ドル円揉み合い、ドル高リラ安継続でトルコリラ円は上値重い展開
〇トルコリラ円、9/19午前序盤のドル円下落時に7.81まで下げ、夜にかけてドル円上昇時に7.87をつける
〇しかし勢い続かず、9/20午前序盤に7.81を再び試す展開
〇対ドル、9/19は安値18.30をつけ昨年12/23以降の取引時間中最安値更新、終値ベースの史上最安値更新
〇9/22のトルコ中銀金融政策委員会、金利据え置きが予想中心値だが、2会合連続利下げ予想も
〇イスタンブール100株価指数急落、歴史的な大上昇に対して急ブレーキがかかった印象
〇7.85以下での推移中は下向きとし、7.80割れからは7.75前後への下落を想定する
〇7.87超えからは上昇再開の可能性を優先して、7.90前後への上昇を想定する
【概況】
トルコリラ円の9月16日は7.87円から7.81円の取引レンジ、17日早朝の終値は7.83円で前日終値の7.86円からは0.03円の円高リラ安だった。週間では9月9日終値7.81円から0.02円の円安リラ高だった。
9月19日は7.86円から7.81円の取引レンジ、20日早朝の終値は7.83円で先週末と変わらず。
トルコリラ円は7月後半から概ねドル円と同調した動きとなり、ドル円が9月14日午前に144.95円をつけてから日銀のレートチェックによる介入警戒で142.54円へ急落したため、トルコリラ円も13日夜安値7.77円から14日午前高値で7.94円へ急伸したところから14日夜安値7.81円まで失速した。その後もドル円を見ながらの展開で、15日午後に7.87円まで戻してから16日午前にドル円が下落したところで7.82円をつけ、いったん7.87円へ戻したところも再び売られて16日夜には7.81円まで安値を切り下げた。
9月19日は午前序盤のドル円下落時に7.81円まで下げ、夜にかけてのドル円上昇時に7.87円をつけたものの勢いは続かず、20日午前序盤に7.81円を再び試している。
【ドル高リラ安継続、昨年末以降の安値更新】
ドル/トルコリラの9月16日は18.29リラから18.23リラの取引レンジ、17日早朝の終値は18.25リラで前日終値の18.26リラからは0.01リラのドル安リラ高、週間では9月9日終値18.23リラから0.02リラのドル高リラ安だった。
9月19日は18.30リラから18.23リラの取引レンジ、20日早朝の終値は18.28リラで週末終値の18.25リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。
8月18日のトルコ中銀による予想外の利下げ強行から1ドル18リラの壁を超えてリラ安が進行しているが、終値ベースでは9月15日終値18.26リラで史上最安値を更新していたところから19日終値18.28リラへと最安値を更新した。取引時間中の史上最安値は12月20日の18.36リラだが、16日安値18.29リラ、19日安値18.30リラをつけて昨年12月23日高値10.06リラ以降の取引時間中最安値を更新している。ベンダーによっては18.32リラの安値提示もみられる。
日々じわじわと安値更新を続けているものの18.25リラを超えるリラ安水準での売り圧力もあり勢いは今年5月の下落時等と比較すればやや鈍いが、着実なリラ安の進行が続いている印象だ。
【トルコ中銀による2会合連続の利下げはあり得るか】
9月22日のトルコ中銀金融政策委員会(MPC)では政策金利の週間レポレートは現行の13.0%で据え置きが予想中心値となっているが、一部には12.0%へ1.0%の追加利下げ予想もある。
トルコ中銀は2021年9月から同年12月への4会合連続利下げにおいては、9月に19.0%から18.0%へ、10月には16.0%へ、11月に15.0%へ、12月に14.0%としてきた。その後は7月まで7会合連続で現状維持としてきたのだが、利下げ再開となった8月会合では1.0%の小幅利下げにとどまったため、2会合連続で1.0%の小幅利下げを行う可能性も考えられる。現状でも他の主要国と比較すれば二桁の高金利状態にあるため追加の小幅利下げなら金融市場への影響は小さいものに留まり、利下げによる景気テコ入れの効果が大きいとエルドアン政権が判断する可能性もあると思われる。
しかし、連続利下げとなればエルドアン政権とトルコ中銀の利下げ政策がさらに継続的になる可能性が高まり海外からの信用度を削ぎ、国内においてもリラ放れが進みインフレが一層エスカレートして国民の不満が高まることも懸念される。欧米とは異なる金融政策上の価値観を背景としているため、エルドアン政権の政策判断については為替市場の一般常識では測れない部分もあるため、まずは結果と市場反応をしっかり見定めたいところだ。
【イスタンブール株価指数の急落】
9月19日のイスタンブール100株価指数は先週末比5.26%安の大幅下落となったが、9月14日に3715.28の史上最高値をつけたところまでは歴史的な大上昇だったものの当日の急落で前日比6.09%安の急落となり、9月15日にも同2.43%の大幅下落となっていた。9月14日高値から19日安値3199.54までは13.9%の急落であり、歴史的な大上昇に対して急ブレーキがかかった印象だ。
