ドル円見通し 英中銀QE再開契機に米長期債利回り低下で一時144円を割り込む(22/9/29)

ドル円は29日未明には144円を一時割り込んで143.89円まで下げた。しかし144円割れに対しては押し目買いが入って29日午前序盤は144.40円台へ戻している。

ドル円見通し 英中銀QE再開契機に米長期債利回り低下で一時144円を割り込む(22/9/29)

英中銀QE再開契機に米長期債利回り低下で一時144円を割り込む

〇昨日のドル円、144.90をつけ22日以降の高値更新するも新たな介入への警戒感強まり145円へ進めず
〇英中銀のQE再開発表でドル安反応、29日未明に144円を一時割り込み143.89まで下げる
〇米長期債利回り低下とドル安を歓迎しNYダウは前日比548.75ドル高と上昇、7日ぶりの反騰に
〇144.70超えからは145円突破を目指す、145円突破からは9/22の介入前高値145.89を試す流れとみる
〇143.89割れからは143円前後への下落を想定、143円以下は反騰警戒

【概況】

ドル円は9月28日未明に144.90円を付けて9月22日の日銀介入による暴落で付けた安値140.34円以降の高値を更新したが、市場介入に先立って9月14日にレートチェックを入れた時の高値144.95円に迫った状況で新たな介入への警戒感も強まって145円へ進めず、英中銀が英国のトリプル安阻止のためにQE(量的金融緩和)を再開すると発表したことをきっかけに英欧と共に米長期債利回りが急低下したことでドル安反応となったために29日未明には144円を一時割り込んで143.89円まで下げた。しかし144円割れに対しては押し目買いが入って29日午前序盤は144.40円台へ戻している。
英中銀のQE再開という奇策が米長期債利回りの大上昇とドル全面高に急ブレーキを掛ける口実となったが、果たしてこの効果が継続的なものになるのか一時的なものに終わるのか、今晩の欧米市場で改めて確認する必要があるのではないかと思われる。

【英中銀、QE再開するも緊急利上げはせず】

英中銀(BOE)は9月28日に金融市場安定のためにQE=量的金融緩和を再開すると発表した。10月から開始予定だった量的金融引き締めによる資産売却を10月末へ延期、9月28日から10月14日まで国債購入を上限設定無しで行うとした。
英国はトラス政権が9月23日に大規模減税政策を発表したところからポンドが急落、英国債価格急落、英FT100株価指数も急落してトリプル安の様相となり、市場では英中銀がポンド暴落阻止へ向けて緊急利上げをするのではないかとの見方も出ていた。しかし利上げは選択肢とならずにQEを一時的に再開するという奇策を打ち出したことがサプライズとなり、発表後にはポンドが乱高下して一時は9月26日夜高値以降の安値を更新する場面もあったが、米長期債利回りが英国及び欧州の主要長期債利回りが低下したことに同調して急低下したためにポンド、ユーロ、豪ドル等が反騰入りし、それまでのドル全面高からドル全面安へと風向きが変わったことでドル円も145円到達への挑戦をいったん見送って失速した。

英中銀は11月の次回金融政策委員会においてはマクロ経済環境を評価して行動するとし、緊急利上げの可能性を否定して「インフレ抑制のために必要な金利変更を躊躇しない」とした。また量的金融引き締めによる資産売却については開始を延期したが年間で英国債を800億ポンド売却して保有残を7580億ポンドに削減する目標設定の変更はしないとした。

【米長期債利回り低下、NYダウは7日ぶりの反騰】

米長期債利回り低下とドル安を歓迎してNYダウは前日比548.75ドル高と上昇、前日まで6営業日の続落から7日ぶりの反騰となり、ナスダック総合指数も前日の小幅高から28日は222.14ポイント高と続伸した。
一方で米10年債利回りは一時4.01%を付けて12年ぶり高値水準を更新していたが、英中銀のQE再開発表をきっかけに低下に転じて前日比0.21%低下の3.74%となり、1日の低下幅としては2009年3月以来で最大規模となった。30年債利回りは0.12%低下の3.71%、2年債利回りも0.15%低下の4.14%となった。

