ドル円の暴落続き7.50円を割り込む
〇トルコリラ円、ドル円の一段安に合わせ12日早朝に7.47へ安値を大幅に切り下げ
〇週間では11/4終値7.89から0.42円の円高リラ安、8/26以来の安値水準に
〇対ドルでは11日に18.46の高値をつけるもその後はリラ売り優勢、18.60超えまで売られる
〇11/11夕刻発表のトルコ9月経常収支は29.66億ドルの赤字、昨年11月から11か月連続の赤字に
〇9月のトルコ鉱工業生産は前月比1.6%減となり8月の2.5%増から悪化
〇7.55を下回るうちは一段安警戒、7.45割れからは7.40前後への下落を想定
〇本格的な反騰入りには11/11高値7.70を超える規模の上昇が必要
【概況】
トルコリラ円の11月11日は7.70円から7.47円の取引レンジ、12日早朝の終値は7.47円で前日終値の7.62円からは0.15円の円高リラ安となった。
11月10日夜の米10月CPI上昇率が市場予想を下回ったことで米FRBによる超ハイペースでの利上げが鈍化すると受け止められて為替市場はドル全面安となり、ドル円は発表前の146円台序盤から11日早朝安値140.19円へと暴落的な下げとなり、トルコリラ円もドル円の暴落に合わせて米CPI発表直前の7.87円近辺から11日早朝に7.58円へ暴落的な下落となった。
ドル円の暴落は続き、11月11日午前に142.48円まで戻したところから再び売られて早朝安値を割り込み12日未明には138.45円まで安値を大幅に切り下げた。トルコリラ円もドル円の一段安に合わせて午前に7.70円まで戻したところから一段安となり12日早朝には7.47円へ安値を大幅に切り下げた。
週間では11月4日終値7.89円から0.42円の円高リラ安であり、8月26日以来の安値水準となり8月2日安値7.27円から10月21日高値8.17円への上昇幅の大半を解消した。
【対ドルでは戻り売りにつかまる展開】
ドル/トルコリラの11月11日は18.61リラから18.46リラの取引レンジ、12日早朝の終値は18.57リラで前日終値の18.48リラからは0.09リラのドル高リラ安だった。週間では11月4日終値18.57リラと変わらずだった。
11月10日夜の米CPI上昇率が市場予想を下回ったことでドル全面安となり、ユーロやポンドが連日の大幅高となりドル円が急落したが、対ドルでのトルコリラは米CPI発表後のドル安局面で11日未明に18.46リラへドル安リラ高となったものの、歴史的なリラ安基調は変わらずとみられて18.40リラ台では戻り売り優勢となり、11日も夕刻のトルコ経済指標発表時に18.46リラの高値を付けたもののその後はリラ売り優勢となって終盤には18.60リラを超えるところまで売られた。
10月に入ってからは18.50リラ前後で売られて18.60リラ台の安値は買い戻される膠着感のある持ち合いを形成しつつ、11月4日には18.67リラへ取引時間中の史上最安値を更新する展開だったが、11月8日早朝への下落時に18.41リラまで戻すなど、レンジ放れを試す動きが見られた。しかしその後は新たな高値切り上げへは進めずに元のレンジ相場水準まで押し返されている印象だ。
【トルコ経常収支は11か月連続の赤字】
11月11日夕刻に発表されたトルコの9月経常収支は29.66億ドルの赤字となった。最新の改定値では昨年7月から10月まで4か月連続で黒字となったもののその後は11か月連続の赤字となっている。
トルコは構造的な経常赤字国家であり、貿易赤字を観光収入等で穴埋めをしてきた。エルドアン大統領は輸出の拡大による貿易収支改善により経常収支の黒字化を目指し、利下げが企業への融資を拡大して貿易に寄与し、リラ安は輸出拡大に貢献するものとして高インフレの進行でも利下げを強行してきたが、現実には世界規模のインフレがなかなか収まらない中で輸出が伸びる一方で輸入が拡大してしまい貿易赤字は過去最悪の状況での推移が続いており、経常収支の赤字体質からも脱却できていない。
【トルコの9月鉱工業生産は低調】
11月11日夕刻に発表された9月のトルコ鉱工業生産は前月比1.6%減となり8月の2.5%増から悪化した。今年に入ってからは前月比で増減が繰り返されて安定していない。内訳ではハイテクが4.8%増と目立ったものの鉱業が2.6%減、製造業が1.6%減、電気ガス等が1.7%減、耐久財が1.8%減、生活用品が2.0%減等と低迷している。
9月の前年同月比は0.4%増にとどまり8月の1.1%増から伸びが鈍化した。昨年12月には14.4%増、今年2月に13.3%増、4月に10.8%増と二桁を記録していたが7月の2.5%増から伸びは大幅に鈍化している。
9月のトルコ小売売上高は前月比1.8%増で8月の3.6%増から鈍化した。前年同月比は9.7%増で8月の9.3%増を若干上回ったものの、今年4月に15.2%増、5月に20.7%増と高い伸びを示した後は一桁台にとどまっている。リラ安とインフレを踏まえれば伸びは鈍いという印象だ。