パンデミックからの景気回復による世界的な株高基調に加え、リラ暴落による通貨インフレによりトルコ株価指数は急上昇してきた。ドル換算すればリラ暴落分により海外勢から見た場合の実質的な上昇率は小さいとはいえ、投資家にとってはドル買いリラ売りと株買いを合わせれば投資妙味の高い状況が続いて半ばバブル的な上昇感もあったのだが、主要国の大幅利上げが相次ぐ中でトルコの利下げが場違い感を強めていること、リラ防衛のための外貨規制や融資規制等の強化により金融機関による融資に混乱が生じていることも影響して急落商状に陥ったといえる。
先進主要国の金融引き締めが一層エスカレートすれば新興国への投資マネーが逆流するために新興国は利上げを強いられているところだが、そうした流れに逆行し始めていることが高値警戒感からのパニック売りを招いているのだが、欧米によるロシア制裁に関してトルコ金融機関やロシアとの通商関係にあるトルコ企業への連座的な制裁発動の可能性が高まってきていることも影響していると思われる。今後の金融政策におけるかじ取りを誤ればリラ安と株安によりトルコ金融市場が混乱を増す可能性もあると注意したい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月13日夜の急伸により9月9日夜と13日夜の両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしたが、ドル円の急落によりトルコリラ円も失速したために9月14日朝高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りした。ボトム形成期は16日夜から20日夜にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期にあるが、19日午前安値で直近のサイクルボトムをつけて戻してから再び失速しているため、19日午前安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとなる可能性がある。
このため、19日夜高値を上抜く場合は19日午前ないし直前安値をボトムとした強気サイクル入りとして20日の日中から21日午前にかけての間への上昇を想定するが、19日午前安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りの可能性もあるとみて週後半へ続落しやすいとみる。
60分足の一目均衡表では、7.80円台での持ち合いのために方向感に欠けるが、先行スパンから転落中は遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は9月19日夜の上昇局面で60ポイントをつけたがその後に50ポイントを割り込んでいる。55ポイント超えからは上昇再開とみるが、50ポイント以下での推移中は下向きとし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.80円を下値支持線、7.87円を上値抵抗線とする。
(2)7.85円以下での推移中は下向きとし、7.80円割れからは7.75円前後への下落を想定する。7.75円以下は反騰注意とするが、7.80円を割り込んだ後も7.83円以下での推移なら21日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。また円高ないしリラ安が厳しくなる場合は7.70円台序盤(7.73円から7.70円)へ下値目途を引き下げる。
(3)7.85円から7.87円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみるが、7.87円超えからは上昇再開の可能性を優先して7.90円前後への上昇を想定する。7.90円前後は反落警戒とするが、7.87円を超えた後も7.85円以上での推移なら21日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
9月22日
16:00 9月 消費者信頼感指数 (8月 72.2)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 13.0%)
20:30 週次 外貨準備高 9/16時点 グロス (9/9時点 736.8億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 9/16時点 ネット (9/9時点 140.9億ドル)
9月23日
16:00 8月 海外観光客数 前年比 (7月 52.84%)
9月26日
16:00 9月 製造業景況感 (8月 102.1)
16:00 9月 設備稼働率 (8月 76.7%)
注:ポイント要約は編集部
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