トルコリラ円見通し トルコ中銀の連続利下げを無難に通過、ドル円に同調して高値を更新(22/10/21)

トルコリラ円の10月20日は8.08円から8.04円の取引レンジ、21日早朝の終値は8.07円で前日終値の8.06円から0.01円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の連続利下げを無難に通過、ドル円に同調して高値を更新(22/10/21)

トルコ中銀の連続利下げを無難に通過、ドル円に同調して高値を更新

〇トルコリラ円、ドル円150円到達に同調、8/2安値以降の最高値8.08到達
〇トルコ中銀、予想上回る大幅利下げ実施で金利10.5%に、次回会合では利下げサイクル終了姿勢を示す
〇対ドル、会合結果受け冷静な動きにとどまる、史上最安値18.66近辺での膠着状態続く
〇週次外資準備高は大幅増加、露からの資金提供との見方も、米によるトルコ制裁の動きにも警戒
〇8.04以上での推移中は上昇余地ありとし、8.10超えからは8.12前後への上昇を想定する
〇8.04割れからはいったん下げに入るとみて、8.02前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の10月20日は8.08円から8.04円の取引レンジ、21日早朝の終値は8.07円で前日終値の8.06円から0.01円の円安リラ高だった。
トルコ中銀が市場予想を上回る1.50%の利下げを決定したものの次回の追加利下げで利下げサイクルをいったん終了する姿勢を示したことでドル/トルコリラは冷静な動きにとどまり、トルコリラ円はドル円の動向を見ながらの展開を継続した。
ドル円は20日夕刻に150円に到達、夜にかけてはユーロ等の反発によりドル高感が若干緩んだために149.50円台へ下げたものの21日早朝には150.28円へ一段高しており、150円到達阻止のための政府・日銀による大規模介入は見られず、ドル円の上値目標はさらに切り上がった印象だ。
トルコリラ円は20日夜にかけてドル円が下落した局面で8.04円まで下げたもののその後にドル円が一段高したところで8.08円へ上昇して8月2日安値7.27円以降の最高値を更新、日足は10月6日からの連騰を伸ばした。

政府・日銀は9月22日に3兆円近い大規模な円買い介入を実施した後は公式な市場介入を行わず、介入についてはコメントしないとしている。10月13日や10月18日には覆面介入ではないかと思われる一時的な下落が発生したものの、150円到達を阻止する明確な動きは見られず、150円台中盤ないしは1990年につけた160円台を試す可能性も出てきているのではないかと思われる。ドル円の上昇基調が続くうちは対ドルでのリラ安が暴落レベルへと加速しない限り、トルコリラ円はドル円の上昇に合わせた動きを続けてゆくと思われる。ただし常に大規模介入第二弾への警戒感は怠れない。

【対ドルでは史上最安値近辺での膠着状態続く】

ドル/トルコリラの10月20日は18.61リラから18.54リラの取引レンジ、21日早朝の終値は18.59リラで前日終値と変わらずだった。
トルコ中銀は10月20日夜に3会合連続の利下げを決定、市場予想を上回る1.5%の利下げだったものの、次回の追加利下げで利下げサイクルを終えて様子見に入る姿勢を示したことで若干のサプライズと安心が交錯する状況となり大きな動きにはならなかった。
中銀の利下げ発表直後の市況報道では、ロイター社が1ドル18.615リラで史上最安値を更新したとの報道もあるが、ベンダーによっては提示レートもかなり振れ幅があるため史上最安値もまちまちであり、ベンダーによっては1ドル18.70リラを最安値としているところもあるが、本稿としては10月11日の1ドル18.66リラを取引時間中の最安値とし、終値ベースでは10月19日及び20日の18.59リラを最安値と仮定しておく。
現状は18.50リラ前後では戻り売りされ18.60リラ台では買い戻されるレンジ相場が続いている状況にあり、3会合連続利下げを通過してもリラ安基調を継続しつつも史上最安値近辺での膠着状態を続け、徐々に史上最安値更新を試してゆく展開と考える。

