トルコリラ円見通し 米雇用統計後の円高に圧されて8円手前から反落
〇トルコリラ円、米雇用統計直後7.96へ上昇するが、ドル円急落にあわせ7.87まで下落
〇145円台から続落し調整安続く場合、リラ円も7.50円台試す下落期へ進む可能性に注意
〇対ドル、ドル全面安で一時18.49至るが戻り売り、18.62中心としたレンジ相場に留まる
〇7.94を下回るうちは一段安余地ありとし、7.87割れからは7.83前後への下落を想定する
〇7.94超えからは7.97試しとするが、7.93を割り込むところからは下げ再開とする
【概況】
トルコリラ円の11月4日は7.97円から7.87円の取引レンジ、5日早朝の終値は7.89円で前日終値の7.96円からは0.07円の円高リラ安となった。週間では10月28日終値の7.93円から0.04円の円高リラ安だった。
11月4日夜の米雇用統計発表から金融市場全般が乱高下となったが、ドル円は当初に147.60円近辺だったところから148.12円へ上昇したものの早々に売られて146.55円へ下落、いったん147円台序盤へ戻してから146.54円まで反落した。トルコリラ円も午前高値で7.97円をつけた後をややジリ安で推移していたところから雇用統計直後の7.96円へいったん戻したもののその後のドル円の急落に合わせて7.87円まで下げた。
10月の米雇用統計では非農業部門就業者数が26.1万人増となり市場予想の20.0万人増を上回ったものの失業率が9月に3.5%から3.7%へと悪化した。平均時給は前月比が0.4%上昇で予想及び9月の0.3%上昇を上回ったが、前年同月比では9月の5.0%上昇から4.7%へ低下して予想と一致した。強弱まちまちの内容だったが、雇用統計発表後に地区連銀総裁らが相次いで利上げペース減速を支持する発言を繰り返したこともあり、為替市場は当初にドル高となったものの早々にドル全面安となりドル円が急落した。
クロス円はユーロ円や豪ドル円等が大幅上昇したものの、トルコリラ円はドル/トルコリラの動きが鈍かったことでドル円の下落に同調する展開となった。11月3日未明の米FOMC後の急落時安値7.83円割れには至らずにいるが、FOMC前の水準からの上昇分を解消した。
【対ドルで史上最安値を一時更新】
ドル/トルコリラの11月4日は18.67リラから18.49リラの取引レンジ、5日早朝の終値は18.57リラで前日終値の18.61リラからは0.04リラのドル安リラ高だった。
11月4日午後に一時18.67リラの安値をつけて10月11日につけたこれまでの最安値18.66リラを超えたところは買い戻され、18.62リラを中心とした持ち合い水準へ押し戻されていたが、11月4日の米雇用統計発表から為替市場はいったんドル高となったものの早々にドル全面安へと急旋回したことでドル/トルコリラも全般のドル安に押し上げられて一時は18.49リラまで反発したが、その後は戻り売りされた。18.50リラ近辺ではドル買いリラ売りが入って18.57リラへ下げたために10月以降の18.50リラ前後で売られて18.60リラ台では買い戻されるレンジ相場の範囲にとどまった。
週間では10月28日終値の18.58リラから0.01リラのドル高リラ安だった。終値ベースでは11月2日終値18.62リラが史上最安値となっている。
ベンダーによっては11月3日の18.65リラで史上最安値更新としているものもあるが、10月後半以降では18.70リラ台の安値を提示しているところも見られる。18.65リラ以上のスパイク的な安値は早々に元の水準へと押し返されてきた。
トルコ中銀による通貨スワップ市場を介したリラ買いドル売りによるリラ安防衛に加え、企業の外貨保有規制により基準を超えた場合に保有外貨をリラへ転換せざるを得ないこともリラ売りを抑え込んでいる。
10月20日のトルコ中銀による3会合連続の利下げと11月会合で一桁まで利下げした後は当面の利下げを打ち止めとする姿勢を示したこと、11月3日のトルコ消費者物価上昇率が市場予想範囲に収まったことでドル/トルコリラの急激な変動は抑えられている。当面は実体経済の力強さや経常収支等を見ながら史上最安値近辺での膠着状態を続けやすいところと思われる。
【ドル円の調整安続けばトルコリラ円も同調して安値試しへ向かいやすい】
トルコリラ円は7月後半からほぼドル円の騰落に合わせた動きを続けている。ドル/トルコリラは6月27日の一時的な急伸から史上最安値更新へと下落基調で推移してきたが、下落速度は緩やかであり、歴史的な大上昇を継続してきたドル円の変動率が勝ったことで、日々の値動きはドル円とほぼ同じ軌跡をたどっている。
ただし、ドル円が8月2日安値からの上昇で7月高値を超えて10月21日高値へと一段高したのに対して、トルコリラ円はドル高リラ安がブレーキ役となるために8月2日安値7.27円から10月21日高値8.17円へと上昇したものの6月27日高値8.37円には届かず、10月21日にドル円が市場介入による急落に見舞われて以降はトルコリラ円も高値切り上げへ進めずにいる。
