トルコリラ円 円高で4/28からの上昇分を解消、ドル高リラ安も進行だが週末からは戻す(23/5/8)

トルコリラ円の5月5日終値は6.91円、前日終値の6.89円からは0.02円の円安リラ高だった。

トルコリラ円 円高で4/28からの上昇分を解消、ドル高リラ安も進行だが週末からは戻す(23/5/8)

円高で4/28からの上昇分を解消、ドル高リラ安も進行だが週末からは戻す

〇先週のトルコリラ円、米雇用統計後にドル円反騰で6.93まで戻し、やや下げるも6.90円台維持して越週
〇対ドル、5/5も19.52リラへ3営業日連続で最安値を更新
〇為替市場はドル安基調だが、経済・金融政策の混乱続くとみて対ドル、対ユーロ等でのリラ先安感強まる
〇高水準の貿易赤字、高インフレ状態の継続、外貨準備高の減少がリラ安を助長、この傾向が続くと懸念 
〇6.90を上回るうちは上昇余地あり、6.95超えからは6.97前後への上昇を想定
〇6.90割れからは戻り一巡による下落期入りとみて6.87、6.85を順次試してゆく流れとみる

【概況】

トルコリラ円の5月5日終値は6.91円、前日終値の6.89円からは0.02円の円安リラ高だった。取引レンジは概ね6.93円から6.87円。週間では4月28日終値7.01円から0.10円の円高リラ安だった。
ドル高リラ安の進行を気にしつつもトルコリラ円は日々の騰落においてドル円を追いかける展開が続いている。
ドル円は4月28日に日銀がマイナス金利とYCCによる長期金利ゼロ%誘導のための許容変動上限を0.50%に据え置き、従来からの金融緩和政策に対する検証を1年から1年半かけて行うとしたことによる円売りで発表前安値133.36円から136円台へ急伸し、米長期債利回り上昇によるドル高が重なり5月2日には137.76円へ高値を切り上げて3月8日につけた年初来高値137.91円に迫ったが届かず、5月2日は米JOLTS求人件数が予想外の悪化となり米銀の新たな破綻懸念を踏まえた米バイデン政権高官らによる利上げ牽制発言が相次いだことで136円台前半へ急落した。

4日未明の米FOMCが0.25%利上げを決定したものの6月会合での利上げ停止を示唆したことで135円割れへ続落、5日未明には133.46円まで一段安となった。5日夜の米雇用統計が予想以上の強さを示したことで135.11円まで戻したものの4月28日からの上昇分をほぼ解消した。
トルコリラ円は4月28日からのドル円急伸により4月28日安値6.86円から5月2日早朝高値7.07円へ急伸したが、5月2日夜からドル円が反落した流れを追いかけて5月3日には7.00円を割り込み、FOMC後の一段安により4日朝には6.95円を割り込んで5日未明には6.85円まで安値を切り下げた。5日の日中は6.88円を挟んだ揉み合いで下げ渋っていたが、5日夜の米雇用統計後にドル円が反騰したところで6.93円まで戻し、6日早朝へやや下げたものの6.90円台を維持して週を終えた。

【対ドルでは取引時間中及び終値ベースで最安値を更新】

ドル/トルコリラの5月5日終値は19.52リラ、前日終値の19.49リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。取引レンジは概ね19.53リラから19.41リラ。
手元のデータでは4月28日安値で19.47リラをつけて4月17日と19日の両日につけた安値19.46リラを超えて取引時間中の史上最安値を更新していたが、5月2日に19.49リラ、3日と4日に19.50リラへと安値を更新し、5日はさらに19.53リラへ最安値を更新した。
日足の終値ベースでは4月28日に19.45リラへ最安値を更新し、5月3日終値19.46リラ、4日終値19.49リラと連日の最安値更新となったが、5日も19.52リラへ3営業日連続で最安値を更新した。

週間では4月28日終値19.45リラから5月5日終値19.53リラへ0.08リラのドル高リラ安だった。
為替市場全般は新たな米銀破綻による信用不安の拡大懸念と欧米等インフレ高止まり、FRBの利上げ停止姿勢やECBの利上げ継続、豪中銀による予想外の利上げ等でドルの強弱感が定まらないもののポンドドルが昨年9月以降の最高値を更新するなどドルストレートでのドル安基調にある。しかしトルコリラは5月14日のトルコ大統領選挙が迫る中で現職再選でも野党統一候補が勝利して政権交代となっても経済・金融政策の混乱が続くとみて対ドル及び対ユーロ等でのリラ先安感が強まっている。

【貿易赤字、高インフレ、外貨準備高減少】

【貿易赤字、高インフレ、外貨準備高減少】

5月2日に発表された4月のイスタンブール製造業PMIは51.5となり3月の50.9から上昇した。2022年11月に45.7まで低下した後は緩やかに持ち直しており、トルコ南部大地震の影響は震源地から離れていたこともあり同指数には今のところは反映されていない。
5月2日にトルコ貿易省が発表した通関ベースの貿易統計速報では、4月の貿易収支は88.5億ドルの赤字で赤字は3月85.7億ドルから拡大した。トルコ統計局の確報では1月に142.6億ドルの過去最大赤字を記録しており、今回の速報を含めて高水準の貿易赤字が続いている。貿易省によると4月の輸入は281.6億ドルで3月の322億ドルから大幅減少したが、エネルギー価格の低下とゴールドの買い付けが大幅に減ったことが影響したようだ。4月の輸出は192.3億ドルで3月の236億ドルから減少しており、世界的な景気停滞感を反映していると思われる。