【トルコ中銀、予想を上回る利下げ、11月会合で一桁への追加利下げを試す】

【トルコ中銀、予想を上回る利下げ、11月会合で一桁への追加利下げを試す】

トルコ中銀は10月20日のMPC(金融政策委員会)で政策金利の週間レポレートを現行の12.0%から1.5%引き下げて10.5%とした。3会合連続の利下げは予想通りだが、事前予想では1.0%利下げと見込まれていたところ1.50%の大幅利下げを決断した。
主要金利では翌日物貸出金利を13.5%から12.0%へ、翌日物借入金利を10.5%から9.0%へ、後期流動性貸し出し金利を16.5%から15.0%へ、いずれも1.5%ずつ引き下げた。

トルコ中銀は今年1月から7月まで7会合連続で政策金利を14.0%に据え置いてきたが、8月18日に予想外の利下げを決定して13.0%とし、9月22日には2会合連続の利下げで12.0%へ引き下げていた。9月28日にエルドアン大統領は「年末までに政策金利を一桁とすべき」と演説し、9月29日には「トルコ中銀に利下げを提言した」と述べたため、政権の意を汲んで今回のMPCでも3会合連続の利下げで11.0%へ引き下げると市場は予想していた。

トルコ中銀は今回の利下げ決定に際し、次回の利下げにより利下げサイクルをいったん終了して状況推移を見守る姿勢を示した。トルコ中銀のMPCは年末までに11月24日、12月22日の二回予定されており、次回会合で1.5%利下げを決定すれば9.0%となり、エルドアン大統領の意向を達成することになる。

【外貨準備高が増加】

10月20日夜に発表された週次の外貨準備高は10月14日時点のグロスが761.7億ドルとなり前週の732.5億ドルから大幅に増加、ネットでも140.8億ドルとなり前週の124.4億ドルから大幅増加した。
増加の背景としては韓国中銀との通貨スワップ協定による増加やアラブ諸国及びロシアからの資金提供という見方もあるようだ。高インフレの続く中での利下げ強行によるリラ安への防衛的な資金力を増強したという側面もありそうだ。
ただし、ロシアとの関係については米国がトルコ企業に対してロシア制裁の波及を警告しており、今週も米財務省のテロ資金供与・金融犯罪担当次官補であるローゼンバーグ氏がトルコ入りしているため、米国によるトルコ制裁への動きにも注目しておきたい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月5日午前安値を起点とした上昇が継続しており、18日夕刻に一時的な下落でつけた安値を起点として既に新たな上昇期に入っているとして20日午前時点では21日午前から25日午前にかけての間へ上昇を想定した。
10月20日夜へ反落したものの既に一段高しているため10月18日夕刻安値を起点とした強気サイクルの継続とみるが、10月13日夜安値から5日目となる20日夜安値を起点とした強気サイクル入りの可能性も検討される。弱気転換は20日夜安値8.04円割れからとし、その際は21日午後から25日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では10月20日夜への下落時に遅行スパンが一時的に悪化したもののその後の一段高で好転しており、先行スパンを上回る状況を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。また先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とし、10月20日夜安値割れからは下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10月20日夜に40ポイントを試してから反発しているのでまだ上昇余地ありとし、60ポイント超えからは70ポイント台後半への上昇を想定するが、45ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント台前半への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.04円を下値支持線、8.10円を上値抵抗線とする。
(2)8.04円以上での推移中は上昇余地ありとし、8.10円超えからは8.12円前後への上昇を想定する。8.12円以上は反落注意とするが、8.06円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.04円割れからはいったん下げに入るとみて8.02円前後への下落を想定する。8.02円以下は買われやすいとみるが、8.04円以下での推移が続く場合は週明けも安値試しへ向かう可能性があるとみる。また日銀市場介入などで急落する場合は8.00円前後へ下値目途を引き下げる。

【当面の主な予定】

10月21日
 16:00 10月 消費者信頼感指数 (9月 72.4)
10月25日
 16:00 10月 製造業景況感指数 (9月 99.9)
 16:00 10月 設備稼働率 (9月 77.4%)
10月27日
 16:00  9月 貿易収支 (8月 -111.9億ドル)
 16:00 10月 経済信頼感指数 (9月 94.3)
 17:00  9月 観光客数 前年同月比 (8月 58.3%)
 20:00 トルコ中銀 四半期インフレ見通し (Q3 60.40%) 
 20:30 週次 外貨準備高 10/21時点 グロス (前週 761.7億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 10/21時点 ネット (前週 140.8億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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