暴落商状時に近い動きとなっており、6月6日に取引時間中の最安値を21.60リラへ、終値ベースでの史上最安値を21.57リラへ更新していたが、7日は早朝からリラ売りが勢い付いて午前には22リラ台へ到達、夕刻には23リラを突破する暴落商状となった。8日午前序盤には23.40リラへと最安値を更新しているが、ベンダーによっては8日午前序盤に23.56リラの安値提示も見られる。
2021年12月のリラ暴落においては、11月に月間ベースで月初の安値9.44リラから高値13.74リラへと4.30リラのドル高リラ安となり、12月20日に18.36リラへとさらに暴落している。現状は6月の月間安値20.51リラから23.40リラへ2.89リラのドル高リラ安であり、2021年11月に匹敵する暴落商状であり安値の目途が立たない状況と思われる。
【外貨準備高の実質枯渇で中銀介入によるリラ安抑制できず】
6月7日のリラ暴落については、エルドアン大統領再選と新内閣発表により選挙前まで続いてきたトルコ中銀による非公式市場介入によるリラ安抑制の動きが後退してリラ安が放置されたためではないかとの見方もある。
6月8日夜には週次のトルコ中銀外貨準備高の発表があるが、6月1日に発表された外貨準備高統計では5月26日時点の総準備高(グロス)が565.2億ドルとなり5月19日時点の588.3億ドルから大幅に減少して2021年11月以降の最低水準となったが、中銀の短期負債を除く純外貨準備高(ネット)は5月19日時点でマイナス1.5億ドルとなり2002年21年ぶりのマイナス勘定となり、5月26日時点ではマイナス40.05億ドルまでマイナス勘定が拡大した。純外貨準備高のマイナスは公式データのある2002年序盤以来となった。
純外貨準備高がマイナス勘定となったために、トルコ中銀は負債を拡大してリラ買い介入を継続するのか、介入を一時停止するか大幅にトーンダウンするか選択を迫られる状況にある。
4月14日に金融大手JPモルガンが大統領選挙後のメインシナリオとして1ドル=24〜25リラへ下落して年末には26リラへ続落するとし、最悪のシナリオでは年末に1ドル30リラを付ける可能性もあるとしたが、現状はその最悪レベルへ進み始めている懸念を濃くするものだ。ゴールドマンサックスは6月4日に2023年末の見通しについて従来の1ドル22リラから1ドル28リラへ下方修正して3か月後に23リラ、6か月後に25リラ、12か月後に28リラと予想したが、既に23リラ台に到達しており、さらに下方修正される可能性もありそうだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月2日午前安値を直近のサイクルボトムとして底割れからは新たな弱気サイクル入りとしていたが、6月6日午前序盤へ一段安したために6日午前時点では6月3日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして7日午前から9日午前にかけての間への下落を想定した。
6月7日夜の急落が収まっていないためまだ一段安余地ありとみる。強気転換には6.10ドル超えから続騰するような勢いのある反騰が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では6月6日朝への一段安により遅行スパンが悪化して先行スパンからの転落状況がつづいているとして遅行スパン悪化中は安値試し優先としたが、その後も両スパンそろっての悪化が続いている。遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみるが、先行スパンからの転落が解消されないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。反騰入りには連騰による上昇で先行スパンに潜り込む上昇が必要と思われる。
60分足の相対力指数は6月7日午後に10ポイントを割り込んでから30ポイント台へ戻しているものの相場は安値圏の横ばい程度の動きにとどまっているのでまだ一段安余地ありとするが、相場が一段安する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られる場合はいったん戻りを入れやすいと注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.90円を下値支持線、6.10円を上値抵抗線とする。
(2)6.10円手前にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。6.10円超えからはいったん戻しに入るとみて6.15円前後への上昇を想定するが、戻り一巡後の反落警戒とする。
(3)5.90円割れからは5.80円、5.70円台前半を順次試す下落を想定する。5.70円以下は反騰注意とするが、暴落商状のため、パニック売りの連鎖でさらに安値水準が切り下がる可能性もあると注意する。
【当面の主な予定】
6月8日
20:30 週次 外貨準備高 6/2時点 グロス (5/26時点 565.2億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 6/2時点 ネット (5/26時点 -40.05億ドル)
6月09日
16:00 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 5.5%)
16:00 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -0.1%)
6月12日
16:00 4月 失業率 (3月 10.0%)
16:00 4月 経常収支 (3月 -44.84億ドル)
注:ポイント要約は編集部
注:ポイント要約は編集部
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