『約1年1ヵ月ぶり安値更新後に持ち直す展開。来週は反落リスクに要警戒』
〇今週のトルコ円、週明け早々約1年1ヵ月ぶり安値となる6.75円まで下落
〇売り一巡後に下げ渋ると、日銀政策発表後のドル円急騰に週央にかけて、週間高値7.02円まで反発
〇買い一巡後は、エルドアン大統領による総選挙前倒し実施発表等に再び7.0割れ水準での取引
〇テクニカルには三役逆転、弱気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の下落トレンド等成立し、地合い悪化
〇ドル円相場の下落トレンドが続く限り、トルコリラ円相場も下落基調が続く公算大
〇引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):6.65ー7.05
今週のレビュー(1/16−1/20)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初6.80円で寄り付いた後、(1)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの再燃や、(2)トルコ12月財政収支(結果1186億リラ赤字、前回1083億リラ黒字)の赤字転落、(3)日銀による金融緩和の修正観測が重石となり、週明け早々に、約1年1ヵ月ぶり安値となる6.75円まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)日銀金融政策決定会合での現状維持のサプライズ決定や、(5)上記4を背景とした円ロングの大規模ロスカット(ドル円急騰→トルコリラ円連れ高)、(6)トルコ12月住宅販売(結果▲8.2%、前回▲34.1%)の前回比改善が支援材料となり、週央にかけて、週間高値7.02円まで反発する場面も見られました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(7)エルドアン大統領による総選挙の実施時期の前倒し発表(6月中旬に予定されていた総選挙の実施時期を5/14に前倒しする可能性を示唆)や、(8)上記7を背景としたトルコ中銀の更なる利下げ観測(エルドアン大統領が総選挙に向けて利下げ再開を志向する可能性あり)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間1/21午前2時30分現在)では、6.90円前後で推移しております。尚、トルコ中銀は今週開催した金融政策決定会合において、主要政策金利である1週間物レポ金利の据え置き(9%)を決定しました。
来週の見通し(1/23−1/27)
トルコリラの対円相場は、昨年10/21に記録した高値8.17円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、約1年1ヵ月ぶり安値となる6.75円まで急落しました。この間、主要サポートポイントを軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「三役逆転」「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となっております(2021年12月20日に記録した史上最安値6.17円が射程圏内)。事実、対ドル相場は史上最安値を更新するなど安値圏での冴えない動きが継続中(トルコ中銀は対ドルでのボラティリティ抑制に努めている為、トルコリラ円相場の最近の動きはドル円相場に連動する傾向あり→つまり、ドル円相場の下落トレンドが続く限り、トルコリラ円相場も下落基調が続く公算大)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)トルコ経済を巡る先行き不透明感(実質GDPの伸び率鈍化、生産・輸出・消費の減速傾向)や、(2)雇用情勢の改善一服(失業率が2ヵ月連続で上昇)、(3)経常収支や財政収支の赤字幅拡大(中東からの借り入れを通じて外貨準備残高に回復の兆しが見られる一方、需給面では経常収支赤字を背景にトルコリラを買い支える体力の低下が顕著)、(4)エルドアン大統領による利下げ圧力再開懸念(直近で発表されたトルコのインフレ指標が予想外の鈍化を示したことから、エルドアン大統領が本年5/14に予定されている大統領選挙に向けて、政策金利の引き下げをトルコ中銀に再度求める可能性あり)、(5)日銀による次回3月会合での金融緩和・修正観測とそれに伴う円キャリートレード逆流懸念(円買い圧力)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
尚、来週はトルコ1月消費者信頼感指数およびトルコ1月設備稼働率以外に目立ったトルコ経済イベントが予定されていないため、市場の注目は日米の経済指標(米第4四半期GDP速報値や米PCEデフレータ、本邦CPIなど)に移りそうです。米経済指標が市場予想を下回る場合や、本邦CPIが市場予想を上回る場合には、「円キャリートレード逆流再開→ドル円・クロス円下落」の経路で、トルコリラ円にも強い下押し圧力が加わる恐れがあるため、来週も週を通して下落リスクに警戒が必要でしょう。
来週の予想レンジ(TRYJPY):6.65ー7.05
注:ポイント要約は編集部
トルコリラ円日足
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