米新規失業保険申請件数が予想以上に悪化、米長期債利回り低下で139円を割り込む
〇ドル円、6/8夜の米新規失業保険申請件数が悪化、米長期債利回りの低下と共に139円割れへ下落
〇米経済指標や他中銀の動向を見て、日々の騰落が繰り返されている状況
〇昨日発表の米失業保険申請件数は予想以上に悪化、来週のFOMCにおける利上げ停止の公算がより高まる
〇来週はFOMCをはじめ、インフレ指標の発表や各国の政策金利発表といった重要イベントが続く
〇米長期債利回りは総じて反落、NYダウは3連騰、ナスダックも米長期債利回り低下を好感して上昇
〇139.40超えからは139.70前後への上昇を想定するが、その後の反落を警戒する
〇138.70割れからは下向きとして6/1深夜安値138.45試しとし、底割れからは138円試しへ向かうとみる
【概況】
ドル円は6月8日夜の米新規失業保険申請件数が予想を大きく上回る悪化となり来週のFOMCにおける利上げ停止の公算がより高まったとして米長期債利回りの低下と共に139円割れへ下落した。
市場の関心は来週の米5月CPI、FOMC、ECB理事会、週末の日銀金融政策決定会合と続く重要イベントの通過待ちとなっているが、先週末の米雇用統計での就業者増加数が予想を大幅に上回ったとしてドル高となり、6月5日はISMサービス業景況指数の悪化によりドル安となり、6日は豪中銀利上げによる豪ドル高でドル安となってから139円割れ回避による買い戻しで上昇し、7日はカナダ中銀が予想外に利上げを決定したことによりいったんドル安反応を見せてから米長期債利回り上昇で反騰、8日は失業保険申請件数の悪化でドル安と、米経済指標や他中銀の動向を見て日々の騰落が繰り返されている。
6月8日は中国のインフレ指標の他はカナダの5月雇用統計等があるが、主要米経済指標の発表はなく手掛かりに欠けるため、昨夜からの安値模索を続けつつも来週のイベント連続を踏まえて大きくは動き難いところと思われる。
【米失業保険申請件数が予想以上に悪化】
米労働省による新規失業保険申請件数は6月3日までの週間で前週比2万8000件増の26万1000件となり3週連続の悪化で市場予想の23万5000件を大幅に上回った。前週分は当初の23万2000件から23万3000件に上方修正された。
失業保険受給者総数は5月27日までの週間で175万7000人となり前週から3万7000人減少して市場予想の180万人を下回った。
1週遅れの失業保険受給者数は予想を下回ったものの失業保険申請件数は1年半ぶりの高水準となっており、6月2日の米5月雇用統計で就業者数は大幅に増加したものの失業率が4月の3.4%から3.7%へ悪化したことや平均時給の伸びが鈍化したことも重ね合わせると労働市場が緩み始めている印象を強め、来週のFOMCにおける利上げ停止の公算が一段と高まったようだ。
【来週は重要イベントが続く】
来週は6月13-14日の予定でFOMCが開催され、日本時間15日早朝に政策金利の発表と議長会見があるが、その前には6月13日夜の米5月CPI、14日夜の米5月PPIとインフレ指標の発表があり、FOMC後の15日夜にはECBの政策金利発表、週末の16日には日銀金融政策決定会合の結果と植田総裁会見がある。
今週は6月6日に豪中銀が現状維持予想に反して政策金利を0.25%引き上げて4.10%とし、次回以降の追加利上げの可能性を示唆し、6月7日にはカナダ中銀が現状維持予想に反して政策金利を0.25%引き上げて4.75%としている。世界景気の減速感があり、米銀破綻をきっかけとした与信基準の厳格化が実質的な引き締め効果をもたらしていることで主要中銀も昨年秋にかけてのハイペースでの利上げから減速期に入り利上げ停止へのプロセスへ進み始めているところではあるが、インフレが鈍化しているものの依然として高水準にあることからインフレ抑制のための利上げ要請が再び強まっている。
米FRBは前回のFOMCにおいて0.25%利上げを決定した上で「追加の金融引き締めが適切」との文言を削除したことで6月FOMCでの利上げ見送りの公算が高まったが、直後の会見でパウエルFRB議長は「利上げ停止を決めたわけではない」とくぎを刺している。その後のFRB高官や地区連銀総裁らの発言は、当初は追加利上げが適切とのタカ派姿勢が目立っていたものの、利上げをいったん停止して様子を見ながらその後の指標次第で追加利上げを探るというハト派姿勢に変わってきている。
当面は来週の米CPIがどの程度鈍化するのかを見定めて、FOMCが利上げを見送った後の姿勢を思惑してゆくことになると思われる。
