トルコリラ円見通し ドル円に合わせて日銀ショックからの持ち直しを継続
〇トルコリラ円、ドル円に同調し12/27は7.15まで戻り高値を切り上げ、12/28午前7.17へ高値を伸ばす
〇対ドル、12/27も18.79へとさらに最安値を更新し、連日の史上最安値更新
〇来年の大統領選挙へ向け、エルドアン大統領の無理筋な政策強行への不安感がリラ安を助長している印象
〇7.12以上での推移中は上昇余地ありとし、7.18超えからは7.20前後への上昇を想定する
〇7.12割れからは7.08試しとし、7.08割れからは7.05前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の12月27日は7.15円から7.08円の取引レンジ、28日早朝の終値は7.12円で前日終値の7.10円から0.02円の円安リラ高となった。
ドル/トルコリラは史上最安値を試す軟調推移が続いているがトルコリラ円はドル円の騰落に合わせた展開で推移しており、12月20日の日銀ショックによる暴落でつけた12月21日安値6.95円を起点としての持ち直しを継続している。12月27日は中国の感染対策における入国規制緩和の動きによるリスクオン優勢の市場心理と米長期債利回り上昇に押し上げられてドル円が21日未明安値以降の高値を更新したところで7.15円まで戻り高値を切り上げた。
12月28日午前にはドル円が27日深夜高値133.59円を超えて134円に迫っており、トルコリラ円もドル円を追いかけて7.17円へ高値を伸ばしている。
日銀ショックによる暴落が落ち着いていることで戻りを試す展開だが、ドル円は12月20日からの暴落に対する半値戻しには至らずにいること、今後の日銀政策追加修正への懸念や本邦長期債利回りの先高感もあり、半値戻しの134.02円前後では戻り売りも出やすいところと思われ、トルコリラ円も戻り一巡後の反落には注意しておきたい。
【対ドルでトルコリラは連日の史上最安値更新】
ドル/トルコリラの12月27日は18.79リラから18.60リラの取引レンジ、28日早朝の終値は18.67リラで前日終値の18.66リラからは0.01リラのドル高リラ安だった。
12月26日には18.73リラへ下落して史上最安値を更新していたが、27日も18.79リラへとさらに最安値を更新した。最安値更新後はリラが買い戻されておりリラ安の加速阻止へのトルコ中銀による牽制もあったのではないかと推察される。
12月序盤は1ドル18.63リラ近辺を中心に動いていたが、徐々に日々の取引中心値が切り下がっており、先週末からは18.60リラ台中盤から18.70リラ台中盤までのレンジで最安値を繰り返し試している。
【エルドアン大統領のインフレ大幅低下予想が利下げ再開感とリラ安の背景か】
トルコ政府はカタールとの通貨スワップ協定の拡大、ロシアからの投資資金流入、海外観光客の回復による収益等で外貨準備高を増やし、今年三度目の最低賃金の引き上げやリラ預金の為替差損補填政策の1年延長を決め、12月20日にはトルコ中銀が政策金利の現状維持を決めて8月から11月まで4会合続いた利下げサイクルを終了させたが、リラの先安感はかえって強まっている印象だ。
エルドアン大統領は12月26日に「トルコのインフレ率は2023年末までに30%へ低下するだろう」「我々の目標は2024年にインフレ率を一桁にすることだ」と述べたと現地紙が報じている。
エルドアン大統領は「利下げがインフレを抑制する」と繰り返し述べてきた。主要国がインフレ進行に対して利上げと金融引き締めに走る中で、年率80%を超える高インフレに見舞われている中であえて4会合連続の利下げを強行したのもエルドアン大統領による異説的な経済政策思想を背景としている。
12月5日に発表された11月のトルコ消費者物価上昇率は前月比2.88%上昇、前年同月比は84.39%だった。前年度月比は10月の85.51%からわずかに低下したとはいえ主要国の中にあっては異常な高水準にあり、エルドアン大統領による利下げ政策がリラ安を招き、世界的なサプライチェーン混乱による人手不足とモノ不足によるインフレ進行に加えてリラ安による通貨インフレが高インフレを招いたといえる。
欧米のインフレ率が頭打ちの様相を見せていることでトルコの高インフレも頭打ちからやや低下したとしても不思議はない。しかしそこでさらなる利下げに踏み込めば市場のリラ放れがエスカレートして通貨危機的な暴落を招かないとも限らない。来年6月の大統領選挙へ向けてエルドアン大統領が無理筋な政策を強行するのではないかとの不安感がここ数日のリラ安を助長している印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月21日未明安値から暴落一服の戻りに入ったとして12月21日未明安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして23日午前から27日午前にかけての間への上昇を想定してきたが、12月23日夜と26日夜に同値の7.13円をつけてから失速したために27日午前時点では両高値をダブルトップとした弱気サイクル入りとした。またダブルトップラインを超えるところからは新たな強気サイクル入りとした。
12月27日午前安値からの反騰を継続してダブルトップラインを超えたため、27日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして12月29日夜から31日早朝にかけての間への上昇を想定する。7.12円を上回るうちは上向きとし、7.12円割れからは弱気転換注意とするが、弱気サイクル入りは27日午前安値7.08円割れからとする。
60分足の一目均衡表では12月27日午前序盤の反落時に先行スパンから一時的に転落したものの持ち直し、28日午前の一段高により遅行スパンの好転と先行スパンを上抜いた状況も維持されているので遅行スパン好転中の高値試し優先とする。先行スパンを上回るうちは一時的に遅行スパンが悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は12月28日午前の続伸で70ポイントに迫っている。50ポイントを上回るうちは上昇余地ありとするが、相場が小反落の後に高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合は下落再開を警戒し、50ポイント割れからは30ポイント前後への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.12円を下値支持線、7.18円を上値抵抗線とする。
(2)7.12円以上での推移中は上昇余地ありとし、7.18円超えからは7.20円前後への上昇を想定する。7.20円以上は反落注意とし、その後に7.12円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)7.12円割れからは7.08円試しとし、7.08円割れからは7.05円前後への下落を想定する。7.05円前後では買い戻しに入りやすいとみるが、7.10円以下での推移なら29日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
12月29日
16:00 12月 経済信頼感指数 (11月 96.9)
20:30 週次 外貨準備高 12/23時点 グロス (12/16時点 856.0億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 12/23時点 ネット (12/16時点 281.3億ドル)
12月30日
16:00 11月 貿易収支 (10月 -78.7億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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