トルコリラ円見通し ドル円に合わせて下げ一服、トルコの輸出入はそろって鈍化(22/11/30)

トルコリラ円の11月29日は7.47円から7.40円の取引レンジ、30日早朝の終値は7.44円で前日終値の7.45円からは0.01円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し ドル円に合わせて下げ一服、トルコの輸出入はそろって鈍化(22/11/30)

トルコリラ円見通し ドル円に合わせて下げ一服、トルコの輸出入はそろって鈍化

〇トルコリラ円、ドル円騰落に同調して推移、11/28夕安値7.38後に反発、11/29午前高値7.47至る
〇対ドル、10月以降18.60台での推移が続く、11/29は取引期間中の最安値をわずかに更新
〇トルコ10月貿易収支、輸出入ともに前月から縮小、世界規模インフレとリラ安で貿易赤字悪化が目立つ
〇本日は7-9月期GDP発表予定、事前予想は前年同期比4.0%増への大幅低下
〇7.42を上回るうちは上昇余地ありとし、7.47超えからは7.50前後を目指す上昇を想定する
〇7.42割れからは下げ再開と仮定して、7.40前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の11月29日は7.47円から7.40円の取引レンジ、30日早朝の終値は7.44円で前日終値の7.45円からは0.01円の円高リラ安だった。
ドル円の騰落に合わせた展開が続いているが、11月28日夕刻にドル円が137.48円へ下落した局面でトルコリラ円は7.38円の安値をつけて11月24日安値7.41円及び11月15日安値7.40円を割り込んだが、ドル円が29日午前に139円台前半まで戻した局面でトルコリラ円も29日午前に7.47円まで反発した。
ドル円は11月29日夜に138円を割り込んだもののその後は持ち直して139円に迫っており、トルコリラ円も夜の下落場面で7.40円まで下げたものの11月28日夜安値割れを回避して7.44円まで戻した。
今晩は米ADP民間雇用、米7-9月期GDP改定値、30日未明にはパウエル米FRB議長講演と重要イベントが続くため、米FRBの引き締め姿勢の強弱を見定めつつ為替市場も大きく動きやすい局面にある。米長期債利回りが上昇してドル高へ進めばドル円の上昇に合わせてトルコリラ円も戻り高値切り上げへ進む可能性があるが、米長期債利回り低下でドル安となればドル円の一段安に合わせてトルコリラ円も一段安へと進みかねないところだ。

【対ドルは取引時間中の最安値更新】

ドル/トルコリラの11月29日は18.67リラから18.60リラの取引レンジ、30日早朝の終値は18.64リラで前日終値の18.62リラからは0.02リラのドル高リラ安となった。
10月以降は18.50リラ前後で売られて18.60リラ台の安値を繰り返し試し、11月14日に18.67リラの取引時間中における史上最安値をつけたが、少数点下4桁では11月14日安値が18.6684リラで29日安値は18.6749リラでわずかに最安値更新となっている。また終値ベースではこれまでの最安値が11月2日終値18.62リラだったところ11月28日に18.64リラへ安値を更新し、29日も18.63リラで最安値近辺となっている。(上記は筆者の手元データによるもので、ベンダーによってはわずかな成立価格により18.70リラ台の安値提示もみられる。)

11月24日にトルコ中銀が政策金利の週間レポレートをそれまでの10.5%から9.0%へと引き下げたことと当面する利下げサイクルを終了すると宣言したことは市場予想通りだったために市場反応も限定的だったが、わずかずつではあるが徐々に水準が切り下がっている。トルコ中銀によるリラ防衛の動きや輸出企業の外貨保有規制による外貨売りとリラ建て預金への転換がリラ安の加速を抑えているところではあるが、新たなリラ売り材料が発生する場合にはリラ売りが勢い付きかねないと注意したい。

