米CPI全体は10か月連続鈍化、発表後は米長期債利回り低下で円高進行
〇ドル円、米4月CPIが市場予想下回り、米長期債利回りの低下と共に5/11未明134.08へ急落
〇4月消費者物価指数(CPI)上昇率、前年同月比4.9%で予想及び3月の5.0%下回り、10カ月連続鈍化
〇米長期債利回りは低下、米国株式市場はデフォルト懸念などでまちまち
〇134.50から134.70にかけては戻り売りにつかまりやすい、134.70超えからは5/10午後高値135.46試し
〇133.85割れからは5/5未明安値133.46試し
〇底割れの場合4/26夜安値133.01、先行きは132円台目指す下落を想定
【概況】
ドル円は5月4日未明のFOMCを通過しながら5月2日高値137.76円から5月5日未明安値133.46円まで4.30円の大幅下落となり、5日夜の米雇用統計から反騰に転じて10日午後高値135.46円まで2.00円のリバウンドを入れてきたが、10日夜発表の米4月CPIが前年同月比4.9%上昇で市場予想の5.0%を下回り10か月連続の鈍化で2021年4月以来2年ぶり低水準となったことで米長期債利回りの低下と共に11日未明には134.08円へ急落した。11日午前序盤には一時134円を割り込んでいる。
FRBは前回FOMCで0.25%利上げを決定した上で従来まで繰り返してきた「追加の引き締めが適切」との文言を削除したが、パウエル議長が利上げ停止を決定したわけではないと会見で述べたこともあり、CPI内容次第では6月ないし7月の再利上げの可能性や、早期の利下げへ向かう可能性の両方が交錯していた。今回のCPIは再利上げを助長するものではなかったが、利下げを促すほどでもなく、発表後の為替市場は主要中銀の追加利上げ余地への思惑も絡んで乱調な展開となった。しかし、日銀が当面は金融緩和を継続し、FRBも様子見の現状維持で推移するなら日米長期金利差が円安を勢いづかせるような拡大にはならないとしてドル円は素直に下落したようだ。
【米4月CPI、2年ぶり低水準だが依然として高水準】
米労働省による4月消費者物価指数(CPI)上昇率は前月比0.4%で予想と一致、3月の0.1%から伸びが加速したが、前年同月比は4.9%で予想及び3月の5.0%を下回り10カ月連続の鈍化で2021年4月以来2年ぶり低水準となった。ガソリンが12.2%低下、中古車・トラックが6.6%低下したが食品は7.7%上昇した。
変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数の上昇率は前月比0.4%で市場予想及び3月と変わらず、前年同月比は5.5%で予想と一致したが3月の5.6%からは鈍化した。
4月の家賃を除くコアサービス価格が0.11%上昇にとどまり昨年7月以来の低水準となったことで年内利下げの可能性もあるのではないかとの見方が一部では浮上しており、金利先物市場では6月の利上げ確率は1割未満、9月に利下げを開始する可能性がやや高まったようだが、FRBの物価目標である2%を持続的に実現するには依然として高水準であり、インフレの高止まりに対して抑制への利上げを主張するFOMC内タカ派の主張が続く可能性もある。
このように解釈はまちまちであり、次回6月FOMCまでに5月雇用統計と5月CPIの発表があるため、それらを見定めながら利上げを停止しても水準を継続したまま年末を迎えるのか、利下げ論が活発化するのか試されてゆくことになるのだろうと思われる。
ユーロやポンドはECB及びBOE(今夜政策金利発表)の追加利上げ余力を図って強弱が決まってゆくと思われるが、ドル円としては米長期債利回りが勢いよく再上昇してゆくことが無ければ日米金利差での円安へは進み難く、米債務上限問題の混迷や銀行破綻からの信用不安が払拭できない中にあっては円高へのバイアスがかかりやすい状況と思われる。
【米長期債利回りは低下、米国株式市場はまちまち】
5月10日の米長期債利回りは総じて低下した。指標の10年債利回りは前日比0.08%低下の3.44%となり、5月5日から9日までの3連騰が一巡した印象となった。30年債利回りは0.04%低下の3.80%、利上げに敏感な2年債利回りは0.11%低下の3.92%となり9日までの3連騰一巡で低下に転じた印象だ。
一方でNYダウはCPIが早期利下げ期待を昂進させるほどではなかったこと、米債務上限問題でのバイデン大統領と共和党下院議長との会談が決裂したことでのデフォルト懸念、信用不安問題も払拭しきれていないことで前日比30.48ドル安と下落に終わった。ナスダック総合指数は長期債利回り低下を好感して126.89ポイント高と連騰した。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は5月5日安値133.46円からの反騰が10日午後高値135.46円で一巡して急落に転じた。5月5日未明安値を基準とすれば11日未明から12日未明にかけての間に安値をつけて反騰入りする可能性もあるが、5月9日午後安値を割り込んでやや右肩上がりの持ち合いから転落したことを踏まえると、安値形成期が12日午後から16日午後にかけての間へ延びる可能性もあると注意する。強気転換には134.70円を超えて135円に迫る反騰が必要と思われる。
また5月5日未明安値133.46円を割り込む場合、3月24日安値以降の底上げ基調が崩れ、5月2日高値からの下落が二段下げに発展するために先安感=円高継続感が優勢となる可能性もあると注意する。
