ドル円見通し 米雇用統計後の反騰落ち着き135円を挟んだ揉み合い(23/5/9)

8日夜から9日早朝にかけては134.60円台を買われるも新たな高値更新へ進めずに135円を挟んだ持ち合いにとどまった。

ドル円見通し 米雇用統計後の反騰落ち着き135円を挟んだ揉み合い(23/5/9)

ドル円見通し 米雇用統計後の反騰落ち着き135円を挟んだ揉み合い

〇ドル円、5/8は材料に欠ける中高値135.29をつけるも、5/5未明安値からの半値戻し135.61には届かず
〇5/8夜から5/9早朝にかけては134.60台を買われるも新たな高値更新へ進めず、135円を挟んだ持ち合い
〇昨日FRBは金融安定報告公表、主要国による追加利上げが世界経済の成長を鈍化させる可能性を指摘
〇米長期債利回りは続伸、NYダウは前日大幅上昇したが5/8は小幅下落、ナスダックは小幅続伸
〇134.50以上での推移中は、5/5夜高値135.11超えから135.61試しへ向かうとみる
〇134.50割れから続落の場合は134円前後試し、134円割れから続落に入る場合は133.46試しとみる

【概況】

ドル円は5月4日未明の米FOMC(0.25%利上げを決定、追加の金融引き締めが適切との文言削除)を通過して売られ、5日未明に133.46円の安値をつけて5月2日高値137.76円からは4.30円の下落幅となったが、5日夜の米雇用統計が予想を上回る就業者増加と失業率改善だったために5日深夜には135.11円まで戻した。
週明けの5月8日は新たな材料に欠ける中、午前高値で135.29円をつけて5日未明安値からの戻り幅を1.83円としたが、半値戻しの135.61円には届かず、8日夜から9日早朝にかけては134.60円台を買われるも新たな高値更新へ進めずに135円を挟んだ持ち合いにとどまった。
4月28日に日銀が金融緩和政策の検証に1年から1年半をかけるとしたことをきっかけに直前安値133.36円から急伸した上昇幅の大半を解消したが、3月24日以降の底上げ基調は維持している。
5月10日の米4月CPI上昇率に市場の関心が向かっており内容確認までは慎重な動きとなりやすいところだ。今夜はジェファーソンFRB理事とニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁の講演、財務省3年債入札(400億ドル)等がある。

【信用不安とインフレ高止まりへの懸念、米債務上限問題や米中対立も気になる】

5月8日に米連邦準備制度理事会(FRB)は金融安定報告を公表、短期的リスクとしては米銀破綻による信用不安の拡大で銀行の融資供与が一段と縮小することとし、主要国による追加利上げが世界経済の成長を鈍化させる可能性がある点を指摘した。報告では「銀行の融資が一段と縮小すれば経済活動の鈍化を招き、企業利益の減少とともに一部企業の債務不履行が増加する恐れがある」とした。またインフレが想定以上に根強いなら米国を含めた先進国の利上げが長期化するとし、金利上昇が新興国を含めた政府や企業の債務返済を困難にし、不動産市場に打撃を及ぼすリスクがあるとした。ニューヨーク連銀による調査報告では先行きのリスクとしてインフレ持続と金融引き締め、銀行部門の圧迫、米中対立、米連邦政府債務上限問題が上位にランクされた。

週をまたいで新たな銀行破綻や経営危機報道は見られず、地銀等銀行セクターも5月4日に暴落商状となったものの5日は米雇用統計をきっかけとしたNYダウ等の反騰で買い戻され、8日も落ち着いた動きとなった。しかしリーマンショックの発生においては金融機関の破綻や経営危機が断続的に繰り返されて徐々に悪化して最終的には金融恐慌的な不安に陥ったこともあり、不安の払拭にはほど遠い印象だ。
FRBは5月4日未明のFOMC声明で追加利上げ見送り姿勢を示したものの、パウエル議長は会見で利上げ停止を決定したわけではないと述べ、米雇用統計が強かったことで再利上げの可能性も取り沙汰されている。5月10日の米4月CPI上昇率が予想を上回るなら7月FOMCでの再利上げ可能性が高まり、予想を下回るようだと利上げ終了感が強まることにもなりえるところだ。

