ドル円見通し 市場介入への警戒感と先高感のせめぎ合い続く
〇ドル円、10/18深夜149.37付近到達し1990年8月以来高値更新、19日早朝も149円台序盤を維持
〇18日夕刻一時的に急落、150円台到達阻止を狙う日銀、覆面での市場介入か
〇NYダウ連騰、好調な主要企業決算や9月鉱工業生産指数が寄与、米長期債利回りは高水準続く
〇日米金融政策差による円安継続、米はドル高容認姿勢、日銀単独の市場介入では限界か
〇148.50以上での推移中は上昇余地あり、149.30超えからは149.50、149円台後半を目指すとみる
〇148.50割れからはいったん下げに入るとみて148円前後への下落を想定する
【概況】
ドル円は10月18日早朝に149円台へ到達、夕刻には149.28円をつけたところから一時148.68円(ベンダーによっては148.10円台)へ急落したものの早々に買い戻され、深夜には149.37円近辺まで高値を伸ばし1990年8月以来32年ぶり高値を更新した。19日早朝にかけては新たな高値更新へ進めずにいるものの149円台序盤を維持している。
10月18日夕刻の一時的な急落については日銀による覆面での市場介入ではないかとの見方もあるようだ。10月13日夜の米CPI発表直後に急騰したところから1円を超える急落となったところでは1兆円規模の覆面介入があったのではないかとの見方もあるが、18日夕刻もその時に近い動きという印象だ。政府・日銀は9月22日に24年ぶりとなる3兆円近い規模での円買い介入を実施して以降は具体的な介入の有無については言及しないとしており、介入の実態については月次の日銀報告を見るまで分からない。
【政府・日銀による円安けん制続く】
10月18日、鈴木財務相は衆院予算委員会で「過度な変動には適切な対応を断固として取る」「断固たる措置」、具体的内容への質問に対しては「先般、断固たる措置として為替介入を実施した」と述べた。
日銀の黒田総裁は衆院予算委員会において「大規模金融緩和によりデフレは解消している」、「経済が成長し雇用が増加したという意味で効果があった」と述べて金融緩和政策が有効だったとの認識を示し、「任期途中で辞めるつもりはない」と述べた。またドル円の上昇については「このままドルが強くなると考えている人はワシントンにはほとんどいない」と述べている。
岸田首相も「投機の絡んだ急激な為替の動きは問題」、「適切な対応を考えている」と述べた。
黒田総裁の発言は、2015年に黒田総裁が「これ以上の円安は考えられない」と述べて市場が125円を黒田ラインとしてドル円の上昇が一巡した時を思い起こすものだが、当時ほどの迫力にかけて市場の反応は鈍い。
9月22日の大規模介入実施前の高値を超えてドル円は上昇を継続しており、147円を超えて急伸したところと149円台序盤へと一段高したところでの一時的な反落が発生したもののその後に一段高へ進んでいることを踏まえれば、速度調整的な覆面介入ないし口先介入を入れながら、150円台到達を阻止する姿勢ではないかとも想像されるところだ。
【NYダウは連騰だが米長期債利回りは高止まり続く】
10月18日のNYダウは前日比337.98ドル高と上昇し、一時は600ドル高を超える上昇となり17日の前日比550.99ドルからの連騰となった。ナスダック総合指数も96.60ポイント高と上昇して17日の354.41ポイント高からの続伸となった。米国の大幅利上げ継続による景気後退感が8月後半からの株安の背景だが、17日と18日の主要企業決算が好調だったことから過度の不況入りへの懸念が後退したことと、NYダウが28000ドル台まで下げて年初の史上最高値以降の安値を更新したところからの買い戻しが入っていること、ナスダックも10月13日に1万ポイントに迫ったところでの売られ過ぎ感で買い戻されている印象だ。
10月18日発表された米9月鉱工業生産指数は前月比0.4%上昇となり2か月ぶりのプラスで、設備稼働率も8月の80.1%から9月は80.3%へと改善したことも株高に寄与したようだ。
一方で米長期債利回りは歴史的な高水準にとどまっている。米10年債利回りは前日比0.01%低下の4.01%で終わったが、一時は4.06%をつけてこの間の最高値である10月13日の4.08%に迫った。30年債利回りは前日と変わらずの4.03%だったが、一時は4.09%をつけて11年ぶり高値を更新した。2年債利回りは0.02%低下の4.43%で10月13日に4.54%をつけた後は上げ渋りとなっているものの4.40%を割り込むところからは反発して高止まりの様相だ。
日銀の黒田総裁が任期中の金融緩和政策によるマイナス金利と量的緩和及び長期債利回り抑制への変更を考えていない状況の中にあって日米金融政策の差による歴史的な円安はさらに継続しやすく、米国がドル高容認姿勢のために日銀単独の市場介入では限界もあるという印象が日々強まっているのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は10月5日午前安値143.50円を起点とした上昇を継続しており、直前高値から1円程度の反落が入っても底上げ基調を維持して一段高を繰り返している。連騰による高値警戒感と市場介入への警戒感も続いているため、148.50円以上での推移中は上昇継続とみて19日の日中から22日早朝にかけての間への上昇を想定するが、148.50円割れからはいったん仕切り直しの下落に入るとみて19日午後から20日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では10月18日夕刻の一時的な急落を除けば遅行スパンの好転と先行スパンを上回る状況を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンへ潜り込む場合はその下限を試すとみる。
