ドル円見通し 1月18日の乱高下に対する7割戻しから反落、乱調な展開続く (週報1月第四週)

日銀の黒田総裁はダボス会において、許容変動幅上限を0.25%から0.50%へ引き上げたことは「完全に正しかった」とし、「現状の大規模金融緩和策を続ける」と強調した。

ドル円見通し 1月18日の乱高下に対する7割戻しから反落、乱調な展開続く (週報1月第四週)

1月18日の乱高下に対する7割戻しから反落、乱調な展開続く

〇先週のドル円、日銀政策決定会合の現状維持がサプライズとなり131.57へ急伸後に127円台半ばに急落
〇20日にはダボス会議での黒田総裁の緩和継続発言に130.61まで反騰するも129.40台に反落して越週
〇黒田総裁在任中の政策追加修正期待は後退するも、総裁交代後は異次元金融緩和姿勢脱却に向かうか
〇米長期金利は一旦下げ止まるも、今後も戻りを入れつつ低下傾向が続くと思われる
〇131円超えからは1/11夜高値132.87、1/6夜高値134.77を目指す可能性が浮上
〇129円割れの場合は安値試し、127.75割れからは1/16安値127.21割れからの一段安へと進みやすいか

【概況】

ドル円は1月18日の日銀金融政策決定会合での現状維持決定に対し、事前報道で追加修正ありとの期待が強まっていたために「何もしなかった」としてサプライズ反応となり、直前安値128.38円から13時台高値131.57円へ3円を超える急伸となったが、日銀の出口戦略への流れは変わらないとして戻り売りから急落に転じ、18日の米経済指標が総じて予想を下回ったことによる米長期債利回りの大幅低下が重なり18日深夜に127.55円まで失速、午後高値からは4.02円の大幅下落で日銀政策決定前の水準を大きく割り込んだ。
1月19日は128円割れを買われて新たな安値更新を回避するも129円には届かない範囲で乱高下一服となっていたが、20日は午後に129円を超えたところから買い戻し優勢となり、ダボス会議で黒田日銀総裁が金融緩和継続を強調したことや、米長期債利回りが19日からの連騰で上昇した事にも押し上げられて深夜高値130.61円まで反騰、18日夜への急落幅の7割を戻したが、深夜以降は戻り一巡で129.40円台へ失速、高値から1円を超える反落で週を終えた。

【黒田総裁在任中の追加修正は無しか】

日銀の黒田総裁はスイスのダボスにおける世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において、12月20日に日銀が長期金利ゼロ%誘導のための許容変動幅上限を0.25%から0.50%へ引き上げたことは「完全に正しかった」とし、「2%の物価安定目標達成のために現状の大規模金融緩和策を続ける」と強調した。また4月8日の任期満了へ向けて「10年にわたる大規模金融緩和策で日本経済をデフレやゼロ成長から脱却させた」としたが、「2%の物価目標を持続的かつ安定的に達成できなかったことが唯一の心残り」とした。

1月20日発表された12月の全国消費者物価指数は前年同月比4.0%上昇となり1981年12月以来41年ぶり高水準となったが、黒田総裁は「大半が輸入物価上昇による押し上げ」とし、「2023年度のインフレ率は2%を下回る」として今後のインフレ率低下を予想し、金融緩和継続の根拠があるとの認識を示した。
黒田総裁は1月18日の現状維持決定については当日の会見で「市場の政策修正への期待感は是正された」と述べているが、ダボス会議発言と合わせて在任中に政策を追加修正することはなさそうな雲行きとなった。しかし政府のアベノミクス脱却姿勢と共に日銀が異次元金融緩和政策から脱却してゆく流れは変わらず、総裁交代後の新体制により出口戦略の実行が始まるのだろうと推察される。

【米10年債利回りは連騰、ダウは続落から抜け出す反発】

1月20日の米長期債利回りは総じて上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.09%上昇の3.48%で終了、30年債利回りは前日比0.10%上昇の3.66%、2年債利回りは前日比0.04%上昇の4.17%で終了した。
10年債利回りは1月18日夜の米PPIや小売売上高が予想を大幅に下回ったことで18日を前日比0.17%低下の3.37%とし、19日も一時3.32%まで低下して昨年10月21日に付けた2020年以降の最高値4.34%以降の最安値としたところから反発に転じ、20日も連騰での上昇となった。米FRB高官らの利上げ継続発言も多かったために年明けからの大幅低下に対する行き過ぎの修正で戻した印象だ。利上げに敏感な2年債利回りも1月18日に0.12%低下、19日には一時4.04%を付けて11月4日に付けた2020年以降の最高値4.88%以降の最安値を更新したところから持ち直した

