ドル円 2022年高値からの調整局面が続く(週報11月第2週)

先週のドル円は、イベントとしては米国中間選挙とCPIの2つが大きな材料となっていました。

ドル円 2022年高値からの調整局面が続く(週報11月第2週)

2022年高値からの調整局面が続く

〇先週のドル円、米国CPIの結果受け米金利低下、ドル売り広がり140円台まで急速に水準切り下げ
〇翌日もドル続落で138円台半ばまでドル売り加速、週間のドルの下げ幅は9円を超える
〇まだ1.0%の利上げは行われると考えると長期的なドル買い円売りの流れが変化したとは考えにくい
〇短期的には10月高値151.93レベルで2022年高値は見た可能性が高い
〇今週は137.75レベルをサポートに、140.25レベルをレジスタンスとする週とみる

今週の週間見通し

先週のドル円は、イベントとしては米国中間選挙とCPIの2つが大きな材料となっていました。中間選挙については先週の週報で触れませんでしたが、2016年のトランプ大統領の当選劇以降は結果がどうであれ金融市場参加者はポジティブな材料を見つける傾向が強く事前の分析はほとんど意味が無いと感じているためです。しかも今回の中間選挙は事前予想では共和党がかなり優勢との見方でしたが、蓋を開けて見ると接戦となり本日現両党とも上下院で過半数を取っていません。

おそらくは下院では共和党、上院では民主党という結果になると見られますが、上院にいたっては最終的な結果は12月の決選投票までわからないでしょうから、中間選挙よりもこれまで同様にインフレと米金利への注目度が上がることとなりました。そして迎えた米国CPIですが、予想の8.0%に対して結果は7.7%。この結果を受けて米金利は低下、10年債利回りは4.09%台から3.80%台へと低下、FF先物は12月時点での利上げ幅0.5%の織り込みが90%に上昇、来年のピーク金利も5.0~5.25%だったものが4.75~5.0%へと低下し、第4四半期には緩和に転じるという見方へと変化してきました。

為替市場も米金利低下によるドル売りが広がり、CPI前には146円台半ばだったドル円は140円台まで急速に水準を切り下げ、翌日もドルが続落したことで138円台半ばまでドル売りが加速しました。週初には147円台半ばであったことから週間のドルの下げ幅は9円を超え、リーマンショック以降では最大の週間レンジを記録しています。CPIが予想よりも0.3%少ない程度でここまでのドル安が進んだということは、短期筋を中心として相当なドル買いポジションが膨らんでいて、その買い手がかなり切らされた結果と言えるでしょう。

そうなると、改めて買いやすくなったと見るか、あるいはドル買いはもう難しくなったと見るかがここから判断の分かれるところでしょうが、利上げの幅が少なくなり、ピーク金利が下がったとしても、まだ1.0%の利上げは行われるわけですから、それを考えると長期的なドル買い・円売りの流れが変化したとは考えにくいところです。しかし、短期的には10月高値151.93レベルで2022年高値は見た可能性が高くなったと言えるでしょう。そうなると。当面はドルの戻り売りが出やすい地合いという見方でよさそうです。ここからの短期的な下値の目安を考えるため、いつもの日足チャートを見て行きます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

現在の水準は8月安値と10月高値の61.8%押しの水準にあり、いったん下げ止まりやすい水準ではありますが、先週後半の下げが急であったため戻り売りが強く、もう一段の下げがありそうです。そうなると次のターゲットは78.6%(61.8%の平方根)押しとなり、その水準が135.00となかなか良い水準ですが、今週という期間では遠すぎます。

もうひとつは10月高値から10月下旬への押しとその後の戻しから考える逆N波動(ピンク)です。こちらは161.8%エクスパンションが137.73となり、137円台後半が現在の下値のターゲットと見ても良さそうです。なお、戻りについては木曜安値の140円台前半を考えたいと思います。

