対ドルでの史上最安値更新続くもドル円の大幅続伸で11日からの反騰継続
〇トルコリラ円、5/16夕刻6.88まで下げるも、その後買われて6.97まで高値を切り上げる
〇ドル円の騰落を追いかけながらも、リラ安による圧迫感で上値が抑えられ気味で推移
〇対ドル、取引レンジは概ね19.78から19.52、前日に続き取引時間中・終値ベースともに史上最安値更新
〇先日の大統領選の結果エルドアン氏がやや優勢、エルドアン政権継続感でリラ安に歯止めかからず
〇6.95以上での推移中は一段高余地ありとし、6.99から7.02にかけての水準を試す上昇を想定する
〇6.95割れを弱気転換注意とし、6.93割れからは6.90前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の5月17日終値は6.96円、前日終値の6.91円から0.05円の円安リラ高となった。取引レンジは概ね6.97円から6.88円。
対ドルでリラが最安値を連日更新する中でトルコリラ円はドル円の騰落を追いかけながらもリラ安による圧迫感で上値が抑えられ気味で推移しているが、5月16日から18日早朝にかけてドル円が一段高したことにより3日ぶりに反発した。
ドル円は4月28日の日銀金融政策現状維持決定後の上昇で5月2日高値137.76円へ上昇した後は5月4日未明の米FOMCを通過しながら5月5日未明安値133.46円へ下落し、いったん戻した後に5月10日の米CPIと11日の米PPI発表を通過して11日夜に133.74円へ反落したが、いずれも3月24日以降の底上げ基調を維持して下げ止まり、12日夜の米ミシガン大による5年先期待インフレ率の上昇と、16日の米4月小売や鉱工業生産の改善及び地区連銀総裁らによる早期利上げ停止への否定的発言等をきっかけとした米長期債利回りの上昇で18日早朝には137.70円をつけて5月2日高値に迫った。
トルコリラ円は5月2日に7.08円へ上昇したところから5月5日未明に6.85円へ下落し、いったん戻したところから5月11日夜にかけての円高局面で6.83円へ失速して5月5日未明安値を割り込んだ。ドル円が底上げ基調を維持したもののトルコリラ円はドル高リラに圧されて安値を更新した恰好だ。しかしその後はドル高リラ安が続いたもののドル円の大幅上昇に押し上げられて15日には6.95円へ上昇し、16日夕刻に6.88円まで反落したところも買われて6.97円まで高値を切り上げた。
5月18日午前序盤は6.97円から6.95円のレンジで推移しているが、ベンダーによっては6.98円や7.01円の高値提示も見られる。
当面は中長期的なドル高リラ安がさらに勢い付くことを警戒しつつ、目先の動きはドル円を追いかけながら、ドル円が上昇する際のトルコリラ円の上昇はドル円に対してやや控えめでの推移となりやすいのではないかと思われる。ただし、1ドル20リラを超えて暴落商状が発生する場合には2021年12月にかけての暴落時のような展開に陥りかねないと注意する。
【対ドルでのリラ安に歯止めかからず、取引時間中及び終値での史上最安値を連日更新】
ドル/トルコリラの5月17日終値は19.74リラ、前日終値の19.72リラから0.02リラのドル高リラ安となった。取引レンジは概ね19.78リラから19.52リラ。
5月14日の大統領選挙で現職のエルドアン大統領と野党統一候補のクルチダルオール氏が共に過半数に達しなかったもののエルドアン氏がやや優勢となり5月28日の決選投票へ向かうこととなったため、過去20年間続いてきたエルドアン政権による強権的な政治が続き、高インフレの進行中に連続利下げを強行するなどしてきた非伝統的な金融政策が続くことへの懸念でリラ売りが勢いを増している。
手元のデータでは5月16日に19.74リラをつけて取引時間中の史上最安値を更新したが、17日もさらに安値を更新し、終値ベースでは16日の19.72リラで最安値を更新していたところから17日もさらに最安値更新している。
5月18日午前序盤は19.78リラから19.69リラのレンジで推移しており、最安値更新を伺う展開が続いている。
【エルドアン政権継続感でリラ安に歯止めかからず】
5月14日のトルコ大統領選挙開票率は100%となり、得票率は現職のエルドアン氏が49.52%、野党統一候補のクルチダルオール氏は44.88%でいずれも過半数に届かず、5月28日の決選投票へ進むこととなった。敗退したオーガン候補らの5.6%分の取り合いとなるもののエルドアン氏がやや優勢のためエルドアン政治が継続する可能性が高まっており、リラの暴落的な下落へ進みかねないとの懸念が強まっている。
(1)トルコのGDP成長率はパンデミック後に大きく回復したものの2022年後半から鈍化に入り、前年比は2022年1-3月期の7.6%、4-6月期の7.8%から7-9月期に4.0%へ減速、10-12月期は3.5%へさらに減速した。2月6日のトルコ・シリア大地震の影響もあり2023年はさらに鈍化傾向となる見通しだが、エルドアン政権の継続なら上手く回っていない経済政策への期待感は薄く景気後退への不安が強まると思われる。
(2)世界のインフレ率が高止まりする中で対ドルでリラが史上最安値を更新し続けていることで貿易収赤字と経常赤字の拡大が続き、財政収支も過去最悪の状況に陥っているが、エルドアン政治が続くならこれらの改善への期待も大きく後退する。
(3)エルドアン政権はインフレ抑制のために通常なら利上げすべきところを独自の非伝統的な思想により大幅利下げを行い、異を唱える中銀総裁を次々と解任してきたが、政権継続ならトルコ中銀の独立性は損なわれたままとなり、リラ防衛のための市場介入で外貨準備高を減らす流れも続きかねず、海外投資家からの信頼感がさらに薄まると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月11日夜安値からの上昇が一巡して15日昼高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたとして16日夜から18日夜にかけての間への下落を想定した。
5月17日午前時点では15日昼高値超えからは強気サイクル入りとしたが、17日早朝への上昇で15日昼高値を上抜いたため、16日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。サイクルトップ形成期は18日の日中から22日昼にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとするが、6.95円割れを弱い転換注意とし、6.93円割れからは弱気サイクル入りとして19日夜から23日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月17日の上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンを上抜いた。その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。
60分足の相対力指数は5月17日早朝に70ポイントに到達した後も60ポイント台を維持しているのでまだ上昇余地ありとするが、相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる場合は弱気逆行からの下落に注意し、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.95円を下値支持線、7.01円を上値抵抗線とする。
(2)6.95円以上での推移中は一段高余地ありとし、6.99円から7.02円にかけての水準を試す上昇を想定する。7.00円以上は反落警戒とし、その後に6.95円を割り込むところからは下げ再開の可能性が高まるとみるが、9.95円以上を維持しての推移なら19日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)6.95円割れを弱気転換注意とし、6.93円割れからは6.90円前後への下落を想定する。6.90円以下は反騰注意とするが、6.93円を下回っての推移なら19日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
5月18日
20:30 週次 外貨準備高 5/12時点 グロス (5/5時点 684.1億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 5/12時点 ネット (5/5時点 67.8億ドル)
5月22日
16:00 5月 消費者信頼感指数 (4月 87.5)
23:30 4月 中央政府債務残 (3月 4兆4870億リラ)
5月24日
16:00 5月 製造業信頼感指数 (4月 108.0)
16:00 5月 設備稼働率 (4月 75.4%)
5月25日
20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 8.5%)
5月28日 大統領選挙第二回投票
注:ポイント要約は編集部
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トルコリラ円の5月16日終値は6.91円、前日終値の6.91円と変わらずだった。取引レンジは概ね6.93円から6.88円。
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