当局が円買い介入出動、ドルの上値は重いか
〇先週のドル円、日足ベースで20日まで12連騰、150円もしっかりと上抜ける展開
〇しかし週末に週間高値151.94をつけた後当局が介入出動、5円を超える急落に
〇英トラス首相が在任期間歴代最短のわずか1ヵ月半で退陣、ポンドは週間を通し荒い値動き
〇150円から上が新たな「円安シーリング」、ドルは底堅いが頭も重く上げ渋る可能性も
〇今週は10月消費者信頼感指数や7-9月期GDP速報値などの米経済指標が発表される予定
〇今週のドル/円予想レンジは146.00-151.00
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、結果的にドルが小安い。途中までドルは堅調推移で、一時152円に接近する局面も観測されたが、当局のドル売り・円買い介入もあり急落している。
前週末は、バイデン米大統領が記者団に対して述べた「ドル高を懸念していない。米国経済は力強い」発言が物議を醸す。一方、16日から始まった中国共産党への関心も高く、習国家主席が台湾情勢についてコメントした内容が思惑を呼んでいたようだ。
そうした状況下、ドル/円は寄り付いた148円半ばを目先安値に緩やかな右肩上がり。日足ベースでは20日まで12連騰をたどり、150円もしっかりと上抜ける展開だった。そのなか、折につけ介入警戒感が取り沙汰され、18日や20日には「覆面介入」の噂も台頭したが、大きな影響は見られず。しかし週末21日、週間高値151.94円を示現したのち、当局が本物の介入に出動。市場はやや不意を突かれた格好で、一気に5円を超える急落をたどっている。そののち、やや値を戻し週末NYは147.70円台で取引を終え越週となった。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「日米為替政策と円買い介入」と「英国情勢」について。
前者は、週末にイエレン米財務長官が記者会見で「市場で決定される為替レートがドルにとって最良の体制であり、それを支持する」とコメント。さらに、前述したバイデン発言も加わり、市場では「米国はドル高容認スタンス」との認識が高まった。したがって、ドル買い安心感を醸していた市場は、鈴木財務相や神田財務官が連日の如く口先介入に動いてもほぼ効果なし。また、13日に続き18日そして20日にもやや不自然な値動きが観測され、それが「覆面介入」ではないかと噂されたものの、影響は一時的にとどまっただけでなく、むしろドルが下がったところは買い場になっていた。そうこうするなか、ドル/円は150円を超え152円近くまで大幅続伸。その際、いよいよ政府・財務省が実弾介入に動くと、市場の様相が一変した。なお、週末安値をいくらと考えるのか判断が分かれているようで、146.20円前後を安値とする向きも少なくないが、ロイターなどでは144円半ばとしている。当稿では後者を一応採用としたい。
対して後者は、週の半ばに英世論調査大手ユーガブが「トラス政権の支持率が7%と1桁台に落ち込んだ」とする衝撃の調査結果を発表。政権不安が声高に指摘されるなか、「ブレーバーマン内相が国家安全保障めぐる違反で解任された」と報じられ、さらに不安が高まるなか、20日ついにトラス首相が辞任を発表した。首相在任期間は歴代最短、わずか1ヵ月半での退陣となる。なお、後任人事を含めた英政局をにらみポンドは週間を通して値動き荒っぽい。それも一方向ではなく、激しい上下動に振り回され痛手を被った市場筋も少なくなかったようだ。
<< 今週の見通し >>
5日から始まったドル/円の日足連騰は20日まで「12日」を数えたが、週末は当局の円買い介入もあり、連騰記録はついに途切れた。また、週足の陽線記録も9週で途切れている(つまり先週は陰線引け)。介入効果の継続性という点では疑問を抱く向きも少なくないが、それでも152円近くから150円以下まで5円以上も相場を押し下げたという意味での効果は大きい。また、短期的には上値を積極的に買い進めるにはリスクもうかがえることで、しばらくのあいだドルの頭は重い展開か。
日米金利差や、バイデン氏を筆頭とした米政府筋のドル高容認姿勢−−などが重なり、市場筋のあいだではドル買い・円売り安心感が依然として根強い。ちなみに、前者の「日米金利差」という観点からは7-9月期GDP速報値などの米経済指標発表、そして週末に予定されている日銀金融政策決定会合の結果発公表に一応要注意。ただ、先週末の当局円買い介入もあり、150円から上あたりが新たな「円安シーリング」として警戒されている感を否めない。ドルは底堅いものの、頭も重く上げ渋る可能性もある。
テクニカルに見た場合、ドル/円は先週150円台を「しっかり」と回復。再び青天井状態となった感も見られたが、週末の円買い介入でドルの高値トライも一旦仕切り直しとなった。前述したように、150円接近あるいは超えてくるようだと市場の警戒感が再び高まることになりそうだ。
それに対するドルの下値はすでに146円台まで値を上げてきた移動平均の21日線。前回NYクローズなどで「しっかり」と割り込んだのは今年8月で、達成すれば市場の流れに変化が生じることも考えられる。
今週は、10月の消費者信頼感指数や7-9月期GDP速報値などの米経済指標が発表される予定となっている。一方、週末28日には日銀による金融会合の結果公表、さらに米国に続き今週は欧州系金融機関などの決算発表が相次ぐ見込みだ。
そんな今週のドル/円予想レンジは、146.00-151.00円。ドル高・円安については、先週末の円買い介入観測後の戻り高値である148円半ばが最初の抵抗。超えれば新たなドル高シーリング150円を再び目指す展開か。
対してドル安・円高方向は、先で取り上げた週明け段階146円台までレベルを上げている21日線をめぐる攻防にまずは注目。下回れば先週末安値の144円半ばが再び視界内に。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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