ドル円 まさかの介入!先週レンジ内での取引継続(週報9月第4週)

先週のドル円は、東京市場の営業日が3日しかない中で金融政策イベントが続きました。

ドル円 まさかの介入!先週レンジ内での取引継続(週報9月第4週)

まさかの介入!先週レンジ内での取引継続

〇先週のドル円、FOMCと日銀会合後にドル買い円売り強まり145.90レベルへ年初来高値更新
〇その後実弾介入で5円以上もの円急騰劇、140円台前半にまで円高が進む
〇今週は円安に振れれば介入懸念、円高に動けば長期的なドル買い需要か
〇今週は140〜145円の間での動きとなりそう、懸念材料は欧州通貨安によるドル買いの動き
〇140.40レベルをサポートに144.70レベルをレジスタンスとする流れとみる

今週の週間見通し

先週のドル円は、東京市場の営業日が3日しかない中で金融政策イベントが続き米国は0.75%利上げ、日本は現状維持と日米金利差拡大が続くことを材料にドル買い・円売りが続くという見方が週初から続きました。FOMCでは144円台後半と年初来高値144.99レベルは試せず日銀会合に。日銀は予想通りの現状維持に加え必要とあれば緩和とヘッドラインが出たことで一気に145円超え。しかし、145円に乗せてからは達成感もあったのか143円台半ばまで反落という動きでした。

荒れ相場はそこからで欧州市場序盤に改めてドル買い・円売りが強まり145.90レベルへと年初来高値を更新すると、神田財務官は為替介入はスタンバイ状態と発言。この発言を多くの市場参加者は口先介入に過ぎないと甘く見ていましたが、実際に実弾介入に動いたことで5円以上もの円急騰劇を演じ、その後円安に動いた後もおそらくは再び介入で140円台前半にまで円高が進みました。

先週のイベントはこれだけで多くを語れるまさかの実弾介入となりましたが、そこまでの神田財務官の発言を見ていると9月8日の三者(財務省、日銀、金融庁)会談で介入の実施を決め、15日のレートチェックをした際には既に米国側の了承を取っていたのではないかと見られます。

介入が入った日のNY時間には米国も介入に理解を示しましたし、岸田首相も訪米していましたので、介入に向けて相当綿密に準備を進めていたものと思われます。介入実施そのものが困難と見られる中で、今回の財務相の動きは先週の臨時コラムにも書いた通りですが、お見事としか言えません。

皆が甘く見ていたので、介入金額はそれほど大きくはない(1兆円程度?)と推測していますが、それも30日の介入実績公表でわかりますので、金額次第では今後の介入スタンスの足元を見られるリスクはあります。ちなみに、介入の原資は外為特別会計で現在120兆円ほどあります。現金としての保有はそのうち多くて2割でしょうが、徹底的に介入を実施するのであれば120兆円、140円換算で8600億ドル程度となります。

前回1997〜1998年の円買い介入は6日間実施され、1日あたりの金額は10〜200億ドルでしたが、果たして先週の金額がどの程度であったかは興味がありますが、外為特別会計の平均保有コストは1ドル104円程度ですから、なんと40円抜き!それが国の利益になると考えるならば、多少は気合を入れた介入で円高に振れさせても良いと思うのは私だけでは無いはずです。

今週は円安に振れれば介入懸念、円高に動けば長期的なドル買い需要ということになりますが、この長期的なドル買い需要をつぶすくらいでないと、投機筋の攻撃を受けますので次の一手も興味深いところです。神田財務官のお手並みを拝見したいですね。

おそらく今週は140〜145円の間での動きとなりそうですが、懸念材料は欧州通貨安によるドル買いの動きでしょうか。テクニカルにも見ておきましょう。日足チャートをご覧ください。

8月下旬の安値と先週高値との61.8%押しが139.69、先週安値が140.34、間にちょうど140円の大台があり、サポート側は140円が強いサポートになると見られますが、先週安値の水準が今週はサポートとなるでしょう。いっぽうで上値は145円が介入警戒ラインですから145円ですが、先週高値からの下げに対して78.6%(61.8%の平方根)戻しが144.70となっています。

今週はこれら2つのターゲットから140.40レベルをサポートに144.70レベルをレジスタンスとする流れを見ておこうと思います。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

9月26日(月)
**:** NZ市場休場(夏時間開始)
16:00 デギンドスECB副総裁 ☆、ドイツ連銀総裁 ☆、リトアニア中銀総裁講演
16:30 パネッタECB理事講演 ☆
17:00 スペイン中銀総裁講演
17:00 ドイツ9月ifo企業景況感 ☆
22:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
23:00 ボストン連銀総裁講演 ☆
23:30 ポルトガル中銀総裁講演
25:00 (アトランタ連銀総裁講演)
25:30 (ダラス連銀総裁講演)
27:35 NZ中銀総裁講演

