ドル円見通し ドル全面安続き144円台中心の持ち合いから転落
〇ドル円、144円台中心の持ち合いから転落、ポンド・ユーロの反騰、米長期債利回り低下でドル全面安に
〇英ポンド、減税撤回で大幅続伸、週末米雇用統計悪化の場合はドル全面安継続の可能性も
〇米8月求人件数は大幅減少、利上げペース鈍化期待でNYダウ大幅上昇、長期債利回り低下は一服
〇FRB「景気よりも物価抑制」姿勢に変化ない場合、ドル高株安再開へ回帰する可能性も
〇144.20以下での推移中はまだ一段安余地ありとし、143.20割れからは142円台後半への下落を想定する
〇144.20超えからは上向きとし、144.50超えからは145円へ迫る上昇を想定する
【概況】
ドル円は9月22日の日銀による24年ぶりとなる円買い介入で直前高値145.89円から22日夜安値140.34円まで5.55円の急落幅となったところから持ち直して来たが、9月27日以降は144円前後を買われるも10月3日に145円台序盤をつけたところでは介入警戒感から売られており、144円台を中心とした持ち合いを継続してきた。
先週からのポンドやユーロの反騰が継続していることと米長期債利回りが大幅低下したことでドル円を押し上げる力も後退しており、10月4日もドル安株高の継続で10月5日未明に144円を割り込んだところをいったん買われたものの勢いは鈍く、10月5日午前序盤には未明安値を割り込んでおり、持ち合いから転落し始めている印象だ。
【ポンド、ユーロの反騰続く】
英ポンドは9月26日に1.038ドルへ暴落して史上最安値を更新したが、その後の反騰で1.15ドルに迫り9月後半の暴落分を解消している。大規模減税政策発表が英国のトリプル安を招いた結果だったが、9月28日に英中銀がQE再開を決定したことでブレーキがかかり、その後に減税政策そのものが撤回されたことで大幅続伸となった。またユーロドルは9月28日に0.9534ドルまで下げて20年ぶり安値としたところから10月4日には1ユーロ1ドルのパリティ直前まで切り返している。
ポンドもユーロも昨年6月以降の下落基調の中では中間的な反騰を何度も入れており、今回も同様の短期的な戻りにとどまる可能性もあるが、これまでのドル全面高をやや過剰だったとして修正的な動きに入っている印象もあり、週末の米雇用統計が冴えないようだと米長期債利回り低下とドルストレートでのドル安が継続する可能性もあるところと思われる。その際はドル円も全般のドル安に圧迫されて市場介入後の切り返し一巡により142円以下へ押し返される可能性もあると思われる。
【NYダウ大幅上昇、米長期債利回りの急低下は一服感】
NYダウは9月30日に安値で28715.85ドルをつけて1月5日の史上最高値36952.65ドル以降の安値を更新したが、10月3日に前日比765.38ドル高と反騰、4日も同825.43ドル高と大幅続伸して3万ドルを回復した。
米経済指標は弱めの数字が続いているが、10月3日は米ISM製造業景況指数が2020年5月以来の低水準まで低下したことで米FRBによる大幅利上げ姿勢が鈍るとの期待感から米長期債利回り低下を見ながら急伸した。4日も昼過ぎに豪中銀が市場予想の0.50%利上げに反して0.25%利上げにとどめたこと、夜は8月の米JOLTS求人件数が前月比110万人減の1010万件となり減少規模がパンデミック発生直後の2020年4月以来の規模で市場予想の1077.5万件を大幅に下回ったことにより、米FRBの利上げ姿勢を鈍らせる動きとして買われている。
一方で米10年債利回りは前日比変わらずの3.64%と落ち着き、30年債利回りは0.02%上昇の3.70%。2年債利回りは0.02%低下の4.10%となった。10年債利回りは9月28日に4.02%をつけたところから急落に転じ、10月3日は前日比0.19%の大幅低下となり、4日も3.65%まで下げたもののその後は戻した。30年債利回りも9月28日に3.91%まで上昇したところから低下に転じ、10月3日は0.11%低下となり4日も3.64%まで下げたもののその後は持ち直している。2年債利回りは9月26日に4.36%まで上昇したところから低下に転じて10月3日は0.17%低下となり、4日も一時は4.00%まで低下したがその後は持ち直している。
米長期債利回りは9月後半にかけての大上昇が一服しているものの、直前の上昇が大きかったことで反落規模も目立っているが、歴史的な高騰水準から転落したとまでは言えない。
米経済指標が弱ければ利上げペースが鈍化して株式市場へのプレッシャーが後退するから買われるという状況は、経済指標が強く景気拡大による能動的な株高とは異なり継続性には疑問符も付く。現状からさらに米長期債利回りが大幅低下し、パウエル議長らFRB高官が従来からの「景気よりも物価抑制を最重要課題」と強調してきた姿勢に変化が見られれば、テクニカル・リセッションとなった米国経済も軽い景気減速程度として下げたところは買い拾われる展開となっても不思議ないが、FRBの「景気よりも物価抑制」姿勢が変わらないとすれば株式市場の上昇及びポンドやユーロの反騰もやや過剰反応だったとしてドル高株安の再開へ回帰してしまう可能性もあると注意したい。
ジェファーソンFRB理事は10月4日の講演で「高インフレが持続する可能性が高まっている」「インフレを2%に戻す決意であることを断言したい」「我々は物価上昇に対し断固として行動し、さらに必要な措置に取り組む」と述べており、ここ最近の米地区連銀総裁らの発言等も従来の姿勢からの大きな変化は見られない。
【60分足一目均衡表など】
60分足の一目均衡表では10月4日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は10月4日夜の下落時に30ポイントを割り込み、いったん戻したものの5日午前の一段安で再び30ポイントを割り込んでいるので、40ポイント以下での推移中は20ポイント割れを試す可能性があるとみる。ただし40ポイント超えからは反騰入りの可能性を優先して50ポイント台回復を目指すとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、143.20円を下値支持線、144.20円を上値抵抗線とする。
(2)144.20円以下での推移中はまだ一段安余地ありとし、143.20円割れからは142円台後半(143.00円から142.50円)への下落を想定する。142.50円以下は反騰注意とするが、ドル全面安が続く場合は142円台序盤へ向かう可能性もあると注意する。
(3)144.20円超えからは上向きとし、144.50円超えからは145円へ迫る上昇を想定する。144.80円以上は反落注意とするが、144円台を回復しての推移なら6日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
10/5(水)
休場、中国、インド
OPECプラス閣僚級会合
10:00 (NZ) ニュージーランド中銀(RBNZ) 政策金利 (現行 3.00%、予想 3.50%)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 54億ユーロ、予想 40億ユーロ)
16:55 (独) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 45.4、予想 45.4)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 48.9、予想 48.9)
17:30 (英) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
21:15 (米) 9月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (8月 13.2万人、予想 20.0万人)
21:30 (米) 8月 貿易収支 (7月 -707億ドル、予想 -677億ドル)
22:45 (米) 9月 サービス業PMI改定値 (8月 49.2、予想 49.2)
23:00 (米) 9月 ISMサービス業景況指数 (8月 56.9、予想 56.0)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
29:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁裁、講演
10/6(木)
休場、中国
09:30 (豪) 8月 貿易収支 (7月 87.33億豪ドル)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 -1.1%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前年同月比 (7月 -13.6%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.3%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 -0.9%)
20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.3万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 134.7万人)
26:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、質疑応答
26:00 (米) クックFRB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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