トルコリラ円見通し 暴落一服の下げ渋りで3日経過、日銀ショック引きずる(22/12/26)

トルコリラ円の12月23日は7.13円から7.05円の取引レンジ、24日早朝の終値は7.11円で前日終値の7.08円からは0.03円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 暴落一服の下げ渋りで3日経過、日銀ショック引きずる(22/12/26)

暴落一服の下げ渋りで3日経過、日銀ショック引きずる

〇トルコリラ円、23日深夜にかけドル円が133円台序盤へ上昇したところで7.13まで戻り高値切り上げ
〇しかし12/20の日足大陰線に対し下側3分の1程度の範囲、下げ渋りから一段安へ向かう懸念残す
〇対ドルでは18.72をつけ取引時間中における史上最安値更新、リラ安の進行感継続
〇23日、カタールがトルコに対し来年1月に20億ドル相当のトルコ発行ユーロ債を購入予定と報じられる
〇トルコへの11月海外観光客数255万1483人、昨年11月の176万3982人からは44.64%増に
〇7.13から7.15にかけての水準は戻り売り有利とみる
〇7.08割れからは戻り一巡による下落再開を警戒し7.05前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の12月23日は7.13円から7.05円の取引レンジ、24日早朝の終値は7.11円で前日終値の7.08円からは0.03円の円安リラ高だった。週間では12月16日終値の7.33円から0.22円の円高リラ安だった。
12月20日の日銀金融政策修正をきっかけとしたドル円の暴落に合わせてトルコリラ円は12月20日午前高値7.37円から21日未明に7円割れ(ベンダーによっては6.95円から6.99円)へ暴落したが、ドル円が暴落一服で買い戻されたことでトルコリラ円も21日に7.10円、22日に7.11円へと戻り高値を若干切り上げ、23日深夜にかけてドル円が133円台序盤へ上昇したところで7.13円まで戻り高値をさらに切り上げた。
しかし、依然として12月20日の日足大陰線に対して下側3分の1程度の範囲にとどまっており、下げ渋りから一段安へ向かう懸念を残している。

【対ドルでトルコリラは史上最安値更新】

ドル/トルコリラの12月23日は18.72リラから18.61リラの取引レンジ、24日早朝の終値は18.66リラで前日終値の18.64リラからは0.02リラのドル高リラ安だった。
12月13日に付けた18.71リラを超えて対ドルでの取引時間中における史上最安値更新を18.72リラへ伸ばした。ベンダーによっては18.78リラの安値提示も見られた。
終値ベースでは12月21日の18.67リラが最安値となっている。週間では12月16日終値18.63リラから0.03リラのドル高リラ安だった。
10月5日に18.60リラ台に到達した後は18.50リラ前後で売られて18.60リラ台後半の最安値を繰り返し試しつつもやや膠着した状況が続いてきた。トルコ中銀によるリラ安抑制や融資禁止措置を伴った企業の外貨保有規制による輸出企業等のドルからリラへの転換等がリラ安の勢いを抑制しているのだが、最安値も18.70リラ台に入り徐々に日々の中心値が切り下がっておりリラ安の進行感が継続している。

【カタールのトルコ支援拡大】

12月23日にはカタールがトルコに対して来年1月に20億ドル相当のトルコ発行ユーロ債を購入する予定だと報じられた。このうちすでに凡そ10億ドルが購入済とされる。
カタールは通貨スワップ協定などによりトルコへの投資と経済支援を行ってきたが、11月時点の報道では今年末までに最大30億ドル、総額で最大100億ドルの支援が協議されているとされていた。
12月22日夜に発表された週次の外貨準備高は12/16時点のグロスで856.0億ドルとなり前週の848.1億ドルから増加、ネットでは281.3億ドルとなり前週の267.56億ドルから増加した。ネットでは2021年11月に326.4億ドルまで拡大したところから大幅減少に転じて今年7月には60.7億ドルまで減ったが、その後は徐々に持ち直しておりここ数週は顕著な増加がみられる。グロスでも2021年11月の879.2億ドルから今年7月に588.7億ドルまで減少したところから回復している。カタールによる支援、ロシアによる投資、輸出企業の保有外貨からのリラ転換等が外貨準備高増加を支えているようだ。