1月19日にFRBのブレイナード副議長が「インフレ率は依然として高い」「暫くは十分抑制的な金利とする必要がある」とし、NY連銀のウィリアムズ総裁も「やるべき仕事があるのは明らか」として利上げ継続姿勢を強調した。1月20日にはウォラーFRB理事が次回FOMC(1/31-2/1)では0.25%利上げを支持するとしたが当面は「金融引き締めの継続を支持する」と述べており、FRBによる利上げは通常ペースの0.25%に落ち着いた上であと3回程度は続く可能性が高い印象だ。ただし、FRBの見込む政策金利のピーク水準は5%超だが、金利先物市場が織り込んでいるのは5%手前に落ち着き、年後半には利下げの可能性もあり得るという流れであり、今後の米経済指標がかなり強めで推移しない限りは若干の戻りを入れつつも長期債利回り低下傾向は続くのではないかと思われる。

1月20日のNYダウは前日比330.93ドル高と上昇、4日ぶりの反発だが、3日間で1200ドルを超える下落だったところからの戻りとしてはまだ鈍く、12月13日と1月13日の両高値をダブルトップとして中勢レベルの戻り一巡感が出ている。またナスダック総合指数は288.16ポイント高と上昇、1月6日から17日までの7連騰が途切れて18日、19日と続落したところから持ち直しを試しているが、昨年10月安値の後は10000ポイント台を維持しつつ11000ポイント台中盤までの戻りにとどまり中長期的には安値圏の持ち合い程度のため、金融引き締めによる景気減速への不安感が上値を抑えている状況にある。
米国株式市場が強気優勢の流れへ進めばリスク選好感からドル円も上昇しやすくなるが、景気減速感が強まっての世界全体の株安を先導するような下げに入る場合はドル円にとっては円高要因になると思われる。

【ドル円は26日移動平均が日足レベルの抵抗線、60分足はレンジ縮小型の乱高下】

【ドル円は26日移動平均が日足レベルの抵抗線、60分足はレンジ縮小型の乱高下】

ドル円の日足チャートでは10月21日天井から下落に転じて以降、26日移動平均や一目均衡表の26日基準線等が上値抵抗線となっており、12月15日と1月6日の戻り高値も26日移動平均に到達したところで戻り売りにつかまっている。1月18日の乱高下における急伸時及び1月20日夜への上昇時も26日移動平均には届かずにいる。26日移動平均(現在131.74円)を日足の終値ベースで超えてからさらに高値を切り上げる展開へ進めば52日移動平均(現在134.99円)を試す可能性も出てくると思われるが、26日移動平均に届かないか、一時的に到達しても失速するうちは下降トレンドの継続と思われる。

60分足レベルでは1月12日から16日にかけての大幅下落時の起点となった1月11日夜高値132.87円と1月18日の乱高下時の高値131.57円を結ぶ右肩下がりの高値ラインが上値抵抗線であり、1月20日夜の上昇時もこの高値ラインには届かずに終わっている。一方で1月16日昼安値から1月18日深夜安値、19日午後安値と安値ラインは若干切り上がり気味の下値支持線を形成しており、やや騰落幅の大きなレンジ縮小型の持ち合い相場といえる。131円超えからは持ち合いの上値抵抗線突破となり1月11日夜高値132.87円、1月6日夜高値134.77円を目指す可能性が浮上するが、131円に届かないか一時的に超えても維持できずに持ち合い中心値の129円を割り込む場合は安値ラインを試し、127.75円割れからは持ち合い下放れにより1月16日安値127.21円割れからの一段安へと進みやすくなると思われる。

【当面の主な予定】

1/23(月)
休場、中国、香港、シンガポール、台湾、韓国、ベトナム、マレーシア、インドネシア
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合議事要旨(12月19-20日分)
24:00 (米) 12月 景気先行指数 前月比 (11月 -1.0%、予想 -0.7%)
24:00 (欧) 1月 消費者信頼感・速報値 (12月 -22.2、予想 -20.0)
26:45 (欧) ラガルドECB総裁、講演