上記のテクニカルなターゲットを参考に、今週は137.75レベルをサポートに、140.25レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

11月14日(月)
19:00 ユーロ圏9月鉱工業生産
19:00 パネッタECB理事講演
25:15 デギンドスECB副総裁講演 ☆
**:** 米中首脳会談 ☆

11月15日(火)
08:30 NY連銀総裁講演
08:50 本邦7〜9月期GDP速報値 ☆
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表 ☆
11:00 中国10月鉱工業生産、小売売上高
12:00 フランス中銀総裁講演
16:00 英国10月失業率
16:45 フランス10月CPI
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP改定値 ☆
19:00 ドイツ11月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏11月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏9月貿易収支
22:30 米国10月PPI ☆
22:30 米国11月NY連銀製造業景況指数
23:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
24:00 バーFRB副議長講演
26:30 エルダーソンECB理事講演
**:** G20サミット(〜16日)☆

11月16日(水)
16:00 英国10月CPI ☆
20:00 南ア9月小売売上高
22:30 米国10月小売売上高 ☆
22:30 米国10月輸入物価
23:15 英中銀総裁議会証言 ☆
23:15 米国10月鉱工業生産、設備稼働率
24:00 米国11月NAHB住宅指数
24:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
24:00 米国9月企業在庫
24:30 週間原油在庫統計
30:45 NZ7〜9月期PPI

11月17日(木)
08:50 本邦10月貿易収支(通関)
09:30 豪州10月失業率
19:00 ユーロ圏10月CPI
19:00 ユーロ圏9月建設支出
22:00 セントルイス連銀総裁講演
22:30 米国11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:30 米国10月住宅着工・建築許可
22:30 米国新規失業保険申請数
23:40 クリーブランド連銀総裁講演 ☆

11月18日(金)
08:30 本邦10月CPI ☆
09:01 英国11月消費者信頼感
16:00 英国10月小売売上高
17:30 ラガルドECB総裁講演 ☆
22:00 ドイツ連銀総裁講演 ☆
22:15 オランダ中銀総裁講演
24:00 米国10月中古住宅販売 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

11月7日(月)
週明けのドル円は東京市場では米金利が上昇する動きとともにドル高、欧州市場では米金利が低下したことからドル安の動きとなりました。金曜安値を下回ったことやユーロドルでのユーロ買いの動きも重なり、一時146.08レベルの安値をつけましたが下げきれず、引けにかけては146円台半ばに戻して引けました。

11月8日(火)
東京市場のドル円はほとんど動きがなかったものの欧州市場に入り米金利低下の動きとともにドル売りに動き始めました。NY市場に入り米金利が一段と低下するとドル円は145.31レベルまで水準を切り下げ若干戻しての引けとなりました。

11月9日(水)
先週後半から続いていたドル売りの流れに対し、調整の買い戻しによるドル買いが目立ちました。米国中間選挙はいまだ結果が判明せず、どちらかというと翌日の米国CPIを前にした調整という動きでした。

11月10日(木)
ドル円は米国CPIを控えて若干底堅い程度でNY市場入りとなりましたが、CPIが7.7%と予想の8.0%から下振れし、ピークから着実に低下している結果となりました。この結果を受けた金利低下からドル買いポジションの投げが発生し、引け間際には140.19レベルと140円の大台目前まで水準を切り下げました。引けにかけては141円近くに戻しました。

11月11日(金)
ドル円は前日の下げに対する買い戻しが先行し仲値過ぎには142.48レベルの戻り高値をつけました。しかし、142円台半ばで売りが見える中で、当局の円安への戻しに対する牽制発言も出て再び下げに転じる動きとなりました。その後は一貫してドル売りの動きとなりましたが、目立った材料も無く前日の米国CPI発表後の米金利低下の動きが引き続き材料とされました。下げる中でストップオーダーも巻き込んで引け間際には138.46レベルの安値をつけ、若干戻して引けました。

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