『大地震に伴う景気悪化懸念でトルコリラは対ドル・対円共に下落』
トルコ政府・中銀による事実上のドルペッグ政策が継続する中、今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、これまでと同様、ドル円相場に連動した動きとなりました。週初6.97円で寄り付いたトルコリラ円相場は、(1)ドル円相場の急騰(前週末金曜日に発表された米1月雇用統計のポジティブサプライズ+日本経済新聞社による「日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診。政府・与党が最終調整」とのサプライズ報道)を背景に、週明け早々に、週間高値7.07円まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(2)米国とトルコの関係悪化懸念(ロシアが対ウクライナへの軍事作戦で用いる化学製品やマイクロチップをトルコがロシアに輸出していることについて、米政府はトルコの企業および銀行が制裁対象になり得ると警告)や、(3)トルコ南東部で発生した大地震の被害拡大(エルドアン大統領は1939年以降で最大の災害と発言)、
(4)上記3を背景としたトルコ経済の悪化懸念、(5)トルコ株の大暴落(イスタンブール株式市場は売買停止)、(6)トルコ政府の支持率低下(初動対応の悪さや救済の遅れで批判集中)、(7)ドル円相場の急反落(黒田総裁の後任に元日銀審議委員の植田和男氏を充てる方向で調整に入ったとのサプライズ報道→対主要通貨で円独歩高)が重石となり、週末にかけて、週間安値6.89円まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(8)ドル円相場の急反発を受けてトルコリラ円相場も持ち直し、本稿執筆時点(日本時間2/11午前3時00分現在)では、6.98円前後で推移しております。尚、悪材料目白押しの中、対ドル相場は史上最安値を更新しました。
来週の見通し(2/13−2/17)
トルコリラの対円相場は、トルコ政府・中銀による事実上のドルペッグ政策を背景に、昨秋以降、ドル円に連動した動きが続いております。従って、トルコリラ円相場の先行きを予測する上では、ドル円相場の分析が欠かせません。今週末に報じられた日銀次期総裁人事で植田和男氏の就任の可能性が高まったことや、円売り材料と見られていた雨宮氏の就任が見送られたこと、パウエルFRB議長のワシントン経済クラブでの発言が予想されたほどタカ派的では無かったこと等を踏まえると、来週はドル円相場が下落する可能性が高いと考えられます(トルコリラ円の下落要因)。
また、トルコリラの対ドル相場が安定性を保ちつつも、毎週のように着々と史上最安値を更新している点も気がかりです。現在は為替差損保障型預金スキームなど資本政策の影響で、対ドル相場の安定化が図られていますが、こうした資本政策は財政収支の悪化を招くことから長期化が難しく、そろそろ限界が来るのでは無いかと懸念されます(今週発生した大規模地震も財政収支悪化に拍車をかける恐れ)。加えて、5/14に予定されている大統領選に向けてエルドアン大統領が追加利下げに踏み切る可能性が指摘されるなど、金利先安観の観点でも、トルコリラには下落圧力が加わりそうです(現在停止中のイスタンブール株式市場が来週2/15より再開することも、トルコ株大暴落→トルコリラ売りの波及経路を想起させるため懸念材料)。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(TRYJPY):6.80ー7.10
トルコリラ円日足
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