日銀の大規模市場介入でドル円と共に急落、連続介入への懸念も
〇トルコリラ円、10/21は8.16から7.86へ急落、日銀市場介入によるドル円急落に同調
〇24日8時台にも反落、日銀追加覆面介入の可能性あり、ドル円への介入状況に留意
〇対ドル、中銀連続利下げ通過し18.66付近で推移、利下げ終了姿勢だがドル高によるリラ売りは継続か
〇政権、リラ防衛策として外貨保有規制を更に強化
〇10月トルコ消費者信頼感指数は4か月連続改善、最悪な消費者心理は改善、実態経済確りとした状態か
〇7.90以上での推移中は上昇余地ありとし、8.05超えからは8.10前後への上昇を想定
〇7.90割れからは下げ再開を警戒し7.86試し、7.86割れからは7.80前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円の10月21日は8.16円から7.86円の取引レンジ、22日早朝の終値は7.94円で前日終値の8.07円からは0.13円の円高リラ安だった。週間では10月14日終値8.00円から0.06円の円高リラ安だった。
ドル円が152円に迫ったところで政府・日銀による市場介入(当局は介入有無に言及せず)により146円台序盤へ急落したためトルコリラ円も売れて直前高値8.16円から7.86円へ急落した。ドル円が146円割れを回避してひとまず戻したことでトルコリラ円も急落一服で7.98円まで一時戻し、その後も新たな安値更新を回避し、週明けの10月24日午前序盤には8.04円へ戻り高値を切り上げていた。
しかしドル円は24日8時台には149.69円まで戻したところから145.61円まで一時的に急落しており、日銀による追加(覆面)介入の可能性も指摘されており、トルコリラ円も8.04円まで戻したところから8.01円まで反落しており、9月22日の最初の大規模介入時よりも円安を抑え込もうとする姿勢が強い可能性があるため、トルコリラ円としてはドル円への介入状況を見ながら神経質な展開を余儀なくされそうだ。
【対ドルでは中銀利下げを無難に通過、史上最安値近辺での揉み合い続く】
ドル/トルコリラの10月21日は18.62リラから18.53リラの取引レンジ、22日早朝の終値は18.59リラで前日と変わらずだった。週間では10月14日終値18.56リラから0.03リラのドル高リラ安だった。
10月20日のトルコ中銀による3会合連続利下げ決定を無難に通過し、18.50リラ前後から18.60リラ台までのレンジ内での推移を続けている。
トルコ中銀は10月20日夜に3会合連続の利下げを決定、市場予想を上回る1.5%の利下げだったものの、次回の追加利下げで利下げサイクルを終えて様子見に入る姿勢を示したことで市場の反応も比較的落ち着いた動きにとどまった。ロイター社が利下げ発表直後に1ドル18.615リラで史上最安値を更新したと報道したが、ベンダーによっては最安値についての振れ幅も大きく、手元のデータでは10月11日の1ドル18.66リラが取引時間中の史上最安値、終値ベースでは10月19日及び20日の18.59リラが最安値となっている。
【消費者信頼感指数は大幅な改善】
10月21日夕刻に発表された10月のトルコ消費者信頼感指数は76.2となり9月の72.4から5.2%の改善となった。今年6月に63.4まで低下して2021年3月の86.7以降の最低だったところから4か月連続の改善となった。2004年以降の比較可能なデータにおいても過去最低の水準から切り返している状況にある。
足元では消費者物価上昇率が前年比で80%を超える超インフレ状況にあるものの、3会合連続で利下げを行ったことで、物価上昇の速さに対して実質的には大幅なマイナス金利状態となっているため、固定金利ローンを活用した購買意欲は旺盛といえる。
同指数は0から200の範囲で信頼感を示すものであり、100を下回っていることはまだ状況が悪いとはいえるが、最悪な消費者心理からは改善しており、家計については9月の53.0から10月の57.5へ、経済全般への信頼感は9月の74.0から10月の77.9へ、耐久財消費については9月の91.0から10月の93.1へと改善している。統計そのものはトルコ統計局(1月に局長が更迭された)とトルコ中銀による共同調査であり、政権への忖度も加味されている可能性はあるが、海外からみているよりもトルコの実態経済は確りしているともいえそうだ。
【トルコ中銀の利下げ終了見込みと外貨保有規制】
トルコ財務省は10月21日に外貨現金が50万ドルを超える企業に対する融資規則を強化するとした。銀行規制局によると、監査対象となる企業が1000万リラ(538,000ドル)を超える外貨現金資産を保有し、それらが総資産または年間収益の5%を超える場合には新規のリラ建てローン借入を認めないとした。これまでは総資産または年間収益の10%を超える1500万リラの外貨現金資産が対象だったところからさらに制限基準を厳しくしたこととなる。この規制により外貨保有企業は外貨収益をリラ預金へ転換せざるを得なくなり、必要に応じて都度外貨へ転換して輸出入業務にあたるということになる。政府及び中銀によるリラ防衛政策といえる。
