トルコリラ円見通し 米経済指標の悪化と円高による圧迫感続く(23/4/6)

トルコリラ円の4月5日は概ね6.85円から6.78円の取引レンジ、5日早朝の終値は6.82円で前日終値の6.84円からは0.02円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 米経済指標の悪化と円高による圧迫感続く(23/4/6)

米経済指標の悪化と円高による圧迫感続く

〇トルコリラ円、ドル円の下落を追いかけ4/3午後高値からの下落基調継続
〇5日深夜の円高局面で6.78へ安値切り下げ、一旦戻すも6日午前序盤に再び6.80を割り込む
〇対ドルでは5日に取引時間中(19.26)及び終値(19.24)での最安値更新
〇トルコリラ円はドル高リラ安による圧迫と円高の両面で下落しやすい環境
〇6.83以下での推移中は一段安余地あり、6.78割れからは6.75前後への下落を想定
〇6.83から6.85にかけての水準では戻り売りにつかまりやすいとみる

【概況】

トルコリラ円の4月5日は概ね6.85円から6.78円の取引レンジ、5日早朝の終値は6.82円で前日終値の6.84円からは0.02円の円高リラ安だった。
4月3日からドル円の下落基調が続いており、米経済指標の悪化が米FRBによる次回FOMCでの利上げ見送りの可能性や利上げ期間の短縮を連想させて米長期債利回りが連日低下しているが、4月5日も3月の米ADP民間雇用者数が予想を下回る増加にとどまり米2月貿易収支が3か月連続の赤字拡大、ISMの3月サービス業景況指数も前月及び市場予想を大きく下回ったことで米長期債利回りの低下が続き、ドル円は5日深夜安値で130.63円へ安値を切り下げた。6日早朝に131.40円まで戻してから再び131円を割り込むなど下落基調が続いている。

トルコリラ円はドル円の下落を追いかけて4月3日午後高値6.97円からの下落基調を継続し、4日午前安値6.88円から4日夜高値6.93円へ戻してから5日未明に6.83円へ一段安となり、5日深夜にかけての円高局面で6.78円へ安値を切り下げた。6日早朝に6.82円まで戻したものの6日午前序盤には再び6.80円を割り込んでいる。
米10年債利回りは3月29日から6営業日続落、利上げ問題に敏感な2年債利回りも4営業日続落しており、米長期債利回り低下が顕著となっており、日米金利差の縮小と、米銀破綻をきっかけとした信用不安がやや落ち着いているものの先行き不透明感が拭えないことから円高基調が続いており、トルコリラ円も円高に圧迫される展開を強いられている。

【対ドルでは取引時間中及び終値での最安値更新】

ドル/トルコリラの4月5日は概ね19.26リラから19.20リラの取引レンジ、6日早朝の終値は19.24リラで前日終値の19.20リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。
中長期的なリラ安基調が続く中、2月6日のトルコ大地震の発生をきっかけにリラ安が勢い付き、トルコ貿易収支と経常収支及び財政収支の悪化、5月14日のトルコ大統領選挙とその後の不透明感を背景にリラ安が勢い付いてきている。
3月に入ってからは特にリラ安の下落速度が増していることは3月10日の米銀破綻をきっかけとした欧米の信用不安問題が影響していると推察される。銀行破綻の連鎖は落ち着いておりリスク選好感もやや回復したとはいえ、欧米金融機関の融資姿勢が厳しくなっていることは民間による金融引き締めでもあり、ファンダメンタルズの弱さが目立つトルコリラには売り圧力がかかりやすい状況と思われる。
手元のデータでは4月5日安値19.26リラで3月24日安値19.25リラを超えて取引時間中の史上最安値を更新、終値ベースでも4月5日終値19.24リラで4月4日終値の19.20リラを超えて最安値を更新している。

