11月28日安値からは下げ渋り、米GDP改定値やFRB議長講演控え慎重な動き
〇ドル円、11/28夕安値137.48つけ10/21高値151.94以降の最安値更新、その後138円台中心の持合推移
〇本日はADP米民間雇用報告、米7-9月期GDP改定値、シカゴPMI、パウエルFRB議長講演を予定
〇議長講演、利上げペースに対する姿勢を注視、ドル円下落一巡か一段安かを決める重要局面に
〇米長期債利回りは総じて上昇、連銀総裁らタカ派発言を意識して反発
〇138円以上での推移中は139.35超えから140円手前を試す上昇を想定する
〇137.86割れからは下げ再開とみて137.48試しとし、底割れからは136円台への下落を想定する
【概況】
ドル円は11月28日夕刻安値で137.48円をつけて11月15日夜安値137.67円を割り込み10月21日高値151.94円以降の最安値を更新したが、その後は下げ一服で138円台を中心とした持ち合いで推移している。11月29日午前に139.35円まで一時的に戻したところを売られて、29日夜には137.86円まで下げたところは買い戻されて確りしたが139円台回復には届かなかった。
11月29日の日中は上海総合株価指数が2%を超える上昇となり、リスク選好感がやや勝ってドル安となったが、米長期債利回りが上昇したことで夜はドル高がぶり返した。独11月CPIが前月比0.5%低下となり、10月の0.9%上昇から大きく鈍化したことでインフレピーク感を意識してユーロが下げたことも夜のドル高要因となったようだ。
今夜はADP米民間雇用報告、米7-9月期GDP改定値、シカゴPMI、パウエル米FRB議長講演とイベントが続くが、特にパウエル議長がタカ派的な発言を見せるかどうか注目される。12月1日は米個人消費支出とPCEデフレーター、2日は米11月雇用統計と続き、ドル円もいったん反騰入りへ切り返せるのか一段安へ進むのか試されるところだ。
【米経済指標はまちまち】
11月29日夜の米経済指標はまちまち。9月の米連邦住宅金融局による住宅価格指数は前月比で0.1%上昇となり、8月の0.7%低下及び市場予想の1.2%低下を上回ったが、9月のケース・シラー米住宅価格指数は前年同月比で10.4%上昇となり、8月の13.1%から低下し市場予想の10.5%を下回った。
コンファレンス・ボードによる11月の米消費者信頼感指数は100.2となり、10月の102.5から低下したが市場予想の100.0をわずかに上回った。これらに対する市場の反応は限定的だった。
【パウエル米FRB議長講演に注目】
日本時間明日未明にパウエル米FRB議長の講演がある。11月1-2日開催のFOMCにおいて今後の利上げピーク水準が上方修正される見通しが示されたものの12月FOMCでは超ハイペースでの利上げが減速する可能性が示された。市場は利上げのピーク水準や長期化よりも12月の利上げペース減速を好感してリスクオン優勢となり、11月3日夜までにFOMC声明等によるドル買い材料を一巡させてドル安に転じてきた。
ユーロドルは11月28日高値で1.050ドルに迫って9月28日安値0.9536ドル以降の高値を更新、ポンドドルも9月26日の史上最安値からの反騰を続けて11月24日に1.2152ドルまで切り返してきた。しかし豪ドル米ドルは11月15日までの上昇で頭打ちとなり、最近の米FRB高官や地区連銀総裁らのややタカ派的な発言を意識してドル安にブレーキがかかっている印象がある。このためドル円も11月28日安値で137.48円をつけた後は下げ渋りとなっている。
パウエル米FRB議長が12月の利上げについて、これまで続けてきた0.75%利上げではなく0.50%利上げへと減速して順次ペースダウンしてゆく可能性を強く示唆すればドル安反応となりやすく、その後の米経済指標が冴えない内容ならドル全面安へと勢い付く可能性がある。逆に従来から継続的に発言してきた「景気よりもインフレ抑制を最優先」とした姿勢を堅持して利上げ継続と利上げピーク水準の引き上げ及び長期化を強く示せばドル高感が再び強まり、週末の米雇用統計へと続く米経済指標が強めの推移ならドル高も勢い付く可能性がある。議長講演から米雇用統計にかけての展開は、ドル円としては10月21日からの下落一巡による反騰期に入れるか、さらに一段安を目指すのか明暗の分かれる重要局面と思われる。
【米10年債利回り3週連続低下後はやや上昇】
11月29日の米長期債利回りは総じて上昇、今週の米地区連銀総裁らのややタカ派的な発言とパウエル議長講演を意識して反発している印象だ。
指標の10年債利回りは前日比0.07%上昇の3.75%で終了、11月28日に一時3.62%まで低下して10月21日につけた4.34%以降の最低値としたところから切り返している。
30年債利回りは0.08%上昇の3.81%で終了、10月24日につけた4.43%以降の最低値を11月28日の3.69%としたところから切り返し気味の推移となっている。
2年債利回りは0.03%上昇の4.48%で終了、11月4日に4.88%まで上昇してから11月10日に4.29%まで急低下したもののその後は新たな安値更新を回避して高止まりの状況が続いている。
一方でNYダウは前日比3.07ドル高とわずかな上昇にとどまりナスダック総合指数は65.72ポイント安と下落した。中国の感染拡大が収まらずにコロナ対策に対する抗議行動が激化していること等への懸念と米FRBによる利上げ長期化への懸念が上値を抑えている印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は11月28日夕安値で137.48円をつけた後は下げ渋りだが、29日午前高値で139円台序盤へ一時的に戻したものの失速しているのでまだ11月25日夜高値139.59円を起点とした下落基調の範囲にあると思われる。しかし11月29日夜に138円割れを買い戻されているため、11月28日夕安値を頭、24日夜と29日夜の両安値を両肩として60分足レベルの逆三尊を形成する可能性もある。このため、11月28日午前高値139.35円を超えないうちは一段安警戒として12月1日夜にかけて下落を想定するが、11月29日午前高値超えからは逆三尊による上昇期とみて12月2日夜にかけての上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では、138円台を中心とした往来型の持ち合いが続いているので方向感に欠けるが、先行スパンを上回るうちは上昇継続の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とし、先行スパンを下回るうちは一段安警戒として遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は11月24日夜から28日夕への一段安に際しては指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて29日午前にかけての上昇時に60ポイント手前へ戻し、29日夜の反落時は30ポイント台までの低下から切り返して再び60ポイントに迫っている。60ポイント超えからは上昇も勢いを得て70ポイントに迫る可能性があるが、次に40ポイントを割り込むところからは下向きのバイアスがかかりやすいとみて30ポイント割れへ向かう流れと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月29日夜安値137.86円を下値支持線、11月29日午前高値139.35円を上値抵抗線とする。
