トルコリラ円見通し 7.30円を挟んだジグザグ型の持ち合い
〇トルコリラ円、7.30を挟んだ持ち合いで推移、12/19早朝7.27まで安値を切り下げる
〇対ドル、持ち合い中心値を前月18.62から18.64へ切り下げて推移
〇トルコ政府、リラ暴落を阻止するも安定に至らず、預金保護政策の1年延長を表明
〇イスタンブール市長への有罪判決で抗議行動発生、インフレに加え政治問題も注視
〇7.27割れからは7.25、7.23を順次試す下落を想定する
〇7.32以下での推移や直前安値から0.07以上の反騰が見られない場合、安値試しへ向かいやすいとみる
【概況】
トルコリラ円の12月16日は7.39円から7.31円の取引レンジ、17日早朝の終値は7.33円で前日終値の7.39円から0.06円の円高リラ安だった。週間では12月9日終値7.32円から0.01円の円安リラ高だった。
トルコリラ円はドル円の騰落に合わせた動きを続けているが、ドル円は12月2日安値133.60円で10月21日高値151.94円以降の最安値をつけた後は138円前後で戻り売りにつかまり135円割れを買い戻されるジグザグ型の騰落を繰り返し持ち合いで推移しており、トルコリラ円も12月2日に7.17円の安値で10月21日高値8.17円以降の最安値とした後は7.30円を挟んでジグザグの持ち合いで推移している。
12月13日夜の米CPI上昇率が予想を下回ったことによるドル円の急落場面で12月13日午後高値7.42円から12月14日夜安値7.21円へ下落し、ドル円が16日未明に138円台へ到達した局面で7.42円まで再び戻したものの、16日の日中から17日未明にかけてドル円が失速したために17日未明には7.31円まで失速した。12月19日早朝には円高により7.27円まで安値を切り下げている。
為替市場では12月15日夜にユーロドルが一時急伸したところから下落に転じ、ポンドや豪ドルなどが下落してドルストレートではドル高となる一方、クロス円が総じて下落して円高感が強まったことでドル円も下落しており、トルコリラ円も他のクロス円の下落と共に円高に押される展開となった。
【ドル/トルコリラ、最安値圏での持ち合い続くが持ち合い中心値は徐々に切り下がる】
ドル/トルコリラの12月16日は18.67リラから18.63リラの取引レンジ、17日早朝の終値は18.63リラで前日終値の18.64リラからは0.01リラのドル安リラ高だった。
週間では12月9日終値の18.65リラから0.02リラのドル安リラ高だったが、10月からは18.50リラ近辺の高値を試しては売られて18.60リラ台の安値を試す持ち合いで推移していたところ、11月から12月にかけては徐々に持ち合いの中心値が切り下がっており、中心値は11月後半の18.62リラから最近は18.64リラへ切り下がってきている。
手元のデータでは取引時間中の史上最安値は12月13日の18.71リラ(ベンダーによっては18.67リラから18.76リラまで幅広い)、終値ベースの最安値は12月9日の18.65リラとなっている。
【リラ預金保護政策の延長を決定】
12月17日の官報において、トルコ国内のリラ預金に対する為替差損補填政策が1年間延長されることが表明された。2021年9月から12月にかけての連続利下げによりトルコリラは1ドル8.6リラ近辺だった水準から12月20日の18.36リラへとドル高リラ安となり史上最安値を大幅に更新して通貨危機的な暴落に見舞われたが、トルコ財務省はリラ防衛のためにリラ預金の外貨換算での差損を補填する預金保護政策を発表し、12月23日には10.06リラまで急伸(ドル安リラ高)した。しかし効果は一時的なものに留まり、高インフレが進行しているにもかかわらず今年8月から11月まで4会合連続で利下げを強行したことで9月には昨年12月の最安値を更新し、その後も史上最安値を毎月更新する状況となってきた。
トルコ政府は輸出企業の外貨保有に規制をかけて新規のリラ建て融資禁止をちらつかせて手持ちのドルをリラへと半ば強制的に換金させる手法を取り、為替市場での介入などによりリラ安を抑制してきた。海外友好国からの投資や感染規制緩和により戻ってきた海外観光客による散財や不動産購入なども外貨売り・リラ買いに寄与したことも昨年12月にかけてのパニック的なリラ暴落の再現を阻止してきたといえる。しかしリラ預金保護口座政策を解除できる程にリラが安定しているわけではなく、今回の延長決定となったのだろうと推察される。預金保護口座への補填支払いは今年9月時点で93億リラ (1ドル18.6リラ換算で凡そ5億ドル) に達したとされる。