【トルコリラの下落背景】

(1)2021年12月20日にトルコリラ円は6.17円へ下落して史上最安値を更新したが、トルコ財務省がリラ建て預金の為替差損を補填する保護預金政策を導入したことで2021年12月23日に11.15円まで急伸した。しかしこの効果は一時的なものに留まり、その後の下落基調の起点となった。
(2)トルコ貿易関連企業に対する新規融資停止をちらつかせて保有外貨量の規制を導入したことで、トルコ企業は手持ちの外貨をリラに転換せざるを得なくなったことはリラ安防止に寄与するはずだったもののリラ安防止効果は一時的なものに留まった。
(3)エルドアン大統領の意向により2022年8月から11月まで4会合連続で利下げを強行したが、高インフレが続いたことでリラ売りが加速した。トルコ中銀は12月と1月を現状維持としたが2月6日のトルコ南部大地震対策として2月23日に3会合ぶりに利下げを行った。

(4)トルコの貿易収支は1月に142.5億ドルの赤字で過去最大となり、2月と3月はやや減ったものの高水準の赤字が続いている。経常収支は1月に98.49億ドルの赤字で過去最大となった。2月については4月10日に発表予定で85億ドルの赤字と予想されており高水準の赤字状況が続いている。また2月の財政収支は1705.6億リラの赤字で過去最大となり、中央政府債務残高も2月に4兆2111億リラで過去最大を更新している。
(5)トルコのGDP前年同期比は2022年1-3月の7.6%増、4-6月の7.8%増から7-9月期に4.0%増、10-12月期に3.5%増へと大幅に減速したが、大地震の影響も踏まえて2023年1-3月期はさらに低迷すると見込まれており、欧米の金融引き締めによる景気減速や中国の景気回復がまだ鈍いことを踏まえると回復には時間がかかると思われる。

(6)5月14日のトルコ大統領選挙についてはエルドアン大統領の再選が危うくなっており、野党統一候補が直近の世論調査では支持率が上回っている。政権維持でもこれまでの強権的で主要国と一線を画する金融政策の継続で先行き不安が増し、政権交代なら政策転換への期待よりも混乱が懸念されるためにどちらに転んでもリラ売りが勢い付く可能性がある。
(7)トルコリラ円はドル高リラ安を気にしつつもドル円の騰落に合わせた展開を続けているが、ドル円は1月16日安値からの戻りが3月8日高値で一巡して下落期に入っており、3月24日安値からの戻りも短命に終わって失速し始めており、トルコリラ円はドル高リラ安による圧迫と円高の両面で下落しやすい環境にある。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月29日未明安値をサイクルボトムとした強気サイクルによる上昇が一巡し、3月31日夕と4月3日午後の両高値をダブルトップとして弱気サイクル入りした。当面の安値形成期は4月6日未明から8日未明にかけての間と想定されるがまだ安値切り下がりが続いている。強気転換には6.85円を超える反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では4月3日深夜への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、4月4日夜の反発では共に好転できずに一段安となり、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からは戻りを試すとみるが先行スパンが上値抵抗帯となりやすいとみて、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが再び悪化するところから下げ再開とする。

60分足の相対力指数は4月4日深夜と5日深夜に30ポイント前後へ低下してから下げ渋っているものの50ポイントに届かないうちは一段安余地ありとし、下げ足が速まる場合は20ポイント割れもあり得ると注意する。強気転換は50ポイント超えからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.78円を下値支持線、6.83円を上値抵抗線とする。
(2)6.83円以下での推移中は一段安余地ありとし、6.78円割れからは6.75円前後への下落を想定する。6.75円以下は反騰注意とするが、6.82円を下回っての推移なら7日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.83円から6.85円にかけての水準では戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

4月6日
 20:30 週次 外貨準備高 3月31日時点 グロス(3月24日時点 713.4億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 3月31日時点 ネット(3月24日時点 189.3億ドル)
4月7日
 23:30 3月 財務省現金残 前月比 (2月 -1714.8億リラ)
4月10日
 16:00 2月 失業率 (1月 9.7%)
 16:00 2月 経常収支 (1月 -98.49億ドル、予想 -85億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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