60分足の一目均衡表では5月10日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したため遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとし、先行スパンを下回るうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は5月10日夜の急落で50ポイント台から30ポイントまで急落し、その後も30ポイント近辺での推移にとどまっているので20ポイント台序盤ないし10ポイント台への低下余地があるとみる。強気転換は50ポイント超えからとし、届かないうちは戻り売り優勢で推移しやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、133.85円を下値支持線、134.70円を上値抵抗線とする。
(2)134.50円から134.70円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみるが、134.70円超えからは10日午後高値135.46円試しとする。
(3)133.85円割れからは5月5日未明安値133.46円試しとし、底割れの場合は4月26日夜安値133.01円、先行きは132円台を目指す下落を想定する。
【当面の主な予定】
5/11(木)
G7財務相・中央銀行総裁会議(5/13まで)
10:30 (中) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 0.7%、、予想 0.4%)
10:30 (中) 4月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (3月 -2.5%、予想 -3.2%)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー現状判断DI (3月 53.3、予想 54.1)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー先行判断DI (3月 54.1、予想 55.1)
20:00 (英) 英中銀(BOE) 政策金利 (現行 4.25%、予想 4.50%)
20:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、会見
21:30 (米) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 -0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (3月 2.7%、予想 2.4%)
21:30 (米) 4月 PPIコア指数 前月比 (3月 -0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 PPIコア指数 前年同月比 (3月 3.4%、予想 3.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.2万件、予想 24.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 180.5万人、予想 182.0万人)
23:15 (米) ウォラーFRB理事、講演
26:00 (米) 財務省30年債入札(210億ドル)
5/12(金)
G7財務相・中央銀行総裁会議(5/13まで)
08:50 (日) 4月 マネーストックM2 前年同月比 (3月 2.6%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・速報値 前期比 (10-12月 0.1%、予想 0.1%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・速報値 前年同期比 (10-12月 0.6%、予想 0.2%)
15:00 (英) 3月 月次GDP 前月比 (2月 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -0.2%、予想 0.0%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -3.1%、予想 -2.9%)
15:00 (英) 3月 貿易収支・物品 (2月 -175.34億ポンド、予想 -175.00億ポンド)
15:00 (英) 3月 貿易収支・全体 (2月 -48.05億ポンド、予想 -50.00億ポンド)
20:15 (米) ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 -0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (3月 -0.3%、予想 0.3%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (4月 63.5、予想 63.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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