若干レンジは上方シフトするもレンジ継続
〇先週のドル円、植田日銀総裁会見内容が所信聴取時に比べハト派だったことで円安でスタート
〇米国CPI発表日の東京市場で一時134.05レベルの高値をつける
〇米CPI、ヘッドラインが予想より低く会見前水準へ下押し、金曜はウォラー理事のタカ派発言でドル高に
〇米国経済指標は強弱ミックスしてはいるものの全体としては弱めのものが多い
〇5月FOMCよりも金利見通しが示される6月FOMCの注目度のほうが高い
〇今週は132.10レベルをサポートに、134.40レベルをレジスタンスとする流れとみる
今週の週間見通し
先週のドル円は、週初は植田日銀総裁会見内容が緩和継続だけでなくイールドカーブコントロールも継続と、所信聴取時に比べてハト派であったことから円安でスタートしました。会見前の132円台前半から133円台後半へと円安に振れ、中一日挟んで米国CPI発表日の東京市場で一時134.05レベルの高値をつけましたが、総合CPIが年率5.0%と予想よりも低かったことを受けて植田総裁会見前の水準へと下押し。金曜にはウォラーFRB理事がタカ派な発言をしたことでドル高と132円の買いと134円の売りのレンジを見た一週間であったと言えます。
植田日銀総裁はどこかの時点でイールドカーブコントロールの修正に動くことは確実視されているものの、思いの外ハト派なスタンスであったことから日本国債の利回りは高止まりしています。
3月上旬から下旬にかけては米銀破綻、UBSによるクレディスイスの買収と金融機関に対する不安から世界的に金利が低下気味で日本の10年債利回り(チャート内青のラインチャート)も一時0.17%台まで低下していましたが、直近では0.48%前後とイールドカーブコントロールの上限値である0.5%に近づいています。前後の7年債(オレンジ)や15年債(水色)が比較的市場の実需に沿った動きをしているのに対して、10年債は歪んだ値動きとなっていて、これを続けると言っているわけですから、海外の投機筋はまたどこで仕掛けてくるかわからないという材料を提供してしまった感じもします。
そして米国CPIは5.0%とかなり下がって来ましたが、金曜のウォラーFRB理事の発言でまだ高すぎる、利上げを継続ということから、FRBとしてインフレターゲットの2.0%が視野に入るまでは引き締めの手を緩めるつもりはないという風にも取れます。ただ、5月FOMCでの0.25%利上げ後は、その状態をいつまで続けるのかという点だけがFRBと市場参加者との見通しの違いで、FRBは年内は維持、市場参加者は先週までは7月から緩和、現在でも9月から緩和と年内に緩和に転じるという見方は変わっていません。
出てくる米国経済指標も強弱ミックスしてはいるものの全体としては弱めのものが多く、FRBもどこかで現状維持の時期を変えてくる可能性はありそうです。5月FOMCよりも金利見通しが示される6月FOMCの注目度のほうが高いように思います。
材料的には上下とも見た感がありますが、テクニカルにはどうでしょうか。いつもの日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
これまで同様昨年高値からのレジスタンスラインと年初来安値からのサポートライン(どちらもピンクのライン)を引いてありますが、上側のレジスタンスラインに到達してきたことから、短期的に青のラインで上昇ウェッジも引いてあります。テクニカルにはトライアングル上抜けの可能性はあるものの、材料的には決して強いとは思えないため、このウェッジの中で若干上値を伸ばす程度ではないかと考えています。
サポートもそのままウェッジのサポートラインを考えてよさそうですから、今週は先週安値圏と重なる132.10レベルをサポートに、134.40レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
4月17日(月)
21:30 米国4月NY連銀製造業景況指数 ☆
23:00 米国4月NAHB住宅指数 ☆
24:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
4月18日(火)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表 ☆
11:00 中国1〜3月期GDP ☆
11:00 中国3月鉱工業生産、小売売上高
15:00 英国3月失業率
18:00 ドイツ4月ZEW景況感 ☆
18:00 ユーロ圏4月ZEW景況感 ☆
18:00 ユーロ圏2月貿易収支
21:30 米国3月住宅着工・建築許可
4月19日(水)
15:00 英国3月CPI ☆
17:00 南ア3月CPI
18:00 ユーロ圏3月CPI
18:00 ユーロ圏2月建設支出
20:00 南ア2月小売売上高
23:30 週間原油在庫統計
25:00 シュナーベルECB理事講演 ☆
27:00 ベージュブック ☆
4月20日(木)
07:45 NZ1〜3月期CPI
08:50 本邦3月貿易収支(通関)
14:00 日銀地域経済レポート公表
15:00 ドイツ3月PPI ☆
15:45 フランス4月企業景況感
20:30 ECB理事会議事要旨公表 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
21:45 ウォラーFRB理事講演 ☆
22:15 イタリア中銀総裁講演
23:00 米国3月中古住宅販売
23:00 米国3月景気先行指数
23:00 ユーロ圏4月消費者信頼感速報値 ☆
25:20 (クリーブランド連銀総裁講演)
4月21日(金)
**:** トルコ市場休場
06:00 (アトランタ連銀総裁講演)
08:01 英国4月消費者信頼感
08:30 本邦3月CPI ☆
15:00 英国3月小売売上高
16:15 フランス4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
22:45 米国4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
4月10日(月)
週明けのドル円は仲値前から実需のドル買いが入り、金曜高値を上抜けた仕掛けの買いも加わって昼過ぎには132.80レベルの高値をつけました。欧州市場序盤には植田日銀総裁の会見を控えてのドル売りが入り上がる前の水準に押していましたが、会見内容が緩和継続、イールドカーブコントロール継続と思った以上にハト派な内容だったことを受け円売りが加速。NY市場前場には133.87レベルまで高値を切り上げ、133円台半ばに押して引けました。
4月11日(火)
ドル円は前日の植田日銀総裁の会見で円安に振れた動きに対して、調整のドル売りがNY市場が始まるまで続きました。133円以下ではドル買いオーダーも見られ、NY市場では米金利上昇の動きとともに改めてドル買いとなり、133.81レベルと日中高値を更新後に若干押して引けました。
4月12日(水)
ドル円は底堅い展開が続き東京昼過ぎには134.05レベルの高値をつけましたが、米国CPIを前にさらに買い仕掛ける動きとはなりませんでした。注目されたCPIは総合CPIが年率で5.0%と予想の5.2%よりも低く、米金利低下、ドル売りの動きとなり132.73レベルまで売られましたが、その後金利が上昇に転じる動きとともにドル円も133円台前半に戻して引けました。
4月13日(木)
ドル円はNY市場までは前日NY後場の狭い値幅の中での小動きが続きました。NY市場に入り発表されたPPIが2.7%と予想よりも低く、CPIとともにインフレ指標が沈静化していることを受け米金利が低下、ドル円は132.02レベルまで水準を切り下げました。その後米金利は戻しドル円も132円台半ばへと戻して引けました。
4月14日(金)
ドル円は欧州市場までは上値の重たい流れが続き、欧州市場前場には132.17レベルの安値をつけました。しかし、前日安値はトライしきれず132円台で底固めをしてのNY市場入り。NY市場では序盤にウォラーFRB理事がタカ派な発言をしたことから米金利が上昇し、ドルも133.84レベルまで買い進められ、そのまま高値圏での週末クローズとなりました。
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