【最低賃金、今年三度目の引き上げ】

12月22日にトルコ政府は今年3度目の最低賃金引上げを決定した。
今回の改訂により月間の手取り給与は最低8,500 リラ(455ドル) に引き上げられる。2021年12月の2826リラから2022年1月に4253リラへ、7月に5500リラに引き上げられたが、高インフレが続く中でエルドアン政権の支持基盤でもある労働者階級の不満を抑え込むために三度目の引き上げが決定されたのだろうと思われる。労働者の凡そ4割がこの最低賃金改定の恩恵を受ける。
昨年12月と比較すれば凡そ3倍となるが、対ドルでのトルコリラは昨年11月初旬の1ドル9.50リラ近辺から現在は18.70リラ近辺までドル高リラ安が進行、インフレ率は80%を超えているが実勢は三桁以上の伸びとされており、最低賃金の適用を受けない労働者層も含めた国民全般の不満を抑え込むのは難しいのではないかと思われる。

【トルコへの海外観光客 年初来累計では前年比84.8%増】

【トルコへの海外観光客 年初来累計では前年比84.8%増】

トルコ文化観光省が12月23日に発表したトルコへの海外観光客数は11月に255万1483人となり昨年11月の176万3982人からは44.64%増となった。2020年11月時点の83万3991人からはほぼ3倍増でありパンデミック前の水準を回復している。1月から11月までの累計では4216万4954人となり前年同期の2281万9746人からは84.77%増となった。
11月の上位5か国はロシア(12.25%)、ブルガリア(9.12%)、ドイツ(8.13%)、イラン(6.06%)、ジョージア(5.92%)、1月からの累計ではドイツ(13.0%)、ロシア(11.73%)、英国(7.83%)、ブルガリア(6.22%)、イラン(5.18%)となっている。
観光客の来訪数が改善したことで観光収入も拡大していることは、外貨収入の拡大(リラへの転換が半ば強制される)に寄与しているが、世界景気全般が今年後半から減速しており来年はさらに悪化することも懸念されているため根本的な経常収支改善は難しいのではないかと思われる。

【8月2日安値を割り込んだ一段安状態から抜け出せず】

【8月2日安値を割り込んだ一段安状態から抜け出せず】

トルコリラ円は12月20日の暴落で8月2日安値7.27円を割り込みさらに7円割れへ急落したが、その後は下げ渋りの持ち合いでやや戻り高値を切り上げているものの反騰入りへ進むきっかけをつかめずにいる。
今回の暴落が日銀の金融政策修正によるショック安だが、日銀の異次元金融緩和が出口へ向かい始めているとすれば今後の追加修正の可能性や黒田総裁退任後の大きな政策変更への懸念がしばらくは付きまとう。
トルコ中銀は11月会合で政策金利を9%へ引き下げて利下げサイクルの終了を宣言したが、エルドアン大統領は2023年にインフレ率はさらに低下すると述べており、年率80%を超える現状の高インフレが若干でも低下すれば追加利下げを催促する可能性がある。また6月に実施される大統領選挙へ向けた政治的な緊張感や欧米の金融引き締め長期化による来年の景気後退や中国の感染爆発の影響が深刻化する場合には世界全体の不況感が強まる可能性もあり、それらは潜在的なリラ安要因になるのではないかと思われる。

トルコリラ円は8月2日から10月21日まで3か月近いジリ高推移だったところから一段安しており、昨年12月の史上最安値へ暴落する前の6月2日安値から9月1日高値まで3か月のジリ高から崩れた時に近い印象がある。ドル円の一段安懸念とリラの潜在的な下落懸念が拭えないうちは8月2日安値を割り込んだことによるテクニカル的な弱気心理も踏まえて安値試しを続けやすい状況にあるのではないかと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、7.08円を下値支持線、7.15円を上値抵抗線とする。
(2)7.13円から7.15円にかけての水準は戻り売り有利とみる。
(3)7.08円割れからは12月21日未明安値からの戻り一巡による下落再開を警戒して7.05円前後への下落を想定する。7.05円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、7.08円以下での推移が続くうちは年末年始にかけて安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

12月26日
 16:00 12月 製造業信頼感指数 (11月 97.9)
 16:00 12月 設備稼働率 (11月 75.9%)
12月29日
 16:00 12月 経済信頼感指数 (11月 96.9)
 20:30 週次 外貨準備高 12/23時点 グロス (12/16時点 856.0億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 12/23時点 ネット (12/16時点 281.3億ドル)
12月30日
 16:00 11月 貿易収支 (10月 -78.7億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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