ドル円見通し 米PPI鈍化で下落するも5月5日未明安値割れは回避、材料消化で戻す(23/5/12)

11日午前には133.88円まで安値を切り下げていた。134円割れをひとまず買われて夕刻には134.84円まで戻していた。

ドル円見通し 米PPI鈍化で下落するも5月5日未明安値割れは回避、材料消化で戻す(23/5/12)

ドル円見通し 米PPI鈍化で下落するも5月5日未明安値割れは回避、材料消化で戻す

〇ドル円、5/11の米4月PPIが予想を下回り、発表後133.74へ下落し午前安値133.88を割り込む一段安
〇FOMC後の大幅下落時の5/5未明安値133.46割れには至らず、材料消化により134円台中盤へ持ち直す
〇昨日発表の米4月PPI、米国のインフレ鈍化傾向示すが、早期の利下げ再開を促す程の鈍化ではない
〇昨日、英中銀は0.25%の小幅利上げを決定、通常ペースの利上げ幅に落ち着く
〇米長期債利回りは続落、NYダウは大幅下落で4営業日続落、ナスダックは前日に続き続伸
〇134.84を超える場合は上昇継続とみて、135.00から135.30にかけての水準を試す上昇を想定する
〇133.74割れからは、133.00前後への下落を想定する

【概況】

ドル円は5月10日の米4月CPI上昇率が10か月連続で鈍化して市場予想を下回ったために10日午後高値135.46円から1円を超える急落となり11日午前には133.88円まで安値を切り下げていた。134円割れをひとまず買われて夕刻には134.84円まで戻していた。
5月11日夜の米4月PPI上昇率が予想を下回ったことで発表後に133.74円へ下落して午前安値を割り込む一段安となったが、前回FOMCを通過して大幅下落した際の5月5日未明安値133.46円割れには至らず、目先のインフレ関連指標通過による買い戻しで134円台中盤へ持ち直した。
今のところは4月26日夜安値133.01円から5月5日未明安値133.46円へと底上げしてきた下値支持線を維持しているところだが、5月5日未明安値を割り込む場合は底上げ基調が崩れて5月2日高値137.76円からの下落が二段下げに入り先安感が強まることも考えられる。5月10日午後高値を上抜き返して上昇再開感を強められるかどうか試される局面だ。

【米国のインフレは鈍化、再利上げの公算は後退、早期利下げには結びつかず】

米労働省による4月の米PPI(生産者物価指数)上昇率は全体の前月比が0.2%となり3月の-0.5%からプラス圏へ戻したものの市場予想の0.3%を下回り、前年同月比は2.3%で3月の2.7%及び市場予想の2.4%を下回った。またコア指数の伸びは前月比0.2%で3月の-0.1%からプラスに転じたものの市場予想の0.2%と一致し、前年同月比は3.2%で3月の3.4%及び市場予想の3.3%を下回った。
全体の前年同月比は2021年1月以来2年3か月振りの低水準となり、10か月連続の鈍化となったが、10日に発表された4月CPI上昇率が全体の前年同月比で4.9%となり10か月連続鈍化して2021年4月以来最低となったことと合わせてインフレの鈍化傾向を顕著に示したといえる。しかしFRBの目標である2%を大幅に上回った状況にありまだ水準としては高止まりの様相のため、6月のFOMCでは政策金利が据え置きとなり利上げ打ち止めとなる可能性が高まったものの、早期の利下げ再開を促す程の鈍化ではなかったという印象だ。

米労働省による新規失業保険申請件数は5月6日までの週間で前週比2万2000件増の26万4000件となり2週連続の悪化で2021年10月以来の高水準となった。また、失業保険受給者総数は4月29日までの週間で181万3000人となり前週から1万2000人増となった。金融引き締めが継続してきたことによる景気鈍化への影響が見られたと市場は受け止めている。

【英中銀は0.25%の小幅利上げにとどまる】

5月11日夜には英中銀の金融政策委員会(MPC)があり政策金利は0.25%引き上げられて4.50%となった。12会合連続の利上げで2008年10月以来の水準に達したが、通常ペースの利上げ幅に落ち着いており、MPCメンバー9人のうち2人は据え置きを主張した。中銀は声明文で「インフレ圧力が一段と強まる場合はさらなる引き締めが必要になる」との文言を維持したが、ベイリー総裁は「英金利はピークに近づいていることを期待する」「今後インフレ率はかなり急激に下がると思う。年内に半分となり、2024年末までには中銀の目標とする2%に戻るだろう」と述べた。

