ドル円見通し 日銀人事、米CPIを巡る思惑交錯で131円を中心に乱高下続く(週報2月第二週)

ドル円は、131円を中心にレンジを拡大しながら騰落を繰り返す乱調な展開を続けた。

ドル円見通し 日銀人事、米CPIを巡る思惑交錯で131円を中心に乱高下続く(週報2月第二週)

ドル円見通し 日銀人事、米CPIを巡る思惑交錯で131円を中心に乱高下続く

○ドル円、米雇用統計の好結果や日銀新総裁人事を巡る報道等から7日未明に132.90円へ続伸
○以降、FRB議長インタビュー、日銀人事報道、FRB高官らのタカ派的発言等を受け131円中心に乱高下
○日銀新総裁に植田和男氏起用との報道のサプライズ感にドル円一時2円超急落するも翌朝には戻す
〇米労務省10〜12月CPIを上方修正、インフレ上昇圧力健在との懸念招く
○ドル円、日々の終値が26日移動平均線超える状況維持、下げ一服での反発レベルを超えつつある印象
○132.90円を超える場合133円台後半への上昇を想定、132円以上維持なら135円を目指す可能性も
○130円から129.60円にかけては買い戻されやすいとみるが、下げ足早まる場合は129円前後試し

【概況】

ドル円は、2月3日夜の米1月雇用統計が予想の3倍近い就業者増加や失業率の改善等を示したことをきっかけとしたドル全面高により、128円台から2月4日早朝に131円台序盤へ急伸し、2月6日朝には日銀新総裁人事を巡る報道から132.56円へ続伸、さらに次週の日銀人事案国会提出見込みとの報道で7日未明には132.90円へ高値を伸ばした。急騰一巡で調整に入り、2月8日未明のパウエル米FRB議長へのインタビュー内容が硬軟入り交じりの内容だったために130.46円へ急落してから131円台中盤へ反発し、以降は日銀人事関連報道や米FRB高官らによる利上げ継続姿勢を強調する発言等から乱高下を繰り返した。2月10日午前へ131.87円まで高値を切り上げる一方、10日夕刻には129.79円へ急落してから131円台中盤へ戻すなど、131円を中心にレンジを拡大しながら騰落を繰り返す乱調な展開を続けた。

【日銀新総裁に植田元審議委員のサプライズ】

日銀次期総裁人事について官邸が元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏、副総裁の後任に氷見野良三前金融庁長官と、内田真一日銀理事とする案が固まったと報じられた。2月14日に国会に提示されて2月24日に審議される予定だ。
2月6日朝には「雨宮日銀副総裁に総裁就任を打診」と報じられ、6日夜には次週の人事案国会提出見込みとされたところは円安反応だったが、2月9日午後に自民党議員の話として「日銀総裁人事でアベノミクス転換示唆なら調整難航」、「山口元副総裁では党内がまとまらない」等と報じたところでは小波乱も見られた。
2月10日夕刻に植田氏起用で固まると報じられたところでは、総裁候補の下馬評に挙がっていなかったために海外勢には「誰だ?」というサプライズ感を招いてリスク回避的な円高となり、ドル円は131.60円台から129.79円へ2円を超える急落となったが、植田氏が審議委員時代にゼロ金利政策を支えた人物と米WSJ紙等が報じたことで急激な日銀政策変更はないとして2月11日早朝には131.59円まで切り返した。

政権与党内の調整難航で山口氏等の起用をあきらめ、雨宮副総裁等への打診も固辞されたことで植田氏に落ち着いたのではないかと思われるが、植田氏起用が決まれば日銀の異次元緩和政策からの出口戦略はやや緩やかなものに留まるのではないかと推察される。植田氏は2月10日夜に記者団に対し「金融政策は景気と物価の現状と見通しに基づいて運営しなければいけない。そうした観点から現在の日本銀行の政策は適切。現状では金融緩和の継続が必要」と述べている。

【2月14日の米CPIへ向けた米長期金利動向にも注意】

米労働省は統計データの年次改定により消費者物価指数(CPI)上昇率について10月分を当初のプラス0.4%から0.5%へ、11月分を当初のプラス0.1%からプラス0.2%へ、12月分を当初のマイナス0.1%からプラス0.1%へと改定した。10月のCPI上昇率低下が「逆CPIショック」とされるドル安を招き、12月のCPIがマイナスに低下したこともインフレのピークアウトを象徴するものとして長期債利回り低下とドル安を招いたのだが、今回の年次修正によりインフレの上昇圧力がまだ健在であるとの懸念を生じさせている。
2月14日には1月の米CPI上昇率の発表があり、事前予想では全体の前月比がプラス0.5%、前年同月比はプラス6.2%、コア指数の前月比はプラス0.4%、前年同月比はプラス5.5%とされ、いずれも前年同月比では減速するものの前月比では再加速の兆しを示すものと見込まれている。

