トルコリラ円 米CPI発表からの円高で6.90円割込み5日夜以降の持ち合いから転落(23/5/11)

トルコリラ円の5月10日終値は6.87円、前日終値の6.92円から0.05円の円高リラ安となった。

トルコリラ円 米CPI発表からの円高で6.90円割込み5日夜以降の持ち合いから転落(23/5/11)

米CPI発表からの円高で6.90円割込み5日夜以降の持ち合いから転落

〇トルコリラ円、米CPI発表後の円高により6.86へ急落、5/11午前序盤には6.85へ続落
〇対ドル、大統領選挙が迫る中でリラ安進行中、取引時間中及び終値ベースで最安値更新
〇5/14大統領選挙結果とその後の混乱への懸念でドル高リラ安が進行する中で、円高が勢い付く可能性も
〇独コメルツ銀、年末には1ドル20リラ、2024年末には1ドル21.5リラへとリラ安が進むとの見通し発表
〇6.88から6.90にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる
〇6.84割れからは6.82、6.80を順次試す下落を想定

【概況】

トルコリラ円の5月10日終値は6.87円、前日終値の6.92円から0.05円の円高リラ安となった。取引レンジは概ね6.96円から6.86円。
5月10日夜に発表された米4月CPI上昇率は全体の前年同月比が4.9%上昇となり市場予想の5.0%を下回り10か月連続の鈍化で2021年4月以来2年ぶり低水準となったため、FRBによる再利上げの可能性が後退して年後半の利下げ余地もあり得るとの見方が優勢となり米長期債利回りが低下してドル円は10日午後高値135.46円から11日未明安値134.08円へ急落、11日午前序盤には一時134円を割り込む円高となった。
トルコリラ円はドル高リラ安基調を気にしつつドル円の騰落を追いかけており、5月5日未明安値6.85円からの持ち直しを継続して10日午後には6.96円まで戻り高値を切り上げてきたが、米CPI発表後の円高により6.86円へ急落、11日午前序盤には6.85円へ続落している。

【円高継続と大統領選挙後のリラ安が重なる可能性に注意】

米FOMCは5月4日未明のFOMCで0.25%利上げを決定して「追加の金融引き締めが適切」との文言を削除したが、パウエル議長が会見で利上げ停止を決定したわけではないと述べたこともあり、7月に再利上げされる可能性や年後半の利上げ状態の継続感を引きずっていた。4月のCPIが鈍化したことにより7月再利上げの可能性は大きく後退し、年後半の利下げ可能性も再び取り沙汰されている。
ドル円は4月28日の日銀金融政策決定会合で金融政策の検証を1年から1年半かけて行うとしたことで当面は金融緩和政策が継続するとみられており、FRBも利上げ再開の可能性が後退したとすれば日米金利差の再拡大により円安が勢い付くことにはならず、信用不安や米債務上限問題によるリスク回避的な円高を継続しやすい状況と思われる。
トルコリラ円は5月14日の大統領選挙結果とその後の混乱への懸念でドル高リラ安が進行する中で円高が勢い付く可能性もあり、1月16日と3月24日の6.74円によるダブル底ラインを維持できるかどうか試されてゆくのではないかと考える。

【対ドルでは取引時間中及び終値ベースで最安値を更新】

ドル/トルコリラの5月10日終値は19.54リラ、前日終値の19.50リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。取引レンジは概ね19.58リラから19.50リラ。
5月14日のトルコ大統領選挙が迫る中でリラ安は進行中であり、手元のデータでは8日に19.57リラへ取引時間中の最安値を更新してきたが10日も19.58リラへ最安値を更新した。日足の終値ベースでは5月5日終値19.52リラに対して10日は19.54リラへと最安値を更新した。
5月10日に発表されたトルコの3月失業率は2月とかわらずの10.0%だった。3月の鉱工業生産は前月比5.5%増となり地震の影響を受けた2月の5.9%減から改善したが、前年同月比は2月の8.2%減に続いて0.1%減とマイナスが続いた。
5月11日は3月経常収支の発表があり、市場予想では赤字が2月の87.83億ドルから3月は52.04億ドルへ減少する見込みとなっているが、赤字状態の継続からは抜け出せない状況が続きそうだ。

【大統領選挙後のリラ安進行を警戒】

5月14日のトルコ大統領選挙は4人が立候補しているものの、野党6党統一候補と現職エルドアン氏が事実上の一騎打ちとなるが、事前世論調査ではエルドアン氏が若干形勢不利の様相であり、第1回投票でいずれも過半数を獲得できない場合は5月28日に第二回の決選投票が行われる。
エルドアン大統領の再選なら、同政権が推し進めてきた専権的な政治の継続、インフレに対して利下げをする非伝統的手法や外貨保有規制、リラ安抑制のための非公式市場介入、経常収支や財政収支の悪化によるトルコ経済のファンダメンタルズ悪化が深刻化するとしてリラ安が勢い付く可能性がある。
野党勝利で政権交代となればエルドアン政権による非伝統的手法は改善されると思われるが、金融政策の転換が初期的にはリラ高反応を招く可能性があるもののそれよりも混乱が助長されてリラ安が進行してしまうことも懸念されている。また野党6党が確りとした政権を樹立できるのかどうかもまだ疑心暗鬼なところがある。

ドイツのコメルツバンクは選挙後のリラ予想について年末には1ドル20リラ、2024年末には1ドル21.5リラへとリラ安が進むとの見通しを発表した。対ユーロでは2023年末に1ユーロ22.8リラ、2024年末には23.2リラと予想している。
これまでに、金融大手JPモルガンが4月14日にメインシナリオとして大統領選挙後に1ドル=24〜25リラへ下落して年末には26リラへ続落するとし、より厳しいシナリオでは選挙後に1ドル=30リラへ向かう可能性もあると指摘し、国際金融協会(IIF)は4月27日のレポートで1ドル=21.00リラよりも大幅に下げるとの見方が大半を占めるとし指摘している。また4月19日のトルコ中銀によるエコノミスト調査では2023年末に1ドル=23.1535リラと予想されている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月5日未明安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして9日午後にかけての間への上昇を想定し、6.90円以上を維持するうちは一段高余地ありとしてきたが、10日午前時点では9日夜安値を直近のサイクルボトムとして底割れからは新たな弱気サイクル入りとなる可能性があるとした。
5月10日に6.90円を割り込んで大幅続落したため、5月10日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとし、9日夜安値を基準としてボトム形成期を12日夜から16日夜にかけての間と想定する。現時点からの強気転換には6.90円台を回復する反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では5月10日夜の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したため、遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンからの転落が続くうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は5月10日夜の急落で60ポイント台から30ポイント割れへ急落してその後も30ポイント近辺での推移が続いているので20ポイント以下への低下余地があるとし、強気転換は50ポイント超えからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.84円を下値支持線、6.88円を上値抵抗線とする。
(2)6.88円から6.90円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)6.84円割れからは6.82円、6.80円を順次試す下落を想定する。6.80円以下は反発注意とするが、6.88円以下での推移なら12日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5月11日 
 16:00 3月 経常収支 (2月 -87.83億ドル、予想 -52.04億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 5/5時点 グロス (4/28時点 684.7億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 5/5時点 ネット (4/28時点 63.6億ドル)
5月12日
 16:00 3月 小売売上高 前月比 (2月 -6.5%)
 16:00 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 21.5%)
5月14日
 トルコ大統領選挙・総選挙(現地午後11時59分に大統領選挙の暫定結果発表)


注:ポイント要約は編集部

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