9月27日(火)
19:15 (シカゴ連銀総裁講演)
20:00 フランス中銀総裁講演 ☆
20:30 パウエルFRB議長講演 ☆
21:30 米国8月耐久財受注
23:00 米国9月消費者信頼感 ☆、リッチモンド連銀製造業景況指数
23:00 米国8月新築住宅販売
22:00 米国7月住宅価格、ケースシラー住宅価格

9月28日(水)
08:50 日銀会合(7月)議事要旨公表
09:35 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
10:30 豪州8月小売売上高
15:00 ドイツ10月消費者信頼感 ☆
15:45 フランス9月消費者信頼感
16:15 ラガルドECB総裁講演 ☆
21:30 米国8月卸売在庫
23:00 米国8月住宅販売保留件数
23:30 週間原油在庫統計
27:00 (シカゴ連銀総裁講演)

9月29日(木)
09:00 NZ9月企業信頼感
16:00 パネッタECB理事 ☆、リトアニア中銀総裁講演
16:30 ポルトガル中銀総裁講演
17:00 デギンドスECB副総裁講演 ☆
18:00 ユーロ圏9月消費者信頼感 ☆
18:30 南ア8月PPI
21:00 ドイツ9月CPI速報値 ☆
21:30 米国4〜6月期GDP確報値 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
26:00 レーンECB理事講演 ☆

9月30日(金)
06:45 NZ8月住宅建築許可
08:30 本邦8月失業率・有効求人倍率
10:30 中国9月製造業PMI ☆
10:45 中国9月MarkIt製造業PMI ☆
15:00 英国4〜6月期GDP改定値 ☆
15:45 フランス9月CPI速報値 ☆
16:00 トルコ8月貿易収支
16:55 ドイツ9月失業率
18:00 ユーロ圏9月CPI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏8月失業率
19:00 本邦9月平衡操作(介入)実施状況 ☆
21:00 南ア8月貿易収支
21:30 米国8月個人所得・消費支出 ☆
22:00 フレイナードFRB議長講演 ☆
22:45 米国9月シカゴ購買部協会景況指数 ☆
23:00 米国9月ミシガン大消費者信頼感
24:30 シュナーベルECB理事講演 ☆
29:15 NY連銀総裁講演 ☆

10月2日(日)
**:** 豪州夏時間開始

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

9月19日(月)
ドル円は東京市場が休場となる中で米金利上昇の動きとともにドル買いとなり、NY市場が始まる頃に143.64レベルの高値をつけました。米10年債利回りは2011年以来の3.518%まで上昇したものの、NY市場では米金利が低下する動きとともに下押し。LDN市場もエリザベス女王国葬で休場だったため、全般に動きは鈍い状況でした。

9月20日(火)
三連休明けのドル円は仲値のドル売りと米金利低下の動きもあって東京前場は上値が重い展開が続きました。しかし、下がったところではドル買いを考える向きが依然として多く上昇に転じると、海外市場では再び米金利上昇の動きに引っ張られてドル買い、NY市場朝方には143.92レベルの高値をつけました。引けにかけては横方向もみあいの動きで引けています。

9月21日(水)
ドル円は、プーチン演説を控えてユーロじり安の動きからドル買いが先行しました。欧州市場序盤に演説内容が予備役30万人の招集であったことから、戦争長期化を嫌気したユーロ売りが対円でも見られ143.34レベルまで押したもののそこまで。その後はFOMCに向けてドル買いに転じました。FOMC結果はドットプロットがタカ派であったことから144.70レベルの高値をつけましたが、会見ではいつかは利上げペースを落とすとも発言したことで米金利が急低下し、ドル円も143円台半ばへと押した後に144円台に戻して引けました。

9月22日(木)
ドル円は前日のFOMC、そして日銀会合と日米金利差拡大が続くことから朝からドル円、クロス円での円売りが強まり、後場には145.90レベルまでドル円は上昇していました。欧州市場序盤に神田財務官が介入はスタンバイの状態と発言したものの、口先介入に過ぎないと甘く見ていたところに実弾介入が入ったことで、140円台半ばまで5円以上もの円急騰。その後、143円台半ばまで戻していたところ、NY市場で改めて円買いが強まり140.31レベルの安値をつけ、142円台に戻して引けと荒っぽい1日となりました。

9月23日(金)
東京市場が休場であったこと、また介入警戒感も強かったことから東京時間は動かず。海外市場に入りユーロドルでのユーロ売りが進んだ動きとともにドル円ではドル買いとなり、NY引け間際に143.46レベルまで上昇し高値圏での引けとなりました。

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