因みに国際通貨基金(IMF)のコザック報道官はFRBの金融政策に対して「インフレが予想よりも根強いならFRBは金利をより長期にわたってより高くする必要がある」と述べ、5月末の対米経済審査で示した2024年遅くまでに政策金利を5.25〜5.50%で維持することを要請した「IMFのアドバイスは変わらない」と述べている。
【米長期債利回りは低下、NYダウは続伸】
6月8日の米長期債利回りは新規失業保険申請件数が予想以上に悪化したことで総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.08%低下の3.72%となり、6月7日の前日比0.14%の大幅上昇からの反落となった。30年債利回りは0.06%低下の3.89%となり7日の0.10%上昇から反落、利上げに敏感な2年債利回りは0.04%低下の4.52%となり7日の0.08%上昇からの反落となった。
6月8日のNYダウは前日比168.59ドル高と上昇、6月6日からの3連騰となり、ナスダック総合指数も前日の171.52ポイント安の解消には至らなかったものの米長期債利回り低下を好感して133.62ポイント高と上昇した。
米国株式市場にとっては米経済指標が深刻な景気後退感を連想させる悪化となる場合は悲観売りされるものの、利上げ停止の可能性を高めても不況感をそれほど強めない経済指標の悪化なら長期金利低下を好感して逆に買われている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は6月1日深夜安値から4日目となる6月7日夜安値で目先の底を付けて反騰したが、8日早朝に140円台序盤へ戻したところからの失速で7日夜安値を割り込んだため、現状は8日早朝高値を起点とした下落期入りとして12日夜から14日夜にかけての間へ下落継続しやすい流れと思われる。来週の米CPI等を見ながら反騰入りするか一段安するか試されてゆく展開と思われるが、目先は安値試しへ向かいやすい状況と考える。
60分足の一目均衡表では6月7日夜の反騰で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いたものの、8日夜の反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。7日夜安値を割り込んでいるため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、下げ渋りからやや戻して遅行スパンが好転しても先行スパンを上抜き返せないうちはその後に悪化するところから下げ再開とする。強気転換は両スパン揃って好転するところからとする。
60分足の相対力指数は6月8日深夜の急落で30ポイントを割り込んでからはやや戻しているものの7日深夜安値を割り込んだため40ポイント台へ戻すところは売られやすく20ポイント前後を試す下落余地があるとみる。強気転換には50ポイント超えから続騰するような勢いある上昇が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月1日深夜安値138.45円を下値支持線、139.40円を上値抵抗線とする。
(2)139.10円から139.40円手前にかけての水準は戻り売りされやすいところとみる。139.40円超えからは139.70円前後への上昇を想定するが、その後の反落を警戒する。
(3)138.70円割れからは下向きとして6月1日深夜安値138.45円試しとし、底割れからは138円試しへ向かうとみる。138円台序盤は買い戻しも入りやすいとみるが、139円以下での推移か直前安値から1円を超える反騰が見られないうちは週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/9(金)
08:50 (日) 5月 マネーストックM2 前年同月比 (4月 2.5%)
10:30 (中) 5月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (4月 0.1%、予想 0.2%)
10:30 (中) 5月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (4月 -3.6%、予想 -4.2%)
17:00 (欧) デギンドスECB副総裁、セミナー参加
21:30 (加) 5月 雇用統計 失業率 (4月 5.0%、予想 5.1%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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