トルコリラ円見通し ドル高リラ安進行でドル円に追いつけず(23/5/17)

トルコリラ円の5月16日終値は6.91円、前日終値の6.91円と変わらずだった。取引レンジは概ね6.93円から6.88円。

トルコリラ円見通し ドル高リラ安進行でドル円に追いつけず(23/5/17)

ドル高リラ安進行でドル円に追いつけず

〇トルコリラ円、ドル円追いかけつつドル高リラ安に圧迫される展開、5/16取引レンジは概ね6.88ー6.93
〇対ドル、エルドアン政権の継続感がドル買いリラ安を勢い付かせ、史上最安値を連日更新
〇ガーディアン紙、現政権継続だと深刻な通貨危機やマクロ経済の不安定さが深刻化すると指摘
〇欧州復興開発銀行は2023年トルコ成長率見通しを3.0%増から2.5%増へ下方修正
〇1ドル20リラを超えるのも時間の問題となってきた印象
〇6.93以下での推移中は下向き、6.88割れからは6.85前後への下落を想定
〇6.93超えからは6.96目指す上昇を想定するが、6.93ー6.96手前は戻り売りにつかまりやすい

【概況】

トルコリラ円の5月16日終値は6.91円、前日終値の6.91円と変わらずだった。取引レンジは概ね6.93円から6.88円。
昨年7月後半からはトルコリラ円の騰落はドル円を追いかける展開で、ドル高リラ安が緩やかに進行しているところではドル円の騰落が勝っていたが、今年3月以降はドル高リラ安が徐々に勢い付いてきたためにドル円が5月2日高値で3月8日高値に迫ってダブルトップ水準まで上昇した局面においてはトルコリラ円の5月2日高値は3月8日高値から大きく切り下がった水準にとどまりドル高リラ安の影響が強まってきた印象を与えた。
5月14日のトルコ大統領選挙においてエルドアン大統領が野党統一候補のクルチダルオール氏に対してやや優勢の得票率で5月28日の決選投票へ向かうこととなり、エルドアン氏の再選なら主要国とは異なる高インフレ下での利下げやトルコ中銀の独立性を削ぐ政治圧力が継続するとしてドル高リラ安が勢いを増していることでトルコリラ円はドル円を追いかける勢いに欠けてきている。

5月16日は夕刻の独ZEW景況指数が予想以上に悪化したことや夜の米経済指標が総じて強かったことで米長期債利回りが3連騰となり、ドル円は深夜に136.68円へ上昇して5月11日夜安値133.74円及び5月5日未明安値133.46円以降の高値を更新したが、トルコリラ円は16日夜の反発では6.93円にとどまって5月15日高値6.96円には届かなかった。今後はしばらくドル円を追いかけつつもドル/トルコリラにおけるドル高リラ安に圧迫される展開が続くのではないかと思われる。

【対ドルでリラ安が大幅に進行中、史上最安値を連日更新】

ドル/トルコリラの5月16日終値は19.72リラ、前日終値の19.65リラからは0.07リラのドル高リラ安だった。取引レンジは概ね19.74リラから19.48リラ。
5月14日に行われた大統領選挙の1回目投票では現職のエルドアン氏が49.5%、野党統一候補クルチダルオール氏が44.89%となり、いずれも50%に届かなかったことで5月28日に二回目の決選投票となった。選挙前には野党統一候補の支持率がエルドアン氏よりもやや優勢だったものの、結果はエルドアン氏がやや優勢となっており、決選投票でもエルドアン氏が優勢の可能性が高まっていることでエルドアン政権の継続感がドル買いリラ安を勢い付かせている。
手元のデータでは取引時間中の史上最安値は5月15日に19.69リラへと最安値を更新していたが16日には19.74リラへとさらに更新し、終値べースでも15日終値19.65リラを超えて最安値を更新した。
5月17日午前は19.75リラから19.71リラのレンジで推移しており最安値更新が続いている。

【1ドル=20リラに迫る】

5月16日にガーディアン紙はエルドアン政権が継続する場合は深刻な通貨危機やマクロ経済の不安定さが深刻化すると指摘した。また欧州復興開発銀行(EBRD)は2023年のトルコ成長率見通しを従来の3.0%増から2.5%増へ下方修正した。2月の大地震の影響に加えて経常収支の悪化、外貨準備高の減少、リラ安の進行が成長鈍化要因としている。
選挙前にはトルコの街中にある両替店でのドル/トルコリラはすでに1ドル20リラを超えたとされ、FX市場レートに対して5%安が実勢とされている。
国際金融協会(IIF)は4月27日時点に「我々が適正価値とする1ドル=21.00リラよりも大幅に下げるとの見方が大半を占める」とし、トルコ中銀の国内エコノミスト調査による2023年末のドル/トルコリラ予想値は1ドル=23.1535リラ、4月14日には金融大手JPモルガンが大統領選挙後のメインシナリオで1ドル=24〜25リラへ下落して年末には26リラへ続落するとしているが、1ドル20リラを超えるのも時間の問題となってきた印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月11日夜安値を直近のボトムとした強気サイクル入りとして15日午後から17日午後にかけての間への上昇を想定したが、15日昼高値からの反落で6.90円まで下げたために16日午前時点では15日昼高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りとして16日夜から18日夜にかけての間への下落を想定した。
5月16日夜の反発では高値更新へ進めずに反落しているので引き続きボトム形成中とし、強気転換は15日昼高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では5月16日夜の反発から再び反落するなど乱調な展開のために遅行スパンは実線と交錯して方向感に欠ける。先行スパンに対しても突破しきれずいったん転落するなど方向感が定まらない。このため、15日昼高値を超えるところからは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、高値更新へ進めないうちは一段安余地ありとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は16日夜の反発で60ポイント台へ上昇したもののその後に40ポイント割れへ反落するなど乱調な展開のため、次の60ポイント超えからは70ポイント台を目指す上昇を想定するが、次に40ポイントを割り込むところからは下落継続とみて20ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.88円を下値支持線、6.93円を上値抵抗線とする。
(2)6.93円以下での推移中は下向きとし、6.88円割れからは6.85円前後への下落を想定する。6.85円以下は反騰注意とするが、6.90円以下での推移が続く場合は18日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.93円超えからは6.96円を目指す上昇を想定するが、6.93円から6.96円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

5月18日
 20:30 週次 外貨準備高 5/12時点 グロス (5/5時点 684.1億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 5/12時点 ネット (5/5時点 67.8億ドル)
5月19日
 トルコ大統領選挙と国会議員選挙の最終結果発表
5月22日
 16:00 5月 消費者信頼感指数 (4月 87.5)
5月24日
 16:00 5月 製造業信頼感指数 (4月 108.0)
 16:00 5月 設備稼働率 (4月 75.4%)
5月25日
 20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 8.5%)
5月28日 大統領選挙第二回投票

注:ポイント要約は編集部

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