基本はユーロ高の流れが続く
〇先週のユーロドル、ECB理事会で0.25%の利上げに留まりユーロ売り誘う
〇今回のFOMCでFRBはターミナルレートに到達の可能性高く今後は米欧の金利差縮小へ
〇今後ECBの利上げ思惑でドイツ金利上昇なら金利差縮小によるユーロ買いは継続しやすい
〇中期的にはユーロ高を見て近いところではゾロ目1.1111をターゲットとしやすい
〇今週は先週の安値圏に近い1.0950レベルをサポートに1.1111レベルをレジスタンスとする
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、金融政策ウィークの最後を飾るECB理事会がありましたが、前週までは0.5%利上げがコンセンサスであったものが、先週ECBによって示された欧州金融機関による貸し出し水準が低いことから大幅利上げは無いかもしれないという見方が出ました。それでも0.5%の大幅利上げを見込む向きもいましたが結果は0.25%の利上げに留まりユーロ売りを誘うこととなりました。
ラガルド総裁は引き締めの手を緩めることは無いと引き続き利上げを継続することに言及、大幅な利上げではなく小刻みな利上げを繰り返す観察期間に入ってきたということになります。現時点のコンセンサスは6月、7月とあと2回は0.25%の利上げを行い、中銀預金金利を今回利上げ後の3.25%から3.75%まで引き上げるという見方です。つまりECBのターミナルレートは3.75%ということになりますが、状況次第では9月まで利上げが行われ4.0%という可能性もあるかもしれません。
今回のFOMCでFRBはターミナルレートに到達した可能性が高く、ここから先は米欧の金利差は縮小していくこととなります。10年債利回りは米独とも需給の影響もありますし、米国ではリスクオフによる動きもあるのですが、中期的には為替相場との相関は高く、今後ECBの利上げ思惑でドイツ金利が上昇すれば、金利差縮小によるユーロ買いは継続しやすくなります。
米独10年債利回り差とユーロドルの日足チャートをご覧ください。
青のラインチャートが金利差で右軸、わかりやすくするためドイツ金利から米金利を引いてあります。ローソク足がユーロドル(左軸)となっていますが、ほぼ似たような動きをしていることがわかり、今後更に金利差が縮小し、青いラインが上に行くこととなれば、ユーロドルも改めて買われる地合いになると見てよいでしょう。
金融政策イベントが終わり、今週は欧州材料よりも米銀不安や財務上限問題など米国材料に目が行きやすい週となりそうですから、ユーロ買い地合いでも大きく方向性が出てくるとも思えません。テクニカルにはいつもの日足チャートを見てみましょう。
中期的にはユーロ高を見て、昨年9月安値を起点とした上昇N波動を考えた50%エクスパンションの1.1264を考えることとなりますし、近いところではゾロ目1.1111をターゲットとしやすく青の平行線で示した上昇チャンネルの中での動きを続けやすいと見てよいでしょう。
ただ、材料的な点からは横方向への動きとなりやすく、今週は先週の安値圏に近い1.0950レベルをサポートに1.1111レベルをレジスタンスと先週と同じ予想レンジを見ておくこととします。
今週のコラム
先週はユーロ円の月足チャートを見て150円よりも上の水準ではリーマンショック前の高値169.95まで目立ったレジスタンスは無く、節目の160円、170円という水準が意識されやすくなること、またテクニカルなターゲットとしてリーマンショック前の高値とその後の安値の78.6%(61.8%の平方根)戻しとなる153.72があることを書きました。
ここまでの高値は151.60レベルでその後ドル円の下げとともにユーロ円も反落していますので、短期的に現在の水準を振り返っておきましょう。今週は日足チャートをご覧ください。
基本的にユーロ円も上昇地合いを継続中と見ていますので、直近高値からの調整がどの程度で終わるのかを考えることとなります。3月安値と5月高値の38.2%押しが146.72となり、146円台半ばから後半が押し目となり、環境が変わっていなければそこから再び上昇しやすいという見方で良いと思います。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
5月8日(月)
**:** LDN市場休場
15:00 ドイツ3月鉱工業生産
5月9日(火)
08:01 英国4月小売売上高
15:45 フランス3月貿易収支
17:00 レーンECB理事講演 ☆
5月10日(水)
15:00 ドイツ4月CPI
20:20 ポルトガル中銀総裁講演
5月11日(木)
08:01 英国4月住宅価格
20:00 英中銀MPC結果発表 ☆
20:30 英中銀総裁会見 ☆
5月12日(金)
15:00 英国1〜3月期GDP速報値 ☆
15:00 英国3月貿易収支、鉱工業生産
15:00 フランス4月CPI
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月1日(月)
ユーロドルは東京市場ではドル買いの動きからじり安の動きとなりましたが、欧州、英国ともに休場となっていたことから欧州市場では東京時間に売った向きの買い戻しが入り、NY市場朝方には1.1036レベルと東京朝方の高値をやや上回っていました。NY市場では米金利上昇から改めてユーロドルにも売りが入り、1.0964レベルへと下押し後安値圏での引けとなりました。
5月2日(火)〜5月4日(木)
2日のユーロドルは東京市場ではドル円とともにユーロ円も買われたことから上昇していましたが、その後はユーロ円の売りによる下げと米国債務問題によるドル売り(ユーロ買い)とで結果としてはじり高での引け。
3日はFOMC結果は予想通りであったものの前日からのリスクオフによるドル安の動きがユーロドルにも波及しユーロ高の一日となりました。ECB理事会を翌日に控えていることもユーロを底堅くしていました。
4日は直前には0.5%利上げ思惑はやや後退していたもののECBは0.25%と小幅な利上げに留まったことでユーロ売りの動きが広がりました。イベント前のユーロ買いポジションに調整の動きも入り、対ドル、対円ともに下げた後に若干戻して引けました。
5月5日(金)
ユーロドルはアジア時間にはユーロ買い、その後NYまではユーロ売りと1.10台前半で方向感がはっきりしない流れが続きました。NY市場では強い雇用統計を受けたドル買いから一時1.0967レベルまで水準を下げましたが、ECBの利上げ継続思惑による金利差縮小期待からユーロ買い戻しも目立ち、アジア時間の水準まで買い戻されたあと若干押して引けました。
ディスクレーマー
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