トルコリラ円見通し 8月2日以降の高値を更新、日足は10連騰
〇トルコリラ円、ドル円大上昇に伴い連騰し8.04到達、日銀の円買い介入警戒しつつ高値追及続くか
〇対ドル、史上最安値18.66近辺で推移、利下げ予想のトルコ中銀会合迫り、リラ買い控えられる
〇中銀、外貨預金準備率を3%から5%へ引き上げ、リラ安阻止へ策を講じる
〇政権は23年国家予算提出、光熱費補助を拡充、前年比7割増の4兆4700億リラに
〇7.99以上での推移中は上昇余地ありとし、8.04超えからは8.07を目指す上昇を想定する
〇7.99割れから7.97前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の10月18日は8.04円から7.99円の取引レンジ、19日早朝の終値は8.03円で前日終値の8.01円からは0.02円の円安リラ高となった。
ドル高リラ安基調は変わらずで対ドルでのトルコリラは史上最安値に近いところでの揉み合いを続けているが、トルコリラ円はドル円の歴史的な大上昇につれ高となっており、10月5日安値からの上昇を継続して10月18日も高値を伸ばし、8月2日安値7.27円以降の最高値を更新している。
10月6日から(ベンダーによっては10月5日から)小数点以下3桁の比較では11営業日連騰となっている。
10月18日は朝に8.04円の高値をつけ、夕刻にはドル円が一時急落したところで7.99円へ下落したものの、ドル円が早々に切り返して一段高となったため、トルコリラ円も早々に買い戻された後は8.01円から8.03円までのレンジでしっかりした。
政府・日銀は9月22日に3兆円近い規模で24年ぶりとなる円買い介入を実施したが、その後は公式な介入を表明していない。10月13日の米CPI発表からの急伸後に1円を超える急落となったところや、昨夕の一時的な急落についても市場介入への言及はないものの覆面介入ではないかとの見方もされている。149円台へ乗せて勢い付けば150円を巡る攻防へ進む可能性があるが、その際に大規模な実弾介入があれば9月22日の介入時のような急落商状もあり得るところであり、トルコリラ円も常に介入動向へ注意しつつ慎重に高値追及をしてゆくところと思われる。
【対ドルでは最安値近辺での揉み合い続く】
ドル/トルコリラの10月18日は18.60リラから18.52リラの取引レンジ、19日早朝の終値は18.58リラで前日終値の18.56リラからは0.02リラのドル高リラだった。
10月に入ってからは18.50リラ前後から18.60リラ台での持ち合いで推移しており、10月11日に18.66リラの史上最安値をつけた後は新たな安値更新へ進めずにいるものの、最安値近辺を維持して安値更新を伺う状況が続いており、終値ベースでは10月11日の史上最安値18.59リラに迫っている。
10月20日20時にはトルコ中銀の政策金利発表があり3会合連続での1.0%利下げが予想されているため積極的なリラ買いは控えられている印象だ。10月19日午前は18.61リラから18.55リラの範囲で推移している。
【トルコ中銀 外貨預金準備率引き上げ】
トルコ中銀は10月18日、外貨預金に義務付ける証券保全比率を従来の3%から5%へ引き上げ、年末までにはさらに引き上げるとした。また来年以降は金融機関におけるリラ建て預金の比率が全預金の50%を下回る場合には5%の保全比率にさらに7%を追加するとした。
トルコリラの歴史的な暴落が収まらない中で国内投資家はリラからドルやユーロ等のハードカレンシーやゴールドなどへ資産を逃避させてきたが、中銀はリラ放れによるリラ安阻止へ策を講じてきた。国内企業に対しても外貨保有を制限して規制を超える部分をリラに転換させる政策を導入している。現状のリラ預金比率は企業と個人ともに50%を割り込んでいる模様。
【2023年のトルコ国家予算は前年比7割増に】
エルドアン政権は10月17日に2023年に予算案を提出したが、光熱費の補助金拡大などにより歳出は前年比で7割増となる4兆4700億リラ(凡そ36兆円)とされた。家庭向け光熱費補助を倍増し、企業向け補助金も拡大した。
消費者物価上昇率が前年比で80%を超える高インフレの中にあっても、政策金利の引き下げを行い、実質金利は大幅なマイナスとなっていることがリラ安とインフレをさらに加速させているが、特に電気ガスや燃料費の高騰による国民の不満を和らげ、実質マイナス金利による融資拡大で企業活動及び個人消費を強めて来年の大統領選挙へ向けた支持拡大を取り付けたいという事だろう。
しかし、財政収支は月次のプラスとマイナスの振れ幅が異常に拡大し、貿易収支は輸入インフレにより赤字が拡大、経常収支の改善もままならない状況にあるため、リラ安がさらに加速してインフレ抑制への目途が立たなくなるとトルコ経済への先行き不信感が一段と強まりかねないと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月5日午前安値を起点とした上昇が継続しているが、10月13日夜に下落したところから一段高したために10月14日午前時点からは10月13日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして10月18日早朝から20日朝にかけての間への上昇を想定してきた。
10月18日午前高値の後も高値圏を維持しているので引き続きサイクルトップ形成中とするが、円安に依存した上昇であり日銀介入への警戒感もあるところのため、7.99円割れからは弱気サイクル入りとして19日の日中から20日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では10月13日夜からの反騰継続により遅行スパンの好転と先行スパンを上回る状況を維持しているので遅行スパン好転中の高値試し優先とする。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンへ潜り込むところからはその下限を試し、先行スパン転落からは下げ足が早まる可能性があると注意したい。
60分足の相対力指数は10月14日夜からの高値更新に際して指数のピークが切り下がりを続けているため、60ポイント超えからは上昇再開とするが、50ポイント割れからはいったん下げに入るとみて30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.79円を下値支持線、8.04円を上値抵抗線とする。
(2)7.99円以上での推移中は上昇余地ありとし、8.04円超えからは8.07円を目指す上昇を想定する。8.07円以上は反落注意とするが、8.00円以上での推移なら20日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.99円割れから7.97円前後への下落を想定する。7.97円前後では買われやすいとみるが、7.99円以下での推移が続く場合は20日も安値試しへ向かう可能性があるとみる。また日銀市場介入などでドル円が急落する場合は7.95円前後へ下値目途を引き下げる。
【当面の主な予定】
10月20日
20:00 トルコ中銀政策金利 (現行 12.0%)
20:30 週次 外貨準備高 10/10時点 グロス (前週 732.5億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 10/10時点 ネット (前週 124.4億ドル)
23:30 9月 中央政府債務 (8月 365.1億リラ)
10月21日
16:00 10月 消費者信頼感指数 (9月 72.4)
10月25日
16:00 10月 製造業景況感指数 (9月 99.9)
16:00 10月 設備稼働率 (9月 77.4%)
注:ポイント要約は編集部
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