【イスタンブール市長への有罪判決で大規模抗議行動も発生】
12月15日に、イスタンブール市長エクレム・イマモール氏に対する12月14日の有罪判決を不服として数千人の抗議行動が発生した。イマモール市長はエルドアン大統領(与党AKP=公正発展党)に対する野党連合のかなめとなる共和人民党(CHP) のメンバーであり次期大統領選挙での対立候補(野党連合の統一候補はまだ決まっていない)とされるが、2019年のイスタンブール市長選においてエルドアン政権がイマモール氏の勝利を無効として再選挙とし、再選挙でもイマモール氏が勝利したものの同氏が内務相による選挙のやり直しを批判したことで公務員侮辱罪で起訴された。12月14日の有罪判決では政治活動の禁止と2年7か月の禁固刑が宣告されたが、この裁判は上級審へと上告されて係争は続く。
トルコの大統領選挙は来年6月までとされるが、国民のエルドアン政権への不満も高まっている。かつてバイデン米大統領が独裁者と名指ししたエルドアン政権による強権的な反対勢力への弾圧が厳しくなりそれに対する抗議もまた激化する可能性がある。今回の判決で野党連合がまとまりを欠いてエルドアン大統領に有利となる可能性があるものの反エルドアンの動きが政治混乱を招く可能性もあり、来年のトルコリラにとってはインフレ問題に加えて政治問題も重要になってきそうだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月13日午前高値からの下落が12月14日夜安値で一巡して強気サイクル入りしたとして16日午後から20日午後にかけての間への上昇を想定した。12月16日午前時点ではまだ一段高余地が残るとしたものの7.35円割れを弱気転換注意とし、7.33円割れからは弱気サイクル入りとしたが、12月16日夜に7.33円割れへ続落したため、12月16日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして19日夜から21日夜にかけての間への下落を想定する。
12月19日の上値抵抗線は7.35円までとして届かないうちは一段安警戒とするが、7.35円超えからは強気転換注意として12月16日未明高値7.42円試しとする。
60分足の一目均衡表では12月16日夜への続落で遅行スパンが悪化し、先行スパンからも転落しつつあるため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパンが一時的に好転しても先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は12月16日深夜への下落で40ポイントを割り込み、その後も40ポイント以下にとどまっているので20ポイント台への一段安余地ありとみる。50ポイント手前は戻り売りにつかまりやすいところとし、50ポイントを一時的に超えても維持できない場合は40ポイント割れから下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.27円を下値支持線、7.33円を上値抵抗線とする。
(2)7.33円から7.35円手前にかけての水準は戻り売り有利とみる。
(3)7.27円割れからは7.25円、7.23円を順次試す下落を想定する。7.23円以下は反騰注意とするが、7.32円以下での推移が続く場合や直前安値から0.07円以上の反騰が見られない場合は20日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
12月20日
16:00 12月 消費者信頼感指数 (11月 76.6)
23:30 11月 中央政府債務 (10月 -380.8億リラ)
12月22日
20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 9.0%、予想 9.0%)
20:30 週次 外貨準備高 12/16時点 グロス (12/9時点 848.1億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 12/16時点 ネット (12/9時点 267.56億ドル)
12月23日
17:00 11月 観光客数 前年同月比 (10月 38.36%)
12月26日
16:00 12月 製造業信頼感指数 (11月 97.9)
16:00 12月 設備稼働率 (11月 75.9%)
注:ポイント要約は編集部
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