【トルコの輸出入は伸びが鈍化】

【トルコの輸出入は伸びが鈍化】

11月29日に発表されたトルコの10月貿易収支は季節調整前で78.74億ドルの赤字となり、9月の96.12億ドルからは赤字幅が縮小した。貿易赤字は今年8月に112.5億ドルとなり過去最大を記録したが、今年1月以降は100億ドル規模から少なくても60憶ドル規模までのレンジで高止まりの様相となっている。
10月の輸出は季節調整前で21.3億ドルとなり9月の22.6億ドルから縮小、同輸入は29.2億ドルで9月の33.0億ドルから縮小した。季節調整後の輸出は20.8億ドルで前年同月比2.9%減となり今年6月につけた過去最大の220.2憶ドルから低下したままであり、輸入は301.1億ドルで8月につけた過去最大の319.5億ドルから低下して前年同月比は4.6%減となった。

トルコはリラ安を起爆剤として輸出拡大に励んできたが、世界規模のインフレとリラ安により輸入も急増してきたために貿易赤字の悪化が目立ってきた。エルドアン政権は輸出拡大をテコとしてトルコ経済の活性化を目指しているものの、中国の感染拡大による景気鈍化が長期化していること、米国等の金融引き締めによる景気減速感、欧州のエネルギー不足による消費停滞等により世界全体の需要が低下すればトルコの貿易も伸びが鈍化してエルドアン政権の思惑通りには進めないという状況だ。
同日に発表された11月の経済信頼感指数は96.9で10月の97.1から低下した。7月に93.4まで悪化したところから持ち直しているが好調目安の100には届かない程度にとどまっている。
今夕はトルコの7-9月期GDPの発表がある。4-6月期の前期比は2.1%増、前年同期比は7.6%増と堅調な数字だったが、7-9月期の前年同期比に対する市場の事前予想は4.0%増への大幅低下で予想レンジは3.0%増から4.8%増、2022年通年では5.0%増と見込まれて2021年の11.4%から大幅に減速すると予想されている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは11月24日夜安値をサイクルボトムとした強気サイクルが11月28日午前高値で一巡して弱気サイクル入りしたとして安値形成期を11月29日夜から12月1日夜にかけての間と想定した。
11月28日夜の下落では11月28日夕安値割れを回避して戻しているため、11月28日夕安値を頭、24日夜と29日夜の両安値を両肩とする逆三尊型の底打ちとなる可能性がある。このため11月29日午前高値7.47円を超えないうちは一段安余地ありとするが、29日午前高値を超える場合は逆三尊からの上昇期入りとみて12月1日午前から5日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では7.40円前後から7.50円手前までのレンジで騰落を繰り返しているので方向性に欠けるが、先行スパンを上回るうちは上昇余地ありとして遅行スパン好転中の高値試し優先とし、先行スパンを下回るうちは一段安警戒として遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月28日夜に30ポイントを割り込んだところから60ポイント手前へ戻し、29日夜の反落時は30ポイント台にとどまって切り返しているのでまだ上昇余地が残る。60ポイント超えからは70ポイント手前を目指す上昇を想定するが、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント割れを試す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.42円を下値支持線、7.47円を上値抵抗線とする。
(2)7.42円を上回るうちは上昇余地ありとし、7.47円超えからは7.50円前後を目指す上昇を想定する。7.50円前後は反落警戒とするが、7.45円を上回っての推移なら12月1日の日中も高値試しを続ける可能性があるとみる。
(3)7.42円割れからは下げ再開と仮定して7.40円前後への下落を想定する。7.40円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、下げ足が速まる場合は7.38円から7.35円にかけての水準へ下値目途を引き下げ、7.42円以下での推移なら12月1日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11月30日
 16:00 7-9月 GDP 前期比 (4-6月 2.1%)
 16:00 7-9月 GDP 前年同期比 (4-6月 7.6%、予想 4.0%)
12月1日
 16:00 11月 イスタンブール製造業PMI (10月 46.4)
 20:30 週次 外貨準備高 11/25時点 グロス (11/18時点 800.3億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 11/25時点 ネット (11/18時点 187.5億ドル)
12月5日
 16:00 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 3.54%)
 16:00 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 85.51%)
 16:00 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 7.83%)
 16:00 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 157.69%)

注:ポイント要約は編集部

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