2023年のNZドル対米ドルの見通し
(1)ファンダメンタルズ分析
米・NZのGDP
上図@はNZ中銀の予想(2021年11月時)とFRBの予想(2021年12月時)を合わせたもので、図Aは両国の2022年の同時期予想数値です。青の矢印を見ると、2021年時の2023年のGDP予想はNZ中銀が1.4%だったのに対し、2022年時には▼0.5%のマイナス成長に引き下げています。同様にオレンジの米国は2.2%が0.5%に成長鈍化予想になっています。プラス成長とマイナスでは受ける印象は大きく違いますが、その差は1%です。また成長率は2022年にはNZ>米国でしたが、2023年には逆転する予想となり、NZの成長率鈍化が著しくなる見通しです。今後3ヶ月毎の見直しでどの様に変化していくのか注目されます。
(2)NZ・米の消費者物価に関する両国中銀の見通し
(赤い線は5%)
両国中銀の2023年インフレ見通しは圧倒的にNZ>米国になっています。GDP同様に図BはNZ中銀の2021年11月時、FRBは同年12月時。図Cはそれぞれ2022年です。
今週の1月25日に発表されたNZの2022年の第4四半期CPIは前年同期比で7.2%でしたので、図CのNZ中銀予想よりはやや下がりましたが、数値自体は高止まりとなっています。NZ中銀は2021年下半期から米国より先行して利上げを実施しましたが、中国のゼロコロナ対策による経済鈍化や自国のコロナ対策などで景気配慮から2022年前半は利上げペースを落としたことから、2022年末に両国の金利差が逆転されています(下記の(3)NZ・米国の政策金利推移内の図Dをご参照)。2022年中の利上げ幅だけに限ればNZは3.5%の利上げ、一方、米国は年央から3回連続の0.75%利上げを含めて、1年間で4.25%の利上げを実施しました。この引き締め度合いの差で、インフレ沈静化の差に繋がった部分もあろうかと思われます。
2023年に関しては、NZ中銀の2022年11月時予想では、2023年末にOCRは5.5%となっており、更に1.25%程度の利上げ予想となっています。一方、米国は12月のドットプロットで、最大の利上げ予想は2023年中に5.50〜5.75%までですので、やはり1.25%程度の利上げ見込みになっています。しかしながら、直近のCME Fedwatch(1月25日現在)を見ると、7月のFOMCが最大のFFレート高の予想で、大半は5.00〜5.25%、僅かに5.25〜5.5%までを見ています。現行のFFレートからすると、残り0.75%の利上げか、最大でも1%の利上げに留まっています。現状から見ると、上げ幅はNZ>米国で、ややNZに分があります。現状のCPIを見る限りでもNZの引き締めが米国以上になりそうです。
(3)米・NZ政策金利推移
両国ファンダメンタルズの先行き比較では、現状で米国がNZよりも良い感じです。NZのGDPは中銀の予想通りなら、マイナス成長下での金利高により、先々市場でスタグフレーション懸念も出てくる可能性があります。まず2月に出る予定の中銀GDP、CPI、及びOCRの予想がどの様に変わったかを見る必要があります。
(4)テクニカル分析
@NZドル/米ドルの月足チャート
(2023年1月24日現在)
長期のNZドル米ドルは2000年9月底値からのサポートラインD(=0.5600)に支えられています。昨年は下ヒゲだけ少し抜けた形になっていますが、ほぼサポートとして機能しています。もう1つは2009年3月底値からのサポートE(=0.5520)にあり、昨年底値0.5512を守り切りました。このDとE間は非常に重要なサポートになっています。この2つは1年間で40〜60ピップスの上昇になり、2023年末では概ね0.5560〜0.5660水準になります。
上値は2014年7月高値からの抵抗線A(=0.7080)にあり、約8年半のNZドル安の流れを作っています。ここから平行に下したB(=0.4850)とでNZドル安トレンドラインになっています。このレンジ間で目先の底値は上記のDとEが下支えしている構図です。また、AとB間で、2001年9月底値からのサポートCが2020年3月に下抜けたことで、現在のCは0.6600で抵抗線となっています。AとBは0.4850〜0.7080レンジでのNZドル安ですが、その前のCとEの0.5520〜0.6660で持ち合った形となっています。今年は9年振りにAを上抜けていくのか、再度AかCで跳ね返されて、下限に近付く動きになるか。ファンダメンタズを見る限りはA抜けが厳しい状況です。もし万一Aを抜くと2004年1月高値付近の横抵抗線(=0.7500)が視界に入ってきます。
ANZドル/米ドルの週足チャート
(2023年1月24日現在)
上図の週足チャートは2014年6月高値からの抵抗線A(=0.7100:ほぼ月足のAにも相当)に沿ってNZドルが下落しています。下限はBの横サポート(0.5470〜0.5500)となり、AとBは長期に亘るディセンディングトライアングルになっています。この間には2021年2月高値からの抵抗線D(=0.6750)もあります。従い、このAとDが強い抵抗線になっています。もしAを越えても、横抵抗線のC(0.7520)で横這いになることが予想されます。週足チャートでも、現在はNZドル安で戻り高をトライしていることになります。
2023年見通し
2022年のNZドル・米ドルはレンジ0.5512〜0.7035と1,500ピップスも動く大幅な変動となりました。昨年4月に高値をつけて、そこから米国の大幅利上げに反応して、10月に底値をつけています。2021年の値幅が0.6701〜0.7466と765ピップスしかなかったので、前年比2倍となりました。昨年の予想レンジが0.6300〜0.7100でしたので、下限方向で大幅な下押しをしています。
さて2023年ですが、ファンダメンタルズでは、インフレ沈静化を目指すNZの利上げ幅が大きくなることが予想され、年初はNZドル高方向、その後年央でNZのGDPが中銀予想通りのマイナスになると、利上げ一辺倒とはいかずになります。そのため2月乃至5月のNZ中銀の見通しが非常に重要となりそうです。もしプラスにでも上方修正していけば、そのまま金利強含みでNZドル高を継続する可能性が出てきます。その場合には月足・週足共に2014年高値からの抵抗線がある0.7100を上抜けることも想定しておきます。現状のファンダメンタルズでは上抜けが厳しいと思われ、今年も0.7100を上限とみます。今年の変動幅は米国の大幅利上げが起きた昨年程ではないと思われますが、それでも2021年のレンジ幅よりは大きく見ておき、2021年〜22年の平均幅である1,100ピップスとします。従いまして2023年の年間レンジは0.6000〜0.7100と予想します。
但し、年央近くでのシナリオ変動として以下の条件も頭の片隅におきます。
@ もし年前半でスタグフレーションの可能性がでてきたら、週足の抵抗線0.6800を上限として、ここから1,100ピップス下げて0.5700〜0.6800レンジ。
A NZ中銀のGDP見通しが年央辺りからプラス転に変更された場合は、0.7100抵抗線の上抜く可能性が出てくるので、0.7300までの上値を想定し、そこから1,100ピップス下げて0.6200〜0.7300レンジ。
現状では@、Aの可能性は低いとみています。
(2023年1月27日13:15、1NZドル=0.6493米ドル)
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