ドル円を追いかける展開続くが、大統領選挙迫りドル高リラ安が進行
〇トルコリラ円、5/8はドル円が135円挟みの持ち合いとなる中、6.94から6.90までのレンジで持ち合い
〇トルコリラ円はドル円の騰落を追いかける展開継続
〇対ドル、5/8の取引レンジは概ね19.57から19.42、取引時間中の最安値を新たに更新
〇5/14のトルコ大統領選挙後の混乱を警戒して、ドル/トルコリラでのドル高リラ安が進行中
〇街中の両替店では既に1ドル20リラを超えているとの報道、市民の逃避的ドル買い需要の旺盛さを示す
〇6.90を上回るうちは上昇余地ありとし、6.95超えからは6.97前後への上昇を想定する
〇6.90割れからは戻り一巡による下落期入りとみて、6.87、6.85を順次試してゆく流れとみる
【概況】
トルコリラ円の5月8日終値は6.92円、先週末終値6.91円からは0.01円の円安リラ高だった。取引レンジは概ね6.94円から6.90円。
5月14日のトルコ大統領選挙後の混乱を警戒してドル/トルコリラでのドル高リラ安が進行しているが、トルコリラ円はドル円の騰落を追いかける展開を続けている。
ドル円は日銀の金融緩和継続姿勢におる上昇で5月2日に137.76円へ上昇して3月8日の年初来高値137.91円に迫ったところから下落に転じ、5月4日未明のFOMC(0.25%利上げを決定、追加の金融引き締めが適切との文言削除)を通過して135円を割り込み、5日未明安値で133.46円まで大幅続落したが、134円割れに対する売られ過ぎ警戒感と5日夜の米雇用統計が予想より強かったことによるドル高を反映して5日夜に135.11円へ上昇、8日は午前に135.29円をつけてから134.60円台では買われて135円を挟んだ持ち合いで推移した。
トルコリラ円は4月28日安値6.86円からの上昇が5月2日早朝高値7.07円で一巡となり5月3日には7.00円を割り込み、FOMC後の4日朝に6.95円を割り、5日未明には6.85円まで安値を切り下げたが、ドル円の反騰を見て5日夜には6.93円まで戻した。8日はドル円が135円を挟んだ持ち合いとなる中、6.94円から6.90円までのレンジで持ち合いとなった。
5月9日午前はドル円が135.30円台へ上昇したため、トルコリラ円も持ち合いからの上放れを試している。
【対ドルでは取引時間中の最安値を更新】
ドル/トルコリラの5月8日終値は19.50リラ、先週末終値の19.52リラからは0.02リラのドル安リラ高だった。取引レンジは概ね19.57リラから19.42リラ。
5月14日のトルコ大統領選挙後の混乱を警戒してリラ安が進行しており、手元のデータでは5月2日安値19.49リラ、3日と4日の安値19.50リラから5日安値19.53リラへと取引時間中の最安値を更新してきたが、8日はさらに19.57リラへ最安値を更新した。ベンダーによって提示レートに開きがあるが19.76リラの安値提示も見られた。
日足の終値ベースでは5月3日終値19.46リラから4日終値19.49リラ、5日終値19.52リラへと3営業日連続で最安値を更新し、8日は新たな安値更新を回避しているものの最安値近辺での推移が続いている。
【トルコリラの市中相場で二重相場状態も】
5月8日の電子メディア報道では、トルコの街中にある両替店でのドル/トルコリラはすでに1ドル20リラを超えており、トルコ中銀によるリラ安抑制のための市場介入で為替市場の取引レートは実勢よりも割安に抑えられているとし、銀行間レートよりも凡そ5%安いリラ安水準で取引されているという。
大統領選挙後の混乱とリラ安が深刻化する懸念を背景に市民の逃避的なドル買い需要が旺盛なことを示している。
国際金融協会(IIF)は4月27日のレポートでトルコリラについては「来月の大統領選挙に向けて市場は非常にネガティブな見方に転じており、我々が適正価値とする1ドル=21.00リラよりも大幅に下げるとの見方が大半を占める」と指摘した。
4月19日にトルコ中銀が発表したエコノミスト調査では2023年末のドル/トルコリラ予想値は1ドル=23.1535リラ、4月14日に金融大手JPモルガンが好評した大統領選挙後の見通しではメインシナリオで1ドル=24〜25リラへ下落して年末には26リラへ続落するとし、より厳しいシナリオでは選挙後に1ドル=30リラへ向かう可能性もあるとしている。
5月3日に公表された世論調査では大統領選の支持率はクルチダルオール氏が48.0%でエルドアン氏の44.6%を上回りエルドアン氏の再選が危ぶまれている。投票の確定までの混乱も懸念されるが、EU域内における海外居住者による期日前投票では野党支持者とエルドアン支持者による暴力衝突と地元警察介入の報道もあり、接戦になれば相当な混乱となることも危惧される。
スイスではスイスクオート・バンクや証券会社などがリラ取引を数日間停止する方針との報道もあった。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月2日午後高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしてきたが、5月5日夜の米雇用統計からの反騰により8日朝時点では5月5日未明安値で直近のサイクルボトムをつけて強気サイクル入りしたとし、サイクルトップ形成期を5日午後から9日午後にかけての間と想定し、6.90円以上を維持するうちは一段高余地ありとした。
5月8日は6.90円以上を維持して9日午前には戻り高値の切り上げを試しているのでまだ上昇余地ありとみるが、6.90円割れからは弱気サイクル入りとして9日深夜から12日未明にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月5日夜の反騰で遅行スパンが好転し、5月8日夜には先行スパンを上抜いた。6.92円を挟んだ揉み合いとなったために遅行スパンは実線と交錯に入っているものの、先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開として一段高へ進む可能性があるとみる。ただし、先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5月5日夜から8日への高値切り上げに際して指数のピークがフラットとなる弱気逆行が見られるものの50ポイント割れを切り返しているのでまだ上昇余地が残るとみるが、次に45ポイントを割り込むところからは下げ再開とみて20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.90円を下値支持線、6.95円を上値抵抗線とする。
(2)6.90円を上回るうちは上昇余地ありとし、6.95円超えからは6.97円前後への上昇を想定する。6.97円以上は反落注意とするが、6.92円を上回っての推移なら10日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.90円割れからは戻り一巡による下落期入りとみて6.87円、6.85円を順次試してゆく流れとみる。6.85円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、6.90円以下での推移なら10日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
5月10日
16:00 3月 失業率 (2月 10.0%)
16:00 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -6.0%)
16:00 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -8.2%、予想 -1.45%)
5月11日
16:00 3月 経常収支 (2月 -87.83億ドル、予想 -52.04億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 5/5時点 グロス (4/28時点 684.7億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 5/5時点 ネット (4/28時点 63.6億ドル)
5月12日
16:00 3月 小売売上高 前月比 (2月 -6.5%)
16:00 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 21.5%)
5月14日
トルコ大統領選挙・総選挙(現地午後11時59分に大統領選挙の暫定結果発表)
注:ポイント要約は編集部
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