トルコリラ円見通し 日銀総裁人事巡るドル円の乱高下に左右される
〇トルコリラ円、日銀総裁人事を巡るドル円乱高下の影響で、2/10昼高値7.00から夕刻安値6.89へ急落
〇その後2/11早朝にはドル円の反騰に合わせ6.99まで切り返す
〇対ドル、2/10は概ね18.86から18.81の取引レンジ、市場全般のドル高がトルコリラへの圧迫要因となる
〇トルコ大地震、工業地帯の被害大きい、政府の対応に対する非難拡大しやすいか
〇2/10発表のトルコ12月鉱工業生産、前年同月比は2か月連続でマイナス、失業率は漸増傾向
〇6.97以上での推移中は上向きとし、7.01超えからは7.03前後への上昇を想定する
〇6.97割れからは弱気転換注意として、6.94試しとする
【概況】
トルコリラ円の2月10日は概ね7.00円から6.89円の取引レンジ、11日早朝の終値は6.98円で前日比終値と変わらずだった。
日銀総裁人事報道を巡りドル円が10日夕刻に129.79円へ急落して10日午前高値131.87円から2円を超える下落規模となったものの11日早朝には131.59円まで切り返す乱高下となり、トルコリラ円も昼高値で7.00円をつけたところから夕刻安値6.89円へ急落したものの11日早朝にはドル円の反騰に合わせて6.99円まで切り返した。
ドル円は2月8日以降、131円を中心として131円台後半へ戻り高値を切り上げつつ安値も切り下がるレンジ拡張型の持ち合いで騰落を繰り返しており、日銀総裁人事を巡る報道に一喜一憂しているところだが、トルコリラ円も7.00円を上値抵抗線としつつ2月8日未明安値6.93円から9日夜安値6.92円、10日夕安値6.89円と安値ラインを切り下げておりレンジ拡張型の持ち合いで騰落を繰り返している。
【日銀人事は緩やかな軌道修正の布石か】
日銀総裁には元日銀審議委員で学者の植田氏を起用する見込みで2月14日に国会提示、2月24日には国会で承認審議が行われる予定とされる。12月20日に日銀が長期金利ゼロ%誘導のための長期金利許容変動上限を0.25%から0.50%へ引き上げたことで異次元金融緩和政策が出口へ向かい始めたとして円高が勢い付いたが、1月18日の金融政策決定会合では市場の期待に反して概ね現状維持とされ、黒田総裁が繰り返し金融緩和政策継続を強調したことや、共通担保資金供給オペ拡充による流動性供給で国内10年債利回りの上昇と円高を抑制されてきた。
植田氏は2月10日のTVインタビューで現状の金融緩和政策は正しいとの見解を示しており、急激な政策修正への政権与党内の批判も踏まえて緩やかな出口戦略がとられてゆく可能性が高まった印象だが、まだ暫くは日銀人事に絡んでドル円が乱調な展開となる可能性があり、トルコリラ円もドル円に振り回されやすいと注意する。
【対ドルでは18.80リラ台での推移】
ドル/トルコリラの2月10日は概ね18.86リラから18.81リラの取引レンジ、11日早朝の終値は18.81リラで前日終値の18.82リラからは0.01リラのドル安リラ高だった。
2月10日の為替市場は米長期債利回りの上昇により全般ドル高基調での推移でユーロやポンド、豪ドル等が軟調推移だった。新興国通貨ではメキシコペソが堅調推移しているものの、電力不足による非常事態宣言の出された南アランドが対ドルで2月2日夜以降の安値を更新、人民元も2月10日に発表された1月のCPIとPPIの伸びが低調で景気浮揚への期待感が後退したことで対ドルでの下落基調を続けており、全般のドル高がトルコリラへの圧迫要因となっている。また2月6日に発生したトルコの大地震による影響もリラへの圧迫要因になっているが、トルコ中銀によるリラ安抑制策もあり対ドルでのトルコリラの動きは最安値近辺での限定的なものに留まっている。
【トルコ大地震 工業地帯の被害、政府対応への非難も厳しくなる】
2月6日に発生したマグニチュード7.8の大地震による死者はトルコで3万人を超え、シリアを含めて5万人を超えるのではないかと懸念されている。東日本大震災を超える被害規模であり、地震多発国のトルコにおいては1939年12月に発生したエルジンジャン地震(マグニチュード7.8)による死者約3万3000人、負傷者約10万人、家屋損壊約11万7000件等の被害規模以来の大災害となった。
被災地域はトルコ南部と南東部にかけ広範囲に及ぶが、トルコ南東部工業地域やメルスィン港、イスケンデルン港など中東と欧州を結ぶ物流網の重要中継点がある。またアゼルバイジャンとトルコを結ぶバクー・トビリシ・ジェイハン石油パイプライン(BTC)や、イラクとトルコを結ぶキルクーク・ユムルタルック石油パイプラインの出口がある。BTCは地震発生から2月8日まで操業停止し、英石油大手BPのアゼルバイジャン法人は2月7日にトルコのジェイハン港からの輸送について不可抗力条項を発動しているが、今のところは石油輸出関連施設での大規模な被害は報じられていない。