(2)138円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは139.35円超えから140円手前を試す上昇を想定する。139.75円以上は反落警戒とするが138.50円以上での推移なら12月1日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)137.86円割れからは下げ再開とみて28日夕安値137.48円試しとし、底割れからは136円台への下落を想定する。
【当面の主な予定】
11/30(水)
10:30 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 49.2、予想 49.0)
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 1.0%、予想 -1.3%)
17:30 (英) ピル英中銀理事、講演
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.5%、予想 5.5%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作実施状況(介入実績)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数(HICP)速報値 前年同月比 (10月 10.6%、予想 10.4%)
19:00 (欧) 11月 HICPコア指数速報値 前年同月比 (10月 5.0%、予想 5.0%)
22:15 (米) 11月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (10月 23.9万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 7-9月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 2.6%、予想 2.7%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費改定値 前期比年率 (速報 1.4%、予想 1.8%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE改定値 前期比年率 (速報 4.5%、予想 4.5%)
22:30 (米) 10月 卸売在庫 前月比 (9月 0.8%、予想 0.5%)
22:50 (米) ボウマンFRB理事、講演
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景況指数 (10月 45.2、予想 47.0)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 -10.2%、予想 -5.0%)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前年同月比 (9月 -30.4%、予想 -35.0)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:35 (米) クックFRB理事、講演
27:30 (米) パウエルFRB議長、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
12/1(木)
08:50 (日) 7-9月期 全産業設備投資額 前年同期比 (4-6月 4.6%、予想 6.3%)
09:30 (豪) 7-9月期 民間設備投資 前期比 (4-6月 -0.3%、予想 1.2%)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月 49.2)
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 29.9、予想 30.2)
15:10 (日) 黒田日銀総裁、挨拶
17:55 (独) 11月 製造業PMI改定値 (速報 46.7、予想 46.7)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI改定値 (速報 47.3、予想 47.3)
18:30 (英) 11月 製造業PMI改定値 (速報 46.2、予想 46.2)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 6.6%、予想 6.6%)
22:30 (米) 10月 個人所得 前月比 (9月 0.4%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 個人消費支出(PCE) 前月比 (9月 0.6%、予想 0.8%)
22:30 (米) 10月 PCEデフレーター 前年同月比 (9月 6.2%、予想 6.0%)
22:30 (米) 10月 PCEコア・デフレーター 前月比 (9月 0.5%、予想 0.3%)
22:30 (米) 10月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (9月 5.1%、予想 5.0%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.0万件、予想 23.3万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 155.1万人、予想 156.9万人)
23:25 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、イベント挨拶
23:30 (米) ボウマンFRB理事、講演
23:45 (米) 11月 製造業PMI改定値 (速報 47.6、予想 47.6)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 50.2、予想 49.8)
24:00 (米) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.2%、予想 -0.2%)
25:45 (欧) レーンECB理事、講演
29:00 (米) バーFRB副議長、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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