1/24(火)
休場、中国、香港、シンガポール、台湾、韓国、ベトナム、マレーシア
09:30 (豪) 12月 NAB企業景況感指数 (11月 20)
16:00 (独) 2月 GFK消費者信頼感 (1月 -37.8、予想 -33.0)
17:30 (独) 1月 製造業PMI・速報値 (12月 47.1、予想 48.0)
17:30 (独) 1月 サービス業PMI・速報値 (12月 49.2、予想 49.5)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI・速報値 (12月 47.8、予想 48.5)
18:00 (欧) 1月 サービス業PMI・速報値 (12月 49.8、予想 50.2)
18:30 (英) 1月 製造業PMI・速報値 (12月 45.3、予想 45.4)
18:30 (英) 1月 サービス業PMI・速報値 (12月 49.9、予想 49.7)
23:45 (米) 1月 製造業PMI・速報値 (12月 46.2、予想 46.8)
23:45 (米) 1月 サービス業PMI・速報値 (12月 44.7、予想 45.5)
24:00 (米) 1月 リッチモンド連銀製造業指数 (12月 1、予想 -5)
27:00 (米) 財務省2年債入札

1/25(水)
休場、中国、香港、台湾、ベトナム
06:45 (NZ) 10-12月期 消費者物価指数(CPI) 前期比 (7-9月 2.2%、予想 1.4%)
06:45 (NZ) 10-12月期 消費者物価指数(CPI) 前年同期比 (7-9月 7.2%、予想 7.1%)
08:30 (豪) 12月 ウエストパック景気先行指数
09:30 (豪) 10-12月期 消費者物価指数(CPI) 前期比 (7-9月 1.8%、予想 1.6%)
09:30 (豪) 10-12月期 消費者物価指数(CPI) 前年同期比 (7-月 7.3%、予想 7.5%)
09:30 (豪) 12月 消費者物価指数指数(CPI) 前年同月比 (11月 7.3%、予想 7.7%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数CI・改定値 (速報 97.6)
14:00 (日) 11月 景気一致指数CI・改定値 (速報 99.1)
18:00 (独) 1月 IFO企業景況指数 (12月 88.6、予想 90.3)
24:00 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 4.25%、予想 4.50%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省5年債、変動利付2年債入札

1/26(木)
休場、中国、オーストラリア、台湾、ベトナム、インド
08:50 (日) 12月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (11月 1.7%、予想 1.6%)
08:50 日銀金融政策決定会合における主な意見(1月17-18日分)
22:30 (米) 10-12月期 GDP・速報値 前期比年率 (7-9月 3.2%、予想 2.6%)
22:30 (米) 10-12月期 GDP個人消費・速報値 前期比年率 (7-9月 2.3%、予想 2.7%)
22:30 (米) 10-12月期 コアPCE・速報値 前期比年率 (7-9月 4.7%、予想 3.9%)
22:30 (米) 12月 卸売在庫 前月比 (11月 1.0%、予想 0.5%)
22:30 (米) 12月 耐久財受注 前月比 (11月 -2.1%、予想 2.9%)
22:30 (米) 12月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (11月 0.2%、予想 -0.2%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.0万件、予想 21.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 164.7万人、予想 165.8万人)
24:00 (米) 12月 新築住宅販売件数・年率換算 (11月 64.0万件、予想 62.0万件)
24:00 (米) 12月 新築住宅販売件数 前月比 (11月 5.8%、予想 -3.1%)

1/27(金)
休場、中国、台湾
08:30 (日) 1月 東京区部消費者物価指数 前年同月比 (12月 4.0%、予想 4.2%)
09:00 (NZ) 1月 ANZ企業信頼感 (12月 -70.2)
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価指数(PPI) 前期比 (7-9月 1.9%)
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価指数(PPI) 前年同期比 (7-9月 6.4%)
09:30 (豪) 10-12月期 輸入物価指数 前期比 (7-9月 3.0%、予想 1.5%)

22:30 (米) 12月 個人所得 前月比 (11月 0.4%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 個人消費支出(PCE) 前月比 (11月 0.1%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 12月 PCEデフレーター 前年同月比 (11月 5.5%、予想 5.0%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (11月 4.7%、予想 4.4%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前月比 (11月 -4.0%、予想 -1.0%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前年同月比 (11月 -38.6%)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 64.6、予想 64.6)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る