トルコリラ円見通し 円高と対ドルでのリラ安で5月5日未明安値を割り込む
〇トルコリラ円、5/11午前序盤6.85へ下落、夕刻の円安局面で6.88まで戻すも米PPI発表後6.83へ一段安
〇5/12未明に戻したものの5/11夕刻高値6.88には届かず、午前序盤は6.87を挟んで揉み合い
〇対ドル、5/11の取引レンジは19.64から19.48、前日安値19.58を超えて取引時間中の史上最安値更新
〇5/14大統領選挙は事実上の一騎打ち、決選投票にもつれ込む可能性も懸念される
〇昨日発表の3月経常収支、経常赤字は17カ月連続、貿易収支の改善が進まない状況
〇ドル円の上昇が勢い付いて6.90を超える場合は、6.92前後への上昇を想定する
〇6.85割れからは下げ再開とみて、6.83、6.80を順次試す下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の5月11日終値は6.88円、前日終値の6.87円から0.01円の円安リラ高となった。取引レンジは概ね6.89円から6.83円。
ドル円は5月5日未明安値133.46円からの戻りが10日午後高値135.46円で一巡となり、10日夜の米4月CPI上昇率の鈍化で134円台序盤へ急落し、11日午前に133.88円まで安値を切り下げてから11日夕刻に134.84円までいったん戻していたが、11日夜の米4月PPIの鈍化により133.74円へ一段安した。5月5日未明安値割れはひとまず回避してその後は134円台中盤へ戻している。
トルコリラ円はドル高リラ安の進行を気にしながらもドル円を追いかける展開を続けており、5月5日未明安値6.85円から10日午後高値6.96円まで戻してきたが、10日夜の米CPI発表後の円高で11日午前序盤に6.85円へ下落し、11日夕刻の円安局面で6.88円まで戻したものの11日夜の米PPI発表後に6.83円へ一段安となった。12日未明に戻したものの夕刻高値には届かず、12日午前序盤は6.87円を挟んで揉み合いとなっている。
ドル円はまだ5月5日未明安値割れを回避して3月24日以降の底上げ基調の範囲にとどまっているが、トルコリラ円はドル高リラ安による圧迫感もあり11日夜の下落で5日未明安値を割り込み3月24日以降の底上げ基調が崩れている。
【大統領選挙控え、対ドルでは取引時間中の最安値更新】
ドル/トルコリラの5月11日終値は19.54リラ、前日終値と変わらずだったが、小数点下四桁では10日終値19.5378リラから11日終値19.5404リラへと終値ベースでの史上最安値を僅かに更新した。取引レンジは概ね19.64リラから19.48リラで、5月10日安値19.58リラを超えて取引時間中の史上最安値を更新した。
5月14日のトルコ大統領選挙が間近に迫る中、立候補は4人だが、野党6党統一候補クルチダルオール氏とエルドアン現大統領が事実上の一騎打ちとなっており、世論調査ではクルチダルオール氏がやや優勢となっているものの両氏ともに50%を超えていない。5月14日の投票で50%以上を得票できなければ上位2名による決選投票が5月28日に行われるが、現状では決選投票にもつれ込むのではないかと懸念されている。
これまで凡そ20年間続いてきたエルドアン政権の延命となれば、高インフレが進行中に利下げを強行するなどの非伝統的金融政策の継続としてリラ安が一段と進み、1ドル20リラを超えて最悪の場合は年末に1ドル30リラまで暴落するのではないかとの観測もある。政権交代となれば金融政策等の正常化への期待がもたれるものの6党寄せ集めでの政治情勢の混乱も懸念されるために先行き不安からリラ安が止まらないとの見方もあり、いずれにしてもリラの波乱は必至との見方が優勢だ。
【トルコ経常赤字は17カ月連続、ネットの外貨準備高は若干増も過去最低近辺】
トルコ中銀が発表した3月の経常収支は44.84億ドルの赤字となり、赤字額は過去最大となった1月の103.46億ドル及び2月の87.61億ドルから半減したが、2021年11月から17か月連続の赤字であり、貿易赤字が継続する中で経常黒字への転換は全く進まない状況にある。世界主要国の金融引き締めが景気減速を招いていることで輸出の伸びも徐々に鈍化し、インフレが高止まりする中でトルコの金融政策がリラ安を招いて通貨インフレが進行しているために貿易収支の改善も進まない状況だ。
トルコ貿易省による4月の通関ベースの貿易収支速報は88.5億ドルの赤字であり、観光収入もシーズンの閑散期に入っていることで経常収支の補填にはさほど寄与できないため、4月の経常赤字も高水準を維持するのではないかと思われる。
週次の外貨準備高は5月5日時点のグロスで684.1億ドルとなり4月28日時点の684.7億ドルからは若干の減少で、ネットでは67.8億ドルとなり4月28日時点の63.6億ドルからは若干増加した。しかし2022年7月の60.7億ドル以来の低水準まで減少してきた状況のままであり、トルコ中銀によるリラ防衛のための非公式介入が外貨準備高を既存している状況が続いている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月5日未明安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとしてきたが、10日午前時点では9日夜安値を直近のサイクルボトムとして底割れからは新たな弱気サイクル入りとし、5月10日に6.90円を割り込んで大幅続落したために11日朝時点では5月10日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして12日夜から16日夜にかけての間への下落を想定した。
5月11日夜へ一段安してから戻しているところのため、6.90円台を回復できないうちは一段安余地ありとみて6.85円割れからは下げ再開とするが、6.90円台を回復する場合は11日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして15日午後から17日午後にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では5月10日夜の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、11日夜からの反発で遅行スパンは実線と交錯に入り、先行スパンからの転落状態は継続している。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは反騰継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5月11日午前から夜への下落に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られるので、40ポイント以上を維持するうちは60ポイント台への上昇余地ありとするが、40ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.85円を下値支持線、6.90円を上値抵抗線とする。
(2)6.88円から6.90円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみるが、ドル円の上昇が勢い付いて6.90円を超える場合は6.92円前後への上昇を想定する。また6.90円を超えた後も6.88円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.85円割れからは下げ再開とみて6.83円、6.80円を順次試す下落を想定する。6.81円以下は反発注意とするが、6.85円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
5月12日
16:00 3月 小売売上高 前月比 (2月 -6.5%)
16:00 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 21.5%)
5月14日
トルコ大統領選挙・総選挙(現地午後11時59分に大統領選挙の暫定結果発表)
5月15日
17:00 4月 財政収支 (3月 -472.2億リラ)
5月18日
20:30 週次 外貨準備高 5/12時点 グロス (5/5時点 684.1億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 5/12時点 ネット (5/5時点 67.8億ドル)
5月19日
トルコ大統領選挙と国会議員選挙の最終結果発表
注:ポイント要約は編集部
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