2月8日未明のパウエル米FRB議長インタビュー応答では、「2023年に大きく低下し、2024年にはFRBの目標とする2%に近づく」と述べてインフ沈静化へ期待を示すハト派的な内容とともに「当面は利上げ継続が適切で経済指標次第では12月時点の予想を上回る利上げも検討される」とのタカ派的姿勢も混在するものだった。その後のウォラーFRB理事、NY連銀ウィリアムズ総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁らも利上げ継続の必要性を強調しており、2月3日の米雇用統計が強い内容だったことも含めて利上げ期間の短縮と早期の利下げ再開への期待感はやや後退している印象だ。2月14日の米CPIやその他経済指標から市場心理が早期利下げ再開への楽観を取り戻すかどうか注目される。

【米10年債利回りは2月3日から反騰基調】

2月3日の米雇用統計等をきっかけに米長期債利回りは総じて反騰期に入っているが、2月10日もミシガン大の2月消費者信頼感指数が66.4となり、1月の64.9及び市場予想の65.0を上回って2022年1月以来の高水準へ上昇したことと、1年先期待インフレ率が1月の3.9%から4.2%へと上昇したことにより、利上げ状態の継続期間が長引くとの見方で米長期債利回りは上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは2月10日に前日比0.08%上昇の3.74%とし、2月2日の3.33%以降の高値を更新、1月6日以来の水準へ切り返している。30年債利回りは0.09%上昇の3.82%で2月2日の3.50%以降の高値を更新、2年債利回りも0.04%上昇の4.53%で2月2日の4.04%以降の高値を更新した。
一方でNYダウの2月10日は前日比169.33ドル高と上昇、2月7日から8日への続落から持ち直したが、8日の下げ幅207.68ドル安の解消には至らず、長期金利上昇に敏感なナスダック総合指数は71.46ポイント安で2月8日から3営業日続落した。

【昨年10月21日高値以降では最大最長のリバウンド】

【昨年10月21日高値以降では最大最長のリバウンド】

ドル円は昨年10月21日高値151.94円を起点として下落期に入ったが、今年1月16日安値127.21円まで24.73円の下落幅となったあとは新たな安値更新を回避、2月6日高値132.90円まで5.69円の上昇幅となった。
昨年10月21日高値以降の下落途中における反発としては、11月15日安値から11月21日高値までの5日間で4.58円、12月2日安値から12月15日高値までの10日間で4.57円、今年1月3日安値から1月6日高値までの4日感で5.27円というように概ね5円前後の規模、短ければ1週間、長引いて2週間の戻りを入れてから一段安に入るという傾向で推移してきた。
1月16日安値から2月6日高値まで16日間で5.69円の上昇となり、上昇期間も上昇幅もこれまでで最大となっている。また12月15日や1月6日の高値等は一目均衡表の26日基準線が抵抗線となって戻りを抑えてきたが、2月6日高値への上昇で26日基準線を超え、その後は上げ渋りとなっているものの26日基準線が横ばい推移に入る中で日々の終値では同線を上回る状況を維持しており、これまでの下げ一服での反発レベルを超えつつある印象をもたらしている。

2月14日の日銀人事案国会提出や新総裁候補を巡る思惑と、2月14日夜の米CPIの内容次第ではドル円も大きく動意付く可能性があるが、それらを弱気で通過して1月16日安値へ迫る下落となる場合は戻り一巡からの下落再開感及び一段安への懸念が強まってゆくと思われ、その際は125円前後へと当面する下値目途も切り下がると思われる。逆に、それらを強気で通過して2月6日高値を超えてくる場合は、昨年10月21日高値からの大幅下落がひとまず落ち着いて、これまで小反発レベルを超えた規模へと発展する可能性が高まり、135円超えを試す上昇期に入ることも考えられる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)2月8日未明以降は131円を中心としてレンジ拡張型の往来相場となっているため、中心値の131円を上回り推移する場合は高値切り上げとその後の反落を警戒し、131円を下回る場合は安値切り下げへと進みやすいと考える。
(2)132円から132.50円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみるが、日銀人事や米CPI等をきっかけに2月7日未明高値132.90円を超える場合は133円台後半への上昇を想定する。また132円以上を維持して高値切り上げが続く場合は135円を目指す可能性もあるとみる。
(3)130円から129.60円にかけてのゾーンは買い戻されやすいとみるが、日銀人事や米CPI等をきっかけに下げ足が速まる場合は129円前後試しとする。また、130円以下で安値切り下げが続く場合は128円前後試しへ下値目途を引き下げる。