5月3日に発表された4月のトルコ消費者物価指数上昇率は前月比2.39%となり3月の2.29%を上回る伸びとなった。前年同月比は43.68%で3月の50.51%から低下したものの前年同期の高インフレ加速との対比により水準が下がったとはいえリラ安による通貨インフレもあり依然として異常に高い水準にとどまっている。コア指数でみても前月比が3.2%で3月の2.2%を上回り、前年同月比は45.5%で3月の47.4%から若干の低下にとどまった。また生産者物価指数の上昇率も前月比は0.81%で3月の0.44%を上回り、前年同月比は52.11%で3月の62.45%から低下したものの50%を上回っている。
5月4日に発表されたトルコ中銀による四半期毎の年末予想インフレ率は22.3%で2月から据え置かれた。しかしトルコ中銀が毎月実施しているエコノミストに対する調査報告では2023年末の消費者物価上昇率予想は37.77%であり、40%を超える水準のままとなる見方も多いのが実情だ。

5月5日に発表された週次の外貨準備高は4月28日時点のグロスで684.7億ドルとなり4月21日時点の668.8億ドルから増加したが、ネットでは63.6億ドルとなり4月21日時点の82.9億ドルから大幅に減少した。サウジが50億ドルをトルコ中銀に預託したことで3月には一時的な増加が見られたものの既に増加前水準を割り込んでおり、リラ安抑制のための市場介入による取り崩しを反映してネットの減少が目立っており、過去最低だった2022年7月の60.7億ドルに迫っている。
高水準の貿易赤字、高インフレ状態の継続、外貨準備高の減少と、いずれもリラ安を助長しており、今後もこの傾向が続くと懸念される。 

【5月14日のトルコ大統領選挙迫る】

5月14日にトルコ大統領選挙と議会の総選挙がある。現地午後11時59分に大統領選挙の暫定結果が発表される予定だが、最終結果の発表は5月19日となる。
トルコの大統領選挙には4人が立候補しており、再選を目指すエルドアン大統領と最大野党の党首で野党6党による統一候補であるクルチダルオール氏が事実上の一騎打ちとなる。第一回目の投票で過半数を獲得する候補がいなければ5月28日に上位2人による決選投票が行われる。凡そ20年続いたエルドアン氏による強権が終焉するのか継続するのか注目され、4月末の世論調査ではクルチダルオール氏がやや優勢との報道もあり、再選には赤信号がともっているが現職の強みもあり、いずれが勝利しても接戦の場合には不正選挙批判等が沸き起こる可能性も懸念される。なお、トルコ議会=大国民議会は一院制である。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

トルコリラ円の中勢としては、1月16日と3月24日の6.74円をダブル底として下値支持線を形成しており、支持線割れから一段安へ進むのか、7円台回復へ向かい3月8日高値へ迫るのか試されるところにある。
ドル円は3月8日高値に一歩届かずに失速したことで3月24日以降の底上げ基調を維持できるかどうか試されているが、トルコリラ円も5月5日夜の米雇用統計をきっかけとした反発を継続できるのかどうか、5月5日安値割れから先安感が強まるのか試される。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月28日午前時点では4月26日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクルとして5月1日夜にかけての間への上昇を想定し、5月2日午前時点ではサイクルトップ形成期の延長入りによる上昇余地ありとしたものの7.02円割れからは弱気サイクル入りとした。
5月2日夜からの急落で7.02円を割り込み弱気サイクル入りしたが、5月5日夜の米雇用統計から反発したため、5月5日未明安値で直近のサイクルボトムをつけて強気サイクル入りしたと思われる。サイクルトップ形成期は5月2日午後高値を基準として5日午後から9日午後にかけての間と想定されるのですでに反落注意期にあるため、6.90円以上を維持するうちは一段高余地ありとし、6.90円割れからは新たな弱気サイクル入りとして9日深夜から12日未明にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月5日夜の反騰で遅行スパンが好転し、5月8日午前の続伸で先行スパンからの突破を試しているので遅行スパン好転中の高値試し優先とする。先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落の場合は下げ足が速まるとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月3日から5日未明にかけての安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せてから60ポイント超えへ上昇したため、50ポイント以上での推移中は一段高余地ありとするが、50ポイント割れからはいったん下げに入るとみて30ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.90円を下値支持線、6.95円を上値抵抗線とする。
(2)6.90円を上回るうちは上昇余地ありとし、6.95円超えからは6.97円前後への上昇を想定する。6.97円以上は反落注意とするが、6.93円を上回っての推移なら9日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.90円割れからは戻り一巡による下落期入りとみて6.87円、6.85円を順次試してゆく流れとみる。6.85円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、6.90円以下での推移なら9日も安値試しへ向かいやすいとみる。

5月8日
 23:30 4月 財務省現金残 前月比 (3月 -320.5億リラ)
5月10日
 16:00 3月 失業率 (2月 10.0%)
 16:00 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -6.0%)
 16:00 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -8.2%、予想 -1.45%)
5月11日 
 16:00 3月 経常収支 (2月 -87.83億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 5/5時点 グロス (4/28時点 684.7億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 5/5時点 ネット (4/28時点 63.6億ドル)
5月12日
 16:00 3月 小売売上高 前月比 (2月 -6.5%)
 16:00 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 21.5%)
5月14日
 トルコ大統領選挙・総選挙(現地午後11時59分に大統領選挙の暫定結果発表)


注:ポイント要約は編集部

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