『米CPIが市場予想を下回れば下落トレンド再開の恐れも
今週のレビュー(2/6−2/10)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初132.15で寄り付いた後、(1)先週末金曜日に発表された米1月雇用統計のポジティブサプライズや、(2)上記1を背景とした米長期金利の急上昇、(3)日本経済新聞社による「日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診。政府・与党が最終調整」とのサプライズ報道(雨宮氏就任は円売り要因との市場の見方)が支援材料となり、週明け早々に、週間高値132.91まで急伸しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)鈴木財務相による「次期総裁任命に関して雨宮氏に打診していない」との上記3に関する否定発言や、(5)パウエルFRB議長による「商品部門でディスインフレのプロセスが見られる。また、住宅サービス部門でもディスインフレが始まると予想している」とのワシントン経済クラブでのハト派発言、(6)米新規失業保険申請件数の冴えない結果、
(7)次期日銀総裁に元日銀審議委員の植田和男氏を起用する意向を固めたとのサプライズ報道(副総裁には前金融庁長官の氷見野良三氏と、日銀理事の内田真一氏)、(8)上記7を背景とした日銀による金融緩和の早期修正観測(同氏は雨宮氏よりハト派色が薄いとの市場の見方)、(9)ドル円ロング勢の大規模ロスカットが重石となり、週末にかけて、週間安値129.82(2/3以来、約1週間ぶり安値圏)へと急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(10)次期日銀総裁候補の植田和男による「現在の日銀の金融政策は適切」「緩和の継続が必要」とのハト派的な発言や、(11)上記10を背景としたドル円相場の大規模ショートカバー、(12)米2月ミシガン大消費者信頼感指数の市場予想を上回る結果、(13)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間2/11午前3時25分現在)では、131.45前後まで持ち直す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0790で寄り付いた後、早々に週間高値1.0799まで上昇しました。しかし、心理的節目1.0800をバックに伸び悩むと、(1)先週末金曜日に発表された米1月雇用統計のポジティブサプライズや、(2)上記1を背景とした米長期金利の急上昇、(3)欧米金融政策の方向性の違い(金融引き締め長期化観測が再浮上している米国と、金融引き締め休止観測が台頭した欧州との金融政策格差)、(4)ユーロ圏12月小売売上高の冴えない結果、(5)ドイツ12月鉱工業生産の市場予想を下回る結果、(5)米当局者によるタカ派的な発言(ミネアポリス連銀カシュカリ総裁)が重石となり、翌2/7にかけて、一時1.0667まで下落しました。
その後は、(7)ECB当局者により相次ぐタカ派発言(オーストリア中銀ホルツマン総裁、スロベニア中銀バスレ総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、シュナーベルECB専務理事、オランダ中銀クノット総裁、ラトビア中銀カザークス総裁など)や、(8)パウエルFRB議長によるワシントン経済クラブでのハト派発言(懸念されたほどタカ派的では無かったことに対する安堵感)、(9)欧州株の堅調推移、(10)米新規失業保険申請件数の冴えない結果を背景に、一時1.0793まで反発する場面も見られましたが、週初に記録した週間高値1.0799に届かず失速すると、(11)米30年債入札の低調な結果や、(12)米長期金利の更なる上昇(米10年債利回りは1/6以来の高水準となる3.71%へ急上昇)、(13)ドイツ1月消費者物価指数速報値(結果+8.7%、予想+8.9%、※前年比)および、ドイツ1月調和消費物価指数速報値(結果+9.2%、予想+10.0%、※前年比)の伸び率鈍化が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0666(1/9以来、約1ヵ月ぶり安値圏)まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間2/11午前3時25分現在)では、1.0675前後で推移しております。
来週の見通し(2/13−2/17)
<ドル円相場>
ドル円は1/16に記録した約7カ月半ぶり安値127.22をボトムに反発に転じると、2/2に一時132.91まで持ち直しましたが、週末にかけて再び下落するなど、冴えない動きとなりました。アップサイドより一目均衡表の分厚い雲が垂れ下がってきていることや、強い売りシグナルを示唆する三役逆転が再点灯していること、90日移動平均線と200日移動平均線のデッドクロスが目前に迫っていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
ファンダメンタルズ的に見ると、(1)日本側は、日銀次期総裁人事で、予てより円安要因と見られていた雨宮現副総裁の就任が見送られ、予想にすら上がっていなかった植田和男氏が選出されるサプライズが報じられたため、「日銀による金融緩和の早期修正観測→円金利上昇→円買い」の波及経路が出てきた一方、(2)米国側は、前週末金曜日に発表された米雇用統計のポジティブサプライズ以降、米FRBによる金融引き締め長期化観測が浮上すると共に、金融市場が織り込むターミナルレートも大幅に上方修正されるなど、「米金利上昇→米ドル買い」の波及経路が出てきました。従って、現在は、「円買い」と「ドル買い」が綱引き状態となっているため、ドル円は振れを伴いながらも方向感に欠ける値動きが続いています。但し、来週2/14に予定されている米1月消費者物価指数が市場予想を下回る場合には、こうした均衡状態が崩れるリスクがあるため、逆CPIショック発生に伴うドル円急落に注意が必要でしょう(米金利低下→米ドル売りの流れが再開すれば、ドル円が1/16に記録した直近安値127.22に向けて大きく値を崩すシナリオもあり得る)。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は上述の米1月消費者物価指数以外に、日本の10ー12月期GDP速報値や、米2月NY連銀製造業景況指数、米1月小売売上高、米1月鉱工業生産、米2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、米当局者発言(ダラス連銀ローガン総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、セントルイス連銀ブラード総裁、クックFRB理事、リッチモンド連銀バーキン総裁)に注目が集まります。
来週の予想レンジ(USDJPY):128.00ー133.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/2に記録した約10ヵ月ぶり高値1.1034をトップに反落に転じると、今週は一時1.0666まで急落しました。この間、ローソク足が主要サポートポイント(一目均衡表転換線、ボリンジャーミッドバンド、21日移動平均線、一目均衡表基準線)を下抜けした他、4時間足などの下位足で強い売りシグナルが点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの「悪化」を印象付けるチャート形状となりつつあります。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、これまでユーロドル相場を下支えしてきた「欧米金融政策の方向性の違い」が足元で立場が逆転(米FRBによる金融引き締め早期終了観測が、金融引き締め長期化観測に転じる一方、ECBによる金融引き締め長期観測が、金融引き締め早期終了観測に転じる逆転現象が発生)するなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、短期的なユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(※但し、来週の米1月CPIが市場予想を下回る結果となれば、一転してユーロ買い・ドル売りに転じる恐れもあるため、中長期的なユーロドル上昇見通しは維持)。
尚、来週は欧州側では、ユーロ圏12月鉱工業生産やECB当局者発言(パネッタECB専務理事、ドイツ連銀ナーゲル総裁、レーンECB専務理事、フランス中銀ビルロワドガロー総裁)、米国側では米1月消費者物価指数や米当局者発言(ダラス連銀ローガン総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、セントルイス連銀ブラード総裁、クックFRB理事、リッチモンド連銀バーキン総裁)に注目が集まりそうです。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0500−1.0900
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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