トルコリラ円見通し ドル円の下落にドル高リラ安も重なり続落
〇トルコリラ円、5日午前序盤7.72まで続落、ドル円の144円台割り込みに同調
〇エルドアン大統領、利下げ継続を提言、ドル全面安に関わらず対ドル18.59へ史上最安値更新
〇リラ安阻止政策実施するも効果は一時的、加速が懸念される状況
〇7.78以下での推移中は一段安余地ありとし、7.72割れからは7.70前後への下落を想定する
〇7.78超えからはいったん戻しに入るとみて、7.80前後への上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の10月4日は7.84円から7.74円の取引レンジ、5日早朝の終値は7.75円で前日終値の7.79円から0.04円の円高リラ安となった。
対ドルでトルコリラの史上最安値更新が続く中、ドル円が9月22日の日銀市場介入による暴落を切り返してからも144円台中心の持ち合いで確りしていたためにトルコリラ円も9月22日の急落前高値を超えない範囲にとどまりつつもドル円の騰落に合わせて9月27日には7.87円まで切り返し、9月29日未明に7.76円まで下げた後も新たな安値更新を回避して持ち合いの様相となっていたが、ドル円が10月3日に145円台序盤へ戻したところからの失速で144円を割り込んだたために10月4日早朝には7.74円の安値をつけて9月29日安値を割り込んだ。
ドル円は10月5日午前序盤に144円割れを買い戻されずに143.50円台まで続落となり、9月27日以降の144円台を中心とした持ち合いから転落し始めたが、この流れに合わせてトルコリラ円も5日午前序盤には7.72円まで続落している。
【1ドル18.59リラへ史上最安値更新】
ドル/トルコリラの10月4日は18.59リラから18.44リラの取引レンジ、5日早朝の終値は18.57リラで前日終値の18.54リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。
10月3日のトルコ9月CPI上昇率が予想を若干下回ったものの前月比は8月の1.46%から3.08%への再び伸びが加速し、前年比は8月の80.21%から83.45%へと上昇、PPIも前月比が8月の2.41%から4.78%へ伸びが加速、前年比も8月の143.75%から151.5%へと大幅に上昇した。一方ではエルドアン大統領がトルコ中銀に対して利下げ継続を提言したこともあり、ドル/トルコリラは10月3日安値で18.57リラへと取引時間中の史上最安値を更新、終値ベースでも史上最安値を更新した。
10月4日は英ポンドやユーロが一段高となり、豪ドルや南アランド、メキシコペソも対ドルで上昇しており、米長期債利回りが9月後半のピークから大幅に低下したことでドル安感が強まっているのだが、高インフレ下での利下げ追及姿勢が変わらず貿易収支と経常収支の悪化が見られることでトルコリラの下落基調は継続し、取引時間中の史上最安値を18.59リラへ、終値ベースの史上最安値も18.57リラへ更新した。
【ドルストレートでのドル安を反映せずリラの最安値更新続く】
エルドアン大統領は9月28日に「年末までに政策金利を一桁とすべき」と述べ、29日には自ら「トルコ中銀に対して利下げの継続を提言した」と述べた。利下げにより融資を拡大し、リラ安は輸出を拡大して経常収支の改善となり、トルコ経済は強くなるというエルドアン大統領の金融政策姿勢は頑なであり、高インフレ下でも利下げを強行する姿勢は主要国の常識的な金融政策とは異なる。
2020年11月にトルコリラが1ドル8.58リラをつけて当時の史上最安値を更新した際、アーバル前総裁はリラ防衛のための利下げに踏み切り2021年2月には1ドル6.88リラまで持ち直した。しかし利上げを気に入らぬとしてアーバル総裁は解任されてカブジュオール総裁が就任し、大統領の意向に沿って2021年9月から12月まで4会合連続の利下げが強行されて政策金利は19%から14%まで引き下げられ、2021年12月には1ドル18.36リラへと史上最安値を更新した。
リラ預金の為替差損を財務省が補填するとの奇策発表でいったんは10.06リラまで急伸したものの長続きはせず、その後も企業の外貨保有規制や金融機関の準備率引き上げ、融資利率規制などによりリラ安阻止の政策もとられてきたが効果は一時的なものに留まり、リラ安に歯止めがかからない状況に陥っている。
既に1ドル18.50リラを超えたため、19.00リラから20.00リラを目指すようなリラ安の加速も懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月29日未明安値をサイクルボトムとして10月1日未明から5日未明にかけての間への上昇を想定してきたが、10月3日深夜の下落時に7.77円まで下げたために10月4日午前時点では10月1日早朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は10月3日夜から6日未明にかけての間と想定した。10月5日午前へ続落しているのでまだ一段安余地ありとするが、前回ボトムから4日を経過しているので反騰注意期とし、7.78円超えからは強気サイクル入りとして10月6日早朝から10日朝にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では10月4日夜からの下落で遅行スパンが悪化し、先行スパンから転落しているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。遅行スパン好転からは反騰入りの可能性ありとみて高値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンがその後に悪化するところからは下げ再開とみる。上昇が継続的に勢い付くには先行スパンを上抜き返す必要があると思われる。
60分足の相対力指数は30ポイントを試すところまで下落した後も40ポイント前後は抵抗となっている。45ポイントを超えないうちはもう一段安余地ありとするが、45ポイント超えからは上向きとし、50ポイント超えからは反騰入りとみて60ポイント台回復を目指すとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.72円を下値支持線、7.78円を上値抵抗線とする。
(2)7.78円以下での推移中は一段安余地ありとし、7.72円割れからは7.70円前後への下落を想定する。7.70円以下は買い戻しが入りやすいとみるが、勢い付く場合は7.68円前後へ下値目途を引き下げる。
(3)7.78円手前は戻り売りも出やすいとみるが、7.78円超えからはいったん戻しに入るとみて7.80円前後への上昇を想定する。7.80円前後は反落注意とするが、7.78円を超えた後も7.75円以上での推移なら6日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
10月6日
20:30 週次 外貨準備高 9/30時点 グロス (9/23時点 713.4億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 9/30時点 ネット (9/23時点 96.7億ドル)
10月7日
23:30 9月 財務省現金残 (8月 287億リラ)
10月10日
16:00 8月 失業率 (7月 10.1%)
10月11日
16:00 8月 経常収支 (7月 -40.1億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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