利上げ発表後に英ポンドは反騰したものの勢いは鈍く、材料消化感とその後のドル高基調に圧されて利上げ発表前水準を割り込む一段安へ下げている。
欧州中銀(ECB)理事会メンバーであるスペイン中銀のデコス総裁は「ECBは利上げサイクルの最終段階に近づいている」と述べており、米国と共に利上げサイクルの終了期に来ている印象を与えたが、英中銀の利上げと米PPI上昇率の鈍化を見て米長期債利回りが低下したものの独英長期債利回りも低下しており、当面のドル売り材料を消化、ユーロやポンドの押し上げ環境にも一巡感がでたことで昨夜のユーロ安やポンド安を招いたと思われる。

【米長期債利回りは続落、ナスダック上昇だがNYダウは大幅下落】

5月11日の米長期債利回りは総じて低下した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%低下の3.39%となり、5月5日から9日までの3連騰が一巡して10日に0.08%低下したところからの続落となった。30年債利回りは0.06%低下の3.74%、利上げに敏感な2年債利回りは0.01%低下の3.91%となり10年債と同様に5月5日から9日までの3連騰一巡で10日の0.11%低下から小幅ながら続落となった。
FRBによる利上げ停止観測が高まっていることに加え、米銀経営危機報道による安全資産買いで債券買い・利回り低下反応が見られている印象だ。

一方でNYダウは前日比221.82ドル安と下落し、5月8日から4営業日続落となった。CPIやPPIの鈍化が利上げ打ち止め感を強めているものの早期の利上げ期待には至らず、11日は米地銀持ち株会社のパックウエスト・バンコープが大規模な預金流出の発生で身売りも含めた戦略的な選択肢を検討すると報じられたことで地銀株が総じて下落、信用不安の継続と拡大懸念が強まった。ナスダック総合指数は米長期債利回り低下を好感して10日の126.89ポイント高から11日も22.07ポイント高と小幅に続伸した。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は5月10日の米CPIと11日の米PPIの発表を通過して10日高値135.46円から11日夜安値133.74円まで下落したが、11日は午前から夕刻への上昇と夜への反落、その後の反発と乱調な展開だった。11日夜高値を上抜く場合は11日夜安値を目先の底とした上昇期とみて15日午後から17日午後にかけての間への上昇を想定するが、11日夜安値を割り込む場合は11日午前ないし11日夜安値を目先の底として底割れによる新たな下落期入りとみて16日から18日にかけての間への下落を想定する。またその際は3月24日以降の底上げ基調が崩れて先安感が強まり下げ足も速まる可能性があると注意する。

60分足の一目均衡表では5月11日夜へ一段安してからの反騰により遅行スパンが好転したが先行スパン突破には至らずにいる。先行スパンを上抜く場合は上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが悪化するところから下げ再開とし、11日夜安値割れからは下げ足が速まりやすいと注意する。

60分足の相対力指数は5月11日午前から夜への安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて戻しているところであり、45ポイント以上での推移中は60ポイント台を目指す上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月11日夜安値133.74円を下値支持線、11日夕高値134.84円を上値抵抗線とする。
(2)11日夕高値を超える場合は11日夜安値を起点とした上昇継続とみて135.00円から135.30円にかけての水準を試す上昇を想定する。上昇が勢い付く場合は135.50円超えを試す可能性もあるとみる。また134.30円以上での推移か直前高値から1円を超える反落が発生しなければ週明けも高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)5月11日夜安値割れからは133.00円前後への下落を想定する。133円台序盤では買い戻しも入りやすいとみるが、信用不安問題等で下げ足が速まる場合は132円台後半へ下値目途を引き下げる。また11日夜安値を割り込んだ後も134円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/12(金)
G7財務相・中央銀行総裁会議(5/13まで)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・速報値 前期比 (10-12月 0.1%、予想 0.1%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・速報値 前年同期比 (10-12月 0.6%、予想 0.2%)
15:00 (英) 3月 月次GDP 前月比 (2月 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -0.2%、予想 0.0%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -3.1%、予想 -2.9%)
15:00 (英) 3月 貿易収支・物品 (2月 -175.34億ポンド、予想 -175.00億ポンド)
15:00 (英) 3月 貿易収支・全体 (2月 -48.05億ポンド、予想 -50.00億ポンド)

20:15 (米) ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 -0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (3月 -0.3%、予想 0.3%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (4月 63.5、予想 63.0)

5/13(土)
G7財務相・中央銀行総裁会議(最終日)
08:30 (米) ジェファーソンFRB理事、ブラード・セントルイス連銀総裁、パネル討論会
23:30 (米) クックFRB理事、大学卒業式でのスピーチ

5/14(日)
トルコ議会選挙・大統領選挙(決選投票は5月28日)


注:ポイント要約は編集部

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