インフラの被害を甚大で、ハタイ空港が被災、イスケンデルン港でコンテナ倒壊や火災が発生した。火災は収まったようだが混乱が続いている。また治安の悪化も深刻で、海外からの救助隊が一時撤退するなどの報道も見られる。
震災級の被害復興には莫大な出費を伴い、政府の対応に対する非難を拡大しやすく、5月の大統領選挙への影響も気になるところだが、不法建築による倒壊発生として逮捕者も多数出ているようだ。
【トルコの12月鉱工業生産は2か月連続で前年比マイナス】
2月10日に発表されたトルコの12月鉱工業生産は前月比1.6%増、前年同月比は0.2%減となった。前年同月比は11月の1.1%減から2か月連続のマイナスであり、2021年12月に14.4%増、2022年2月に14.1%増とパンデミックからの回復を示した後は急低下しており、2022年7月以降は3.3%以下の推移が続いている。前月比も2022年7月以降はプラスとマイナスを交互に繰り返しており、2022年後半からの景気減速感を示している。大震災後の復興を先取りするよりもまずは工業地帯の被害や復旧見通しの遅れなどが当面の焦点となりそうだ。
12月の失業率は10.3%で2022年8月に9.8%まで低下した後は漸増傾向にある。大震災発生により今後は失業者の急増も懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月8日未明へ急落して以降は7.00円前後を上値抵抗線としつつ安値ラインが切り下がるレンジ拡張型の持ち合いで騰落を繰り返しているが、この間では2月10日夕刻からの反騰が最大の上昇のため、2月10日午前高値を直近のサイクルトップ、2月10日夕安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとする。高値形成期は15日午前から17日午前にかけての間とするが、戻りは短命で乱高下となる可能性もあると注意し、6.94円割れからは弱気サイクル入りと仮定して15日夕から17日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では2月10日夕刻からの反騰で先行スパンを上抜いたため遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落する場合は下落再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は2月10日夕刻に30ポイントまで低下したが9日夜からの安値更新に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られるので、50ポイント以上での推移中は70ポイントを目指す上昇を想定するが、50ポイント割れからは弱気転換注意とし、45ポイント割れからは下落再開とみて30ポイント割れを目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.94円を下値支持線、7.01円を上値抵抗線とする。
(2)6.97円以上での推移中は上向きとし、7.01円超えからは7.03円前後への上昇を想定する。7.03円以上は反落注意とするが、6.97円以上での推移なら14日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)6.97円割れからは弱気転換注意として6.94円試しとする。6.94円割れを回避して6.97円以上へ戻す場合は上昇再開とするが、6.94円割れからは下げ再開とみて6.90円から6.87円にかけての水準を試す下落を想定する。
【当面の主な予定】
2月13日
16:00 12月 経常収支 (11月 -36.66億ドル、予想 -57.0億ドル)
16:00 12月 小売売上高 前月比 (11月 1.5%)
16:00 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 12.1%)
2月15日
17:00 1月 財政収支 (12月 -1186億リラ)
2月16日
20:00 週次 外貨準備高 2月10日時点 グロス(2月3日時点 779.3億ドル)
20:00 週次 外貨準備高 2月10日時点 ネット(2月3日時点 270.9億ドル)
2月20日
16:00 2月 消費者信頼感指数 (1月 79.1)
23:30 1月 中央政府債務 (12月 403.3億リラ)
注:ポイント要約は編集部
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