【ドル円の暴落が落ち着くのを見定めたい】
ドル円の週足は11月7日高値147.56円から11月11日安値138.45円まで9.11円の大幅下落となり前週比では7.92円の下落で昨年1月底以降では最大の下落規模となった。昨年の上昇は比較的緩やかなものだったが、今年3月に米FRBが利上げを開始したところからドル円の上昇は勢いを増し、米FRBが4会合連続の0.75%利上げを実施してきたために米長期債利回りの大幅上昇と共にドル円は急伸してきた。
この間も5月9日高値131.34円から5月24日安値126.35円まで4.99円の下落や、7月14日高値139.39円から8月2日安値130.39円まで9.00円の下落が発生し、いずれもその後に一段高へと進んできたのだが、現状は10月21日高値151.94円から11月11日安値138.45円まで13.49円の大幅下落であり、これまでの調整的な下落規模を超えてきているため、昨年1月からの歴史的な大上昇が一巡した可能性も指摘されている。
米FRBによる利上げペースが鈍化しても利上げそのものは継続するため日米の金融政策差を反映してドル円が上昇再開に転じても不思議はないが、米FRBによる利上げのピークを織り込んでの下落とすれば、8月2日安値130.39円以降の上昇分を解消するような下落規模へと発展する可能性も懸念される。
トルコリラ円は7月後半からドル円の騰落に合わせた動きを続けており、対ドルでは史上最安値近辺での持ち合いを続けて先安感も根強いところではあるが、ドル円の動きがドル/トルコリラの動きを凌駕しているため、当面はドル円次第の展開を余儀なくされる。
【昨年9月1日高値や今年4月28日高値からの下落再開時に近い動き】
トルコリラ円は10月21日高値から反落した後は7.80円前後を下値支持線とした三角持ち合いの様相だったが、11月10日と11日の急落により持ち合いから下放れている。上昇一巡からの下落規模としては、今年3月11日安値7.76円から4月28日高値8.87円へ上昇したところからの下落再開時や、昨年6月2日安値12.44円から9月1日高値13.32円へ上昇したところからの下落再開時に近い動きであり、ドル円の下落規模も厳しいことと対ドルでのリラ安基調はまだ継続的なことを踏まえると、8月2日安値を試し、あるいは底割れしてゆく下落期に入っているのではないかと懸念される状況だ。
日足チャートでは相対力指数が70ポイント台へ到達してからの下落で30ポイント割れまで急低下し、一目均衡表の先行スパンをいったん上抜けたところから転落へと急落しているが、いずれも4月28日高値からの下落時に近い動きと思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.45円を下値支持線、7.55円を上値抵抗線とする。
(2)7.55円を下回るうちは一段安警戒とし、7.45円割れからは7.40円前後への下落を想定する。7.40円以下は反騰注意とするが、安値から0.1円規模の反騰が見られないうちはさらに安値を切り下げやすいとみる。短期的な底打ちサイクルで見れば14日午後から16日午後にかけての間は安値試しを続けやすく、1日から2日程度のリバウンドや下げ渋りが入っても戻り一巡から下げ再開へ向かいやすいとみる。
(3)7.52円から7.55円前後にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。7.55円を超える反騰の場合は7.60円前後試しとするが、本格的な反騰入りには11月11日の日足陰線を解消する=11月11日高値7.70円を超える規模の上昇が必要と思われる。
【当面の主な予定】
11月15日
17:00 10月 財政収支 (9月 -786.3億リラ)
11月17日
20:30 週次 外貨準備高 11/11時点 グロス (11/4時点 751.8億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 11/11時点 ネット (11/4時点 145.3億ドル)
11月21日
17:00 10月 観光客数 前年同月比 (9月 55.84%)
11月22日
16:00 11月 消費者信頼感指数 (10月 76.2)
11月24日
16:00 11月 製造業景況感 (10月 100.3)
16:00 11月 設備稼働率 (10月 76.9%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 10.5%)
注:ポイント要約は編集部
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