60分足の相対力指数は先週末からの高値切り上げが続く中で指数のピークが徐々に切り下がっているものの50ポイント台を維持しているため65ポイント超えからは70ポイント台後半への上昇を想定するが、50ポイント割れから続落に入る場合はいったん下げに入るとみて30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、148.50円を下値支持線、149.30円を上値抵抗線とする。
(2)148.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、149.30円超えからは149.50円近辺、次いで149円台後半(149.60円から149.90円台)を目指すとみる。149.50円以上は実弾介入による反落懸念が付きまとうとみるが、148.70円以上を維持しての推移なら20日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)148.50円割れからはいったん下げに入るとみて148円前後への下落を想定する。148円以下は反騰注意とするが、公然の実弾介入なら高値から2円を超える規模の下落を想定する。ただし、介入による急落が落ち着いた後は反騰入りを試す流れと考える。
【当面の主な予定】
10/19(水)
15:00 (英) 9月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (8月 0.5%、予想 0.4%)
15:00 (英) 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 9.9%、予想 10.0%)
15:00 (英) 9月 CPIコア指数 前年同月比 (8月 6.3%、予想 6.4%)
15:00 (英) 9月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (8月 12.3%、予想 12.4%)
18:00 (欧) 8月 建設支出 前月比 (7月 0.3%)
18:00 (欧) 8月 建設支出 前年同月比 (7月 1.5%)
18:00 (欧) 9月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 10.0%、予想 10.0%)
18:00 (欧) 9月 HICPコア指数・改定値 前年同月比 (速報 4.8%、予想 4.8%)
21:30 (米) 9月 住宅着工件数・年率換算 (8月 157.5万件、予想 147.0万件)
21:30 (米) 9月 住宅着工件数 前月比 (8月 12.2%、予想 -6.4%)
21:30 (米) 9月 建設許可件数・年率換算 (8月 151.7万件、予想 153.0万件)
21:30 (米) 9月 建設許可件数 前月比 (8月 -10.0%、予想 0.8%)
23:00 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
24:00 (英) マン英中銀委員、講演
26:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会
26:00 (米) 財務省20年債入札
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
10/20(木)
EU首脳会議(10/21まで)
07:30 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
07:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、イベント挨拶
08:50 (日) 9月 通関貿易収支・季調前 (8月 -2兆8173億円、予想 -2兆1454億円)
08:50 (日) 9月 通関貿易収支・季調済 (8月 -2兆3713億円、予想 -2兆614億円)
09:30 (豪) 9月 新規雇用者数 (8月 3.35万人、予想 2.50万人)
09:30 (豪) 9月 失業率 (8月 3.5%、予想 3.5%)
15:00 (独) 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 7.9%、予想 1.3%)
17:00 (欧) 8月 経常収支・季調済 (7月 -199億ユーロ)
21:30 (米) 10月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (9月 -9.9、予想 -5.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.8万件、予想 23.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 136.8万人、予想 138.4万人)
23:00 (米) 9月 中古住宅販売件数・年率換算 (8月 480万件、予想 470万件)
23:00 (米) 9月 中古住宅販売件数 前月比 (8月 -0.4%、予想 -2.2%)
23:00 (米) 9月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (8月 -0.3%、予想 -0.3%)
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
26:30 (米) ジェファーソンFRB理事、イベント挨拶
26:45 (米) クックFRB理事、講演
27:05 (米) ボウマンFRB理事、イベント挨拶
※:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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