9月22日の日銀による市場介入と9月28日の英中銀によるQE再開は、これまでのドル全面高を放置してきた主要中銀の姿勢に大きな変化をもたらすレベルまでドル高が進行したことを反映しているのかもしれないが、米国の大幅利上げ姿勢が継続するならば市場介入や金融緩和への逆行等は一時的な反応にとどまる可能性もあると思われる。
シカゴ連銀のエバンス総裁は28日、「市場のボラティリティーが制約をもたらす可能性がある」としたものの米FRBが現状の大幅利上げ継続姿勢を軌道修正するものではなく、「政策金利を現行の3.00〜3.25%から来年3月までには4.50〜4.75%に引き上げて当面はその水準を維持することが適切」との見方を示している。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、市場介入による暴落からの反騰により9月22日夕高値を前回のサイクルトップ、22日夜安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとして高値形成期を27日夕から29日夕にかけての間と想定してきた。
9月29日未明に144円をいったん割り込んだため、28日未明高値で直近のサイクルトップを付けたと思われる。ボトム形成期は27日夜から29日夜にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期にあり、144円割れから戻しているので直近のボトムを付けて新たな強気サイクル入りを試しているところと思われる。144.70円超えからは強気サイクル入りと仮定して10月1日未明から5日未明にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では9月29日未明への反落で遅行スパンが悪化したが、先行スパンの下限を試したものの転落を回避して戻している。このため遅行スパンが好転するところからは上昇再開とみて高値試し優先とするが、29日未明安値を割り込む場合は両スパンそろっての悪化となるため遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は9月29日未明への下落時に30ポイント台へ低下してから50ポイントまで戻しているため既に上昇再開に入っている可能性がある。40ポイント割れからは下げ再開とするが、55ポイント超えからは70ポイントを目指す上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、143.89円を下値支持線、144.70円を上値抵抗線とする。
(2)144円以上での推移中は上昇再開入りの可能性を優先し、144.70円超えからは145円突破を目指すとみる。145円手前では再び売られやすいと注意するが、145円突破からは9月22日の介入前高値145.89円を試す流れとみる。
(3)143.89円割れからは143円前後への下落を想定する。143円以下は反騰警戒とするが、144円以下での推移が続く場合は30日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/29(木)
17:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
17:15 (欧) エルダーソンECB理事、講演
18:00 (欧) 9月 経済信頼感 (8月 97.6、予想 96.0)
18:00 (欧) 9月 消費者信頼感確定値 (速報 -28.8)
21:00 (英) ハウザー英中銀エグゼクティブディレクター、講演
21:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (8月 0.3%、予想 1.5%)
21:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (8月 7.9%、予想 9.5%)

21:30 (米) 4-6月期 GDP確定値 前期比年率 (改定値 -0.6%、予想 -0.6%)
21:30 (米) 4-6月期 PCE(個人消費)確定値 前期比年率 (改定値 1.5%、予想 1.5%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE確定値 前期比年率 (改定値 4.4%、予想 4.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.3万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 137.9万人、予想 138.3万人)
22:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
26:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、パネル討論会
26:00 (欧) レーンECB理事、講演
29:45 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演

9/30(金)
06:45 (NZ) 8月 住宅建設許可件数 前月比 (7月 5.0%)
08:30 (日) 8月 失業率 (7月 2.6%、予想 2.5%)
08:50 (日) 8月 小売業販売額 前年同月比 (7月 2.4%、予想 2.7%)
08:50 (日) 8月 鉱工業生産速報値 前月比 (7月 0.8%、予想 -0.2%)
08:50 (日) 8月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (7月 -2.0%、予想 1.8%)
10:30 (中) 9月 国家統計局製造業PMI (8月 49.4、予想 49.4)
10:45 (中) 9月 財新製造業PMI (8月 49.5)
14:00 (日) 9月 消費者態度指数・一般世帯 (8月 32.5、予想 33.5)
14:00 (日) 8月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (7月 -5.4%、予想 -3.9%)
15:00 (英) 4-6月期 経常収支 (1-3月 -517億ポンド、予想 -433億ポンド)
15:00 (英) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 -0.1%、予想 -0.1%)
15:00 (英) 4-6月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 2.9%、予想 2.9%)
16:55 (独) 9月 失業率 (8月 5.5%、予想 5.5%)

18:00 (欧) 8月 失業率 (7月 6.6%、予想 6.6%)
18:00 (欧) 9月 HICP(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (8月 9.1%、予想 9.7%)
18:00 (欧) 9月 HICPコア指数速報値 前年同月比 (8月 4.3%、予想 4.7%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作の実施状況(8/31-9/30)
21:30 (米) 8月 個人所得 前月比 (7月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 PCE(個人消費支出) 前月比 (7月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 PCEデフレーター 前年同月比 (7月 6.3%、予想 6.0%)
21:30 (米) 8月 PCEコアデフレーター 前月比 (7月 0.1%、予想 0.5%)
21:30 (米) 8月 PCEコアデフレーター 前年同月比 (7月 4.6%、予想 4.7%)
22:00 (米) ブレイナードFRB副議長、会議挨拶
22:45 (米) 9月 シカゴ購買部協会景況指数 (8月 52.2、予想 51.7)
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 59.5、予想 59.5)
24:30 (欧) シュナーベルECB理事、講演
29:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、会合閉会挨拶

注:ポイント要約は編集部

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