来週の為替相場見通し:『市場の関心は日本円から米ドルにシフト。来週は米経済指標に注目』(1/21朝)

ドル円は昨年10/21に記録した約32年ぶり高値151.95をトップに下落に転じると、今週前半にかけて、約7カ月半ぶり安値となる127.22まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『市場の関心は日本円から米ドルにシフト。来週は米経済指標に注目』(1/21朝)

『市場の関心は日本円から米ドルにシフト。来週は米経済指標に注目』

〇ドル円、日銀会合での緩和修正観測に週明け127.22まで下落
〇日銀の金融緩和維持決定、資金供給方法拡充、物価見通しの穏当な修正に週央131.59まで急伸
〇買い一巡後は127.50-130.00レンジでもみ合う展開に
〇ユーロドル1.08台中心に高値圏でのレンジ相場続く
〇ドル円、主要テクニカルポイント下抜ける等、テクニカルの地合いの弱さを決定づけるチャート形状
〇ファンダメンタルズも日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレード逆流懸念が重石
〇引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):126.50ー131.50、(EURUSD):1.0700−1.1050

今週のレビュー(1/16−1/20)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初127.83で寄り付いた後、(1)米FRBによる金融引き締め・早期終了観測や、(2)本邦12月企業物価指数の伸び率上昇(1960年1月以降で最大の伸び率)、(3)日銀による金融緩和の修正観測(日銀金融政策決定会合を控えた思惑主導の円買い圧力)が重石となり、週明け早々に、昨年5/30以来、約7ヵ月半ぶり安値となる127.22まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)日銀による金融緩和の現状維持決定や、(5)共通担保資金供給オペの拡充決定(金利入札方式期間を1年から10年に延長→間接的な円金利低下期待)、(6)2023年度の物価見通しの据え置き決定、(7)上記4、5、6を背景とした円ロングの巻き戻し(海外勢を中心に日銀が緩和修正に動くとの見方が広がっていた為、「現状維持+共通担保資金供給オペ拡充+物価見通し据え置き」の組み合わせはハト派サプライズ→直後より円金利低下・円売り・株高の流れが活発化)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値131.59まで急伸しました(黒田総裁からも「更なる長期金利変動幅拡大は必要ない」との発言あり)。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(8)日銀による次回3月会合での緩和修正を見越した円買い再開や、(9)米12月小売売上高(結果▲1.1%、予想▲0.9%)の冴えない結果、(10)米12月生産者物価指数(結果6.2%、予想6.8%)の伸び率急低下、(11)米12月鉱工業生産(結果▲0.7%、予想▲0.2%)の市場予想を下回る結果、(12)米長期金利の急低下(米10年債利回りが昨年9/13以来の低水準へ急低下)が重石となり、同日海外時間に、一時127.57まで急落する場面も見られました(日銀金融政策決定会合後の上げ幅の全値押しを達成)。

その後は、(13)短期間で下落した反動や、(14)米1月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果▲8.9、予想▲11.0)の市場予想を上回る結果、(15)米12月住宅着工件数(結果138.2万件、予想135.8万件)の力強い結果、(16)米新規失業保険申請件数(結果19.0万件、予想21.4万件)の良好な結果、(17)米長期金利の反転上昇が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間1/21午前3時00分現在)では、129.70前後で推移しております。尚、今週は一部メディアより、日銀の正・副総裁(黒田総裁は4/8、雨宮副総裁および若田部副総裁は3/19に任期満了)の後任人事が2/10頃に提示される可能性があることが報じられました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、高値圏でのレンジ相場が継続しました。週初1.0834で寄り付いたユーロドル相場は、(1)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの再燃(ロシア軍が先週末にウクライナに対して大規模ミサイル攻撃を実施)や、(2)ドイツ12月卸売物価指数(結果▲1.6%、前回▲0.9%、※前月比)の伸び率急低下、(3)一部メディアによる「ECBが2月理事会で50bpの利上げを実施した後、3月理事会で利上げ幅を25bpに縮小する可能性が高まっている」との観測報道が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0766まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)天然ガス価格の軟調推移(暖冬の影響で需要が抑制→オランダTTFガス先物は2021年12月以来、約1年1ヵ月ぶり安値圏へと急低下)や、(5)ドイツ1月ZEW景況感指数(結果+16.9、予想▲15.0、前回▲23.3)の力強い結果、(6)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「50bpの利上げペースが一定期間続くことを見込むべきだ」とのタカ派的な発言、(7)欧州株の堅調推移、(8)米経済指標の冴えない結果、(9)米長期金利の急低下が支援材料となり、同日海外時間に、昨年4/21以来、約9ヵ月ぶり高値となる1.0889まで急伸しました。

その後も、(10)オランダ中銀クノット総裁による「50bpの利上げを複数回計画している」とのタカ派的な発言や、(11)ラガルドECB総裁による「インフレは高すぎる」とのタカ派的な発言、(12)独債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(13)ECB理事会議事要旨における「多くのメンバーが75bpの利上げを希望していた」「インフレ見通しに対するリスクは引き続き上方向」とのタカ派的な内容が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間1/21午前3時00分現在)においても、1.0843前後での底堅い動きが続いております。