【当面の主な予定】

2/13(月)
ユーロ圏財務相会合
22:30 (米) ボウマンFRB理事、講演

2/14(火)
EU財務相理事会
08:30 (豪) 2月 ウエストパック消費者信頼感指数 (1月 84.3)
08:50 (日) 10-12月期 GDP・速報値 前期比 (7-9月 -0.2%、予想 0.5%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP・速報値 年率換算 (7-9月 -0.8%、予想 2.0%)
09:30 (豪) 1月 NAB企業景況感指数 (12月 12)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.1%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -2.8%)
13:30 (日) 12月 設備稼働率 前月比 (11月 -1.4%)
16:00 (英) 12月 失業率・ILO方式 (11月 3.7%、予想 3.7%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 1.9%、予想 1.9%)

22:30 (米) 1月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.5%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (12月 6.5%、予想 6.2%)
22:30 (米) 1月 CPIコア指数 前月比 (12月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 1月 CPIコア指数 前年同月比 (12月 5.7%、予想 5.5%)
25:00 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、イベント参加
25:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
28:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演

2/15(水)
10:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、上院公聴会出席
13:30 (日) 12月 第三次産業活動指数 前月比 (11月 -0.2%、予想 0.1%)
16:00 (英) 1月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (12月 0.4%、予想 -0.4%)
16:00 (英) 1月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (12月 10.5%、予想 10.3%)
16:00 (英) 1月 CPIコア指数 前年同月比 (12月 6.3%、予想 6.2%)
16:00 (英) 1月 小売物価指数(RPI) 前年同月比 (12月 13.4%、予想 13.2%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 1.0%、予想 -0.8%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 2.0%、予想 -0.7%)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 -152億ユーロ、予想 -160億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 -117億ユーロ)
22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.1%、予想 1.8%)
22:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -1.1%、予想 0.9%)
22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 -32.9、予想 -19.0)

23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.7%、予想 0.5%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 78.8%、予想 79.1%)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数 (1月 35、予想 37)
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省20年債入札

2/16(木)
08:50 (日) 12月 機械受注 前月比 (11月 -8.3%、予想 2.8%)
08:50 (日) 12月 機械受注 前年同月比 (11月 -3.7%、予想 -6.1%)
08:50 (日) 1月 通関貿易収支・季調前 (12月 -1兆4485億円、予想 -3兆9334億円)
08:50 (日) 1月 通関貿易収支・季調済 (12月 -1兆7242億円、予想 -2兆4698億円)
09:30 (豪) 1月 新規雇用者数 (12月 -1.46万人、予想 2.00万人)
09:30 (豪) 1月 失業率 (12月 3.5%、予想 3.5%)
18:40 (欧) パネッタECB理事、講演
22:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
22:30 (米) 1月 住宅着工件数・年率換算 (12月 138.2万件、予想 136.0万件)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数 前月比 (12月 -1.4%、予想 -1.6%)

22:30 (米) 1月 住宅着工許可件数・年率換算 (12月 133.0万件、予想 135.0万件)
22:30 (米) 1月 住宅着工許可件数 前月比 (12月 -1.6%、予想 1.0%)
22:30 (米) 2月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (1月 -8.9、予想 -7.5)
22:30 (米) 1月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (12月 -0.5%、予想 0.4%)
22:30 (米) 1月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (12月 6.2%、予想 5.4%)
22:30 (米) 1月 PPIコア指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 PPIコア指数 前年同月比 (12月 5.5%、予想 4.9%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.6万件、予想 20.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.8万人、予想 168.8万人)
22:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
24:00 (欧) レーンECB理事、講演
26:00 (英) ピル英中銀理事、講演
27:00 (米) 財務省インフレ指数連動30年債入札
27:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

2/17(金)
06:00 (米) クックFRB理事、イベント挨拶
07:30 (豪) ロウ豪中銀総裁、議会委員会証言
08:15 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
16:00 (英) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.0%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 -5.8%、予想 -5.6%)
16:00 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -1.1%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (12月 -6.1%)
16:00 (独) 1月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (12月 -0.4%)
18:00 (欧) 12月 経常収支・季調済 (11月 136億ユーロ)
22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 0.4%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 -2.6%、予想 -0.1%)
22:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
22:45 (米) ボウマンFRB理事、講演
24:00 (米) 1月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (12月 -0.8%、予想 -0.3%)

注:ポイント要約は編集部

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