ただし、米バイデン政権は過度の利上げを避けたい印象であり、5月2日には政府高官による利上げ牽制発言が相次いだが、5月8日もイエレン米財務長官が、銀行融資条件が厳格化していることをFRBが金融政策決定において考慮するだろうとし、利上げ打ち止めを期待する姿勢を示している。またシカゴ連銀のグールズビー総裁も今回のFOMCで0.25%利上げを支持したと述べた上で、企業向け融資で信用収縮(クレジット・クランチ)が始まっているとしてFRBとしても与信条件の厳格化動向を注視していく姿勢だとした。
再利上げの可能性が高まるのか、利上げ停止から年後半の利下げ可能性が高まるのか試される週となりそうだ。

【米長期債利回りは続伸、株式市場はまちまち】

5月8日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.07%高の3.51%となり5月5日の0.06%上昇からの続伸で、5月4日に3.30%まで低下してからの揺れ返し上昇が続いた。アップルの50億ドル規模の社債発行等による国債需給の緩みや米債務上限問題を気にして債券売り・利回り上昇となった印象だが、4月以降の3.30%以下から戻し、3.60%前後が抵抗となる持ち合いの範囲で推移している。
利上げに敏感な2年債利回りは0.10%上昇となり5月5日の0.11%上昇からの連騰となった。3月8日に5.08%まで大上昇したところから3月24日に3.56%まで低下した後は4.20%台で抵抗感のある持ち合い相場の範囲にある。米長期債利回りの週末からの連騰はドル円を下支えている。

一方でNYダウの5月8日は前日比55.69ドル安と小幅下落した。5月1日から4日まで4営業日続落したところから5日は546.64ドル高と戻したが8日は勢いに欠けた。ナスダック総合指数の8日は前日比21.51ポイント高で5日の269.01ポイント高から小幅続伸だったが、高値で12264.99ポイントをつけて4月18日高値をわずかに超えて昨年10月13日安値10088.83ポイント以降の高値を更新しておりリスク選好感が優勢の印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は5月2日高値137.76円からの大幅下落が5月5日未明安値133.46円で一巡となり戻しに入っているところだが、135円を挟んだ持ち合いにとどまり上値の重さも見られる。5月5日未明にかけての下げ幅に対する半値戻し135.61円に届かずにいるが、半値戻しをクリアすれば3分の2戻しの136.33円へ迫る可能性もあるものの、134.50円を割り込む場合は戻り一巡によりいったん仕切り直しの下落期に入り9日夜から11日深夜にかけての間へ下落しやすくなると注意する。その際は5月10日夜の米CPI内容次第で上昇再開へ向かうか下げが厳しくなるか試されると思われる。

60分足の一目均衡表では5月5日夜の反騰で遅行スパンが好転し、8日には先行スパンを上抜けてきている。しかし135円を挟んだ揉み合いのため遅行スパンは実線と交錯に入り、先行スパンを上回った状況は維持されているものの転落への余裕もさほど大きくはない。
先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落の場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月5日深夜から8日午前にかけての高値更新に際して指数のピークがフラットとなる弱気逆行を見せている。50ポイント割れを切り返すうちは65ポイント超えから70ポイント台を目指す上昇余地があるとみるが、40ポイント割れからは下落期入りとして20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、134.50円を下値支持線、5月8日午前高値135.29円を上値抵抗線とする。
(2)134.50円を上回るうちは上昇余地ありとし、135.29円超えからは135.60円から135.80円前後への上昇を想定する。135.70円以上は反落注意とするが、135円以上での推移なら10日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)134.50円割れからはいったん下げに入るとみて134円前後への下落を想定する。134円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、134.50円以下での推移なら10日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/9(火)
休場 ロシア
ASEAN首脳会議・関連会合[11日まで
未 定 (中) 4月 貿易収支・米ドル建て (3月 881.9億ドル、予想 716.0億ドル)
未 定 (中) 4月 貿易収支・人民元建て (3月 6010.1億元)
17:00 (欧) レーンECB理事、講演
21:30 (米) ジェファーソンFRB理事、講演
25:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省3年債入札(400億ドル)

5/10(水)
英中銀金融政策委員会初日
14:00 (日) 3月 景気先行指数CI・速報値 (2月 98.0、予想 97.9)
14:00 (日) 3月 景気一致指数CI・速報値 (2月 98.6、予想 98.7)
15:00 (独) 4月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
15:00 (独) 4月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 7.2%、予想 7.2%)
21:30 (米) 4月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (3月 0.1%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 5.0%、予想 5.0%)
21:30 (米) 4月 CPIコア指数 前月比 (3月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 CPIコア指数 前年同月比 (3月 5.6%、予想 5.5%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債入札(350億ドル)
27:00 (米) 4月 月次財政収支 (3月 -3781億ドル、予想 2350億ドル)



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