来週の見通し(1/23−1/27)

ドル円は昨年10/21に記録した約32年ぶり高値151.95をトップに下落に転じると、今週前半にかけて、約7カ月半ぶり安値となる127.22まで急落しました。この間、ローソク足が主要サポートポイントを軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」および「ダウ理論の下落トレンド」が成立し、更には昨年1/24に記録した年間安値113.47と、昨年10/21に記録した年間高値151.95を起点としたフィボナッチリトレースメント半値押し(132.71)および同61.8%押し(128.17)も達成するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを決定付けるチャート形状となっております。目先は昨年5/24に記録した安値126.36を試す動き想定されます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め・早期休止観測(直近で発表された米国のインフレ指標は軒並み鈍化。ISM製造業およびISM非製造業指数も好不況の分岐点となる50を割り込む不冴な結果。実質金利上昇とそれに伴う米経済のオーバーキルが意識される中、市場ではFRBが早晩積極スタンスを和らげるとの見方がコンセンサス)や、(2)日銀による金融緩和の修正観測(今会合は修正見送りのサプライズとなりましたが、市場では黒田総裁最後となる次回3/10会合で緩和修正が決定されるとの見方が根強い。事実、今週のBOJ後のプライスアクションも128円台半ばから131.59へ急騰した後127.57へ全値押しする「往って来い」相場を形成)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレード逆流懸念など、ドル円相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週はブラックアウト期間に突入するため、米当局者からの発言は予定されておりません。この為、市場の関心は米経済指標に移りそうです。特に、1/24に予定されている米12月景気先行指数や、1/26の米12月耐久財受注、米第4四半期GDP速報値、1/27の米PCEデフレータへの注目度が高く、市場予想を下回る結果となれば、米長期金利低下→米ドル売りの経路でドル円に強い下押し圧力を加えるものと推察されます。現時点では、米FRBが描くタカ派シナリオ(FF金利を5.125%まで引き上げた後に年末まで据え置きを続けるシナリオ)と、市場が描くハト派シナリオ(FF金利を4.875%まで引き上げた後、年末にかけて4.375%まで利下げに転じるシナリオ)に大きなギャップが生じていますが、今週はフィラデルフィア連銀ハーカー総裁やボストン連銀コリンズ総裁などからハト派的な発言が散見されており、やや米当局のスタンスが市場側に寄って来た印象があります。

日米金融政策の方向性の違い(金融引き締め最終局面の米国と、金融引き締め開始局面の日本)を背景に、ドル円相場には来週も強い下押し圧力が加わりそうです(日銀金融政策決定会合をこなしたことで、市場の関心は2/1に予定されている米FOMCにシフト済み。来週は日本円主導の動きでは無く、米ドル主導の動きを想定)。

来週の予想レンジ(USDJPY):126.50ー131.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は昨年9/28に記録した約20年ぶり安値0.9535をボトムに反発に転じると、今週半ばにかけて、約9ヵ月ぶり高値となる1.0889(昨年4/21以来の高値圏)まで急伸しました。この間、ローソク足が主要レジスタンスポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となっております。近日中には、90日移動平均線と200日移動平均線のゴールデンクロスを経て、強気のパーフェクトオーダー成立が見込まれることから、更なる上昇が期待されます(来週は強力なレジスタンスとして市場参加者に注目されている心理的節目1.0900の上方ブレイクを想定)。

ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め・早期休止観測や、(2)ECBによる利上げスタンスの継続方針(ユーロ圏のインフレはヘッドラインこそピークアウトの兆しが見られていますが、エネルギーや食料品など変動の大きな項目を除いたコアベースのCPIが引き続き過去最高水準で高止まり→複数のECB当局者が繰り返し述べている通り、金融引き締め政策が長期化する公算大)、(3)上記1、2を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(利上げ最終局面に立っている米国と、利上げ長期化が見込まれる欧州との金融政策の先行き格差→欧米名目金利差縮小に着目したユーロ買い・ドル売りトレンド継続)など、ユーロドル相場の続伸を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ買い・ドル売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週は1/24に予定されているユーロ圏1月消費者信頼感指数や、ユーロ圏1月製造業・非製造業PMI速報値、1/25のドイツ1月IFO景況感指数に加えて、ブラックアウト期間突入前の欧州当局者発言(パネッタECB専務理事、オーストリア中銀ホルツマン総裁、ラガルドECB総裁、オランダ中銀クノット総裁など)に注目が集まります。欧州経済指標が市場予想を上回る場合や、欧州当局者よりタカ派的な発言が相次ぐ場合には、欧州株上昇と欧州債利回り上昇の組み合わせで、ユーロドルに強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されます。状況次第では、心理的節目1.0900や1.1000を突破する可能性もあり得ることから、来週は週を通してアップサイドリスクに警戒が必要でしょう。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.1050

注:ポイント要約は編集部

『市場の関心は日本円から米ドルにシフト。来週は米経済指標に注目』

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