『インフレ鈍化で持ち直すも戻りは鈍い。一巡後の反落リスクに警戒』
〇今週のトルコ円、週初7.20で寄り付き後トルコ物価指数の上昇軟化に週央にかけ7.43まで上昇
〇その後はトルコ沖のタンカー滞留問題等に7.31レベルで推移
〇トルコ円主要テクニカルポイントを下抜け、売りシグナルも点灯、地合い弱い
〇ムーディーズは「トルコの銀行が非常に高いリスクに直面している」と指摘
〇引き続き、トルコリラ売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):7.15ー7.55
今週のレビュー(12/5−12/9)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初7.20円で寄り付いた後、早々に週間安値7.17円まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)トルコ11月消費者物価指数(結果+84.39%、予想+84.90%、前回+85.51%、※前年比)、(2)トルコ11月消費者物価コア指数(結果+68.91%、予想+69.75%、前回+70.45%、※前年比)、(3)トルコ11月生産者物価指数(結果+136.02%、前回+157.69%、※前年比)の伸び率鈍化や、(4)上記1、2、3を背景としたトルコリラの実質金利上昇(インフレ加速に終止符が打たれたとの期待感)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値7.43まで上昇しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(5)トルコ沖を巡るタンカー滞留問題の発生(トルコ海上保安当局は適切な保険証書を持たない石油タンカーの領海通過を認めず)や、(6)上記5を背景とした欧米諸国との関係悪化懸念(欧米諸国からの圧力を一蹴)、(7)米金利上昇に伴うリスク回避ムード再開が重石となり、本稿執筆時点(日本時間12/10午前1時50分現在)では、7.31円前後で推移しております。
来週の見通し(12/12−12/16)
トルコリラの対円相場は、12/2に記録した約1年ぶり安値7.17円をボトムに反発に転じると、一時7.43円まで持ち直す場面も見られましたが、週末にかけて再び7.30円絡みへ値を崩すなど、上値の重さを再確認する結果となりました。ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線、一目均衡表雲上限や雲下限)を軒並み下抜けしていることや、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーが成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)トルコ経済の先行き不透明感や、(2)実質金利低下に伴うリラ売り圧力(トルコ中銀は国内CPIが歴史的高水準を記録し続けているにも係わらず4会合連続で大幅利下げを実施→今週発表されたCPI・PPIは共に伸び率鈍化が見られましたが依然として高水準にあること自体に変わりはなく、構造的なリラ売り圧力は不変)、(3)トルコ・欧米間の関係悪化懸念(エルドアン大統領とプーチン大統領の急接近やトルコ沖を巡るタンカー在留問題など)、(4)トルコ中銀による通貨安抑制手段の八方塞がり感(トルコ政府・中銀はこれまで為替介入や資本規制を通じてリラ売り圧力の封じ込めを進めてきたが、市場ではトルコ中銀が切れるカードは殆ど残されていないとの見方あり)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。
事実今週は、米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービス社より「トルコの銀行は資本フローの制約、低調な外貨準備、高水準の外貨建て債務など非常に高いリスクに直面している」との分析結果が示されるなど、ファンダメンタルズ的な脆弱さが改めて示されました。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は複数のトルコ経済イベント(トルコ9月失業率、トルコ10月経常収支、トルコ10月鉱工業生産、トルコ10月小売売上高)が予定されておりますが、いずれもトルコリラ円相場にインパクトをもたらすような材料ではないため、米CPIや米FOMCの結果に振らされる主体性の無い相場展開となりそうです。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.15ー7.55
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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