ドル円は10月21日高値151.94円を起点に10月27日安値145.10円を下値支持線として三角持ち合いの様相だが、トルコリラ円も10月21日高値を起点とし10月27日安値7.80円を下値支持線として三角持ち合いの様相となっている。
ドル円が三角持ち合いの様相で調整につかまっているのは、政府日銀の市場介入による高値警戒感と米FRBによる超ハイペースの利上げが減速するとの見通しにより上値が抑えられているためだが、ドル円が145円台から転落してさらに続落となる場合には7月14日から8月2日にかけての間へ9.00円規模の調整安が入った時と同様の規模での調整安につかまる可能性があり、その際はトルコリラ円も10月27日安値を割り込んで7.50円台を試す下落期へと進む可能性が出てくると注意したい。歴史的なドル円の上昇はさらに継続するのではないかと考えたいが、概ね3か月から4か月周期で大きな調整安が入っており、現状もそのレベルの調整安となっても不思議ないところだと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは11月3日未明のFOMC声明発表直後に急落したところから急反騰したために11月3日午前時点では11月3日未明安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして5日未明から9日未明にかけての間への上昇を想定したが、11月4日午前時点では7.90円割れからは弱気サイクル入りとした。
11月3日夜に7.90円を割り込む下落となったため、11月4日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして8日未明から10日未明にかけての間への下落を想定する。7.94円超えからは強気転換注意とするが、強気サイクル入りは11月4日午前高値7.97円超えからとする。
60分足の一目均衡表では11月4日夜の下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は11月4日夜に30ポイントを割り込んでからやや戻したものの40ポイントに届かずにいるのでまだ20ポイント前後への低下を伴う下落余地ありとみる。強気転換には50ポイント超えから60ポイントに迫る上昇が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.87円を下値支持線、7.94円を上値抵抗線とする。
(2)7.94円を下回るうちは一段安余地ありとし、7.87円割れからは7.83円前後への下落を想定する。7.83円以下は反騰注意とするが、下げ足が速まる場合は7.80円台序盤(7.82円から7.80円)へ下値目途を引き下げ、7.90円以下での推移か直前安値から0.05円を超える反騰が見られないうちは11月8日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.94円超えからは7.97円試しとするが、7.97円手前は戻り売りにつかまりやすいとみてその後に7.93円を割り込むところからは下げ再開とする。ドル円の反騰を背景に7.95円以上を維持する場合は8日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
【当面の主な予定】
11月7日
23:00 10月 財務省現金残増減 (9月 -792.6億リラ)
11月10日
16:00 9月 失業率 (8月 9.6%)
20:30 週次 外貨準備高 11/4時点 グロス (前週 748.0億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 11/4時点 ネット (前週 134.5億ドル)
11月11日
16:00 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 2.4%)
16:00 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 1.0%)
16:00 9月 小売売上高 前月比 (8月 3.7%)
16:00 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 9.0%)
16:00 9月 経常収支 (8月 -31.1億ドル)
次回以降のトルコ中銀MPCは11月24日、12月22日の予定
注:ポイント要約は編集部
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