トルコ中銀は10月20日に政策金利の週間レポレートを1.5%引き下げて10.5%とした。3会合連続の利下げであり、次回の11月会合で政策金利を一桁とした上で当面の利下げサイクルを終了するとした。利下げの打ち止めが示されたことによりドル/トルコリラの動きは比較的落ち着いた動きにとどまっており、先行きの見えない利下げ継続感でのリラ売りにはブレーキがかかった可能性もある。しかし、世界規模のインフレは収まらずに米FRBは11月1-2日の次回FOMCで0.75%の大幅利上げを決定する見込みであり、ECBや英中銀も同様に0.75%の大幅利上げに踏み切る公算のため、ドル高ないしはユーロ高によるリラへの売り圧力は継続しそうだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは10月5日午前安値を起点とした上昇の継続とし、直近では10月18日夕刻安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして21日午前から25日午前にかけての間へ上昇を想定してきた。
10月21日午前時点では20日夜安値8.04円割れからは弱気サイクル入りとしたが、21日夜のドル円への市場介入による影響で7.86円へ急落したため、21日夜高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたと思われる。しかし24日午前序盤へ急伸してから再び反落するなど不安定な動きのため、22日未明安値を割り込まないうちはすでに22日未明安値を直近のサイクルボトムとして既に強気サイクル入りしていると仮定して26日夜から28日夜にかけての間への上昇を想定するが、22日未明安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りと仮定して27日未明から31日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では10月21日夜の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したため、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンを超えるところからは上昇再開に入ったとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は10月22日未明に20ポイント割れへ急落してから50ポイントへ戻したものの50ポイント以上を維持できずにいる。乱高下のため35ポイントまでで下げ止まり55ポイントを超える場合は反騰継続として60ポイント台後半を目指すとみるが、35ポイント割れからは下落再開の可能性を優先して20ポイント前後への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.90円を下値支持線、8.05円を上値抵抗線とする。
(2)7.90円以上での推移中は上昇余地ありとし、8.05円超えからは8.10円前後への上昇を想定する。8.10円以上は反落注意とするが、7.95円以上での推移なら25日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.90円割れからは下げ再開を警戒して22日未明安値7.86円試しとし、7.86円割れからは7.80円前後への下落を想定する。7.80円以下は反騰注意とするが、7.90円を下回っての推移なら25日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
10月25日
16:00 10月 製造業景況感指数 (9月 99.9)
16:00 10月 設備稼働率 (9月 77.4%)
10月27日
16:00 9月 貿易収支 (8月 -111.9億ドル)
16:00 10月 経済信頼感指数 (9月 94.3)
17:00 9月 観光客数 前年同月比 (8月 58.3%)
20:00 トルコ中銀 四半期インフレ見通し (Q3 60.40%)
20:30 週次 外貨準備高 10/21時点 グロス (前週 761.7億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 10/21時点 ネット (前週 140.8億ドル)
11月1日
16:00 10月 イスタンブール製造業PMI (9月 46.9)
11月3日
16:00 10月 消費者物価上昇率 前月比 (9月 3.08%)
16:00 10月 消費者物価上昇率 前年同月比 (9月 83.45%)
16:00 10月 生産者物価上昇率 前月比 (9月 4.78%)
16:00 10月 生産者物価上昇率 前年同月比 (9月 151.5%)
20:30 週次 外貨準備高
注:ポイント要約は編集部
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