ユーロ 年初来安値を更新後の調整局面(週報9月第2週)

先週のユーロドルは、ECB理事会が最大の注目材料でした。

ユーロ 年初来安値を更新後の調整局面(週報9月第2週)

年初来安値を更新後の調整局面

〇先週のユーロドル、ECB理事会で予想通り0.75%の利上げに初動はユーロ買いの動き
〇しかしラガルドECB総裁の次回10月でいったん様子見とも取れる発言を受けユーロ売りに
〇エネルギー情勢も影響、中長期的にはユーロ売りの動きの方が強まっていく可能性は高い
〇現状の通貨の強弱は最強が米ドル、次に資源国通貨、弱いのが欧州通貨、最弱が日本円
〇今週は0.9930レベルをサポートに、1.0130レベルをレジスタンスとするレンジとみる

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、ECB理事会が最大の注目材料でしたが、予想通り0.75%の利上げとなったことで初動はユーロ買いの動きに。しかしラガルドECB総裁の会見で0.75%の利上げ幅は標準では無いことや、9月の利上げを含めてあと2回から5回の利上げと少ない方を取れば、次回10月でいったん様子見とも取れる発言を受けユーロ売りに動きました。しかし、他のECBメンバーがタカ派な発言も行い、理事会当日はほとんど方向感が無いままに終わりました。

そして翌金曜日は改めて引き締め継続の思惑が広がりユーロ買いとなりましたが、これは利上げが先行する米国を見て、欧州も現状のインフレを抑えるためには利上げ幅が0.5%であってもしばらくは継続する可能性のほうが高いのではないかという利上げ継続のコンセンサスが形成された結果と言えます。

しかし、冬場に向けてのエネルギー情勢も大きく影響しますので、ノルドストリーム再開の行方に注目が集まりますが、ロシアは明らかに対ロ制裁への対抗措置でガス供給をストップしているため、欧州の中でもロシア産天然ガスへの依存度が高い国がどうなるのかを考えると、先が見えない中で中長期的にはユーロ売りの動きの方が強まっていく可能性は高いと思います。

現状の通貨の強弱では、最強が米ドル、次に強いのが資源国通貨、弱いのが欧州通貨、最弱が日本円という序列が出来てしまっています。ドル高は米国の輸入物価を下げる効果があるため、11月の中間選挙までは調整が入ったとしても、ドルの独り勝ち状態が続きやすい地合いと言えます。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

年初来安値を更新後の調整局面

長期的な平行下降チャンネル(青)はいまだに有効です。現在は先週付けた年初来安値0.9865レベルからの買い戻し局面にあり、8月高値と9月安値(=年初来安値)の半値戻しとなる1.0115でいったん止まっている状況です。年初来高値からの長期レジスタンスライン(青の太線)が今週は1.01台半ばから前半へと下げていますので、上値の目途としては同水準を見ておくとよいでしょう。

いっぽうで下値は先週安値0.9865となり、短期的には同水準を下抜けるほどの勢いは無いと見ています。来週にはFOMCもありますので、今週は調整のもみあいとしてレジスタンスラインを試した後は再びユーロ安という展開を考えたいところです。今週は0.9930レベルをサポートに、1.0130レベルをレジスタンスとするレンジを見ておくこととします。

今週のコラム

ポンドも対円では上昇していますが、対ドルでは景気後退が長期化するとの見方からコロナショック時の安値を下抜け、ついに1985年以来の安値をつけ始めました。ポンドドルの四半期足チャートを見ておきましょう。

年初来安値を更新後の調整局面 2枚目の画像

年初来安値は1.1410レベルですが、これよりもポンド安はプラザ合意のあった1985年1.1052レベルで当時はドル高が進み過ぎ、1985年2月にはポンドだけでなくドル円も262.80レベルというとんでもないドル高になっていました。

そして同年9月にはプラザ合意によって強力な協調ドル売り介入が行われ、ドル切り下げが行われました。当時と今とでは経済情勢も金融市場を取り囲む環境も全く異なりますが、テクニカルという観点ではポンドの下値目途として考えておくべき水準となります。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

9月12日(月)
15:00 英国7月貿易収支、鉱工業生産
16:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
21:00 シュナーベルECB理事講演

9月13日(火)
15:00 ドイツ8月CPI
15:00 英国8月失業率
18:00 ユーロ圏9月ZEW景況感
21:30 米国8月CPI ☆

9月14日(水)
15:00 英国8月CPI ☆
18:00 ユーロ圏7月鉱工業生産

9月15日(木)
15:00 ドイツ8月WPI
15:45 フランス8月CPI
18:00 フランス7月貿易収支
20:00 ポルトガル中銀総裁講演

9月16日(金)
15:00 英国8月小売売上高
17:00 フィンランド中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏8月CPI

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

9月5日(月)
ユーロドルは金曜NY市場でノルドストリームのオイル漏れで再開を延期というニュースが既に入っていたこともあって週明けの下げ幅はそれほど大きくは無かったものの、ユーロはギャップダウンで始まることとなりました。欧州市場序盤には0.9878レベルと年初来安値を更新しましたが、欧州市場昼頃には週末安値圏まで値を戻しました。NY時間は米国が休場ということもあってほとんど動きは見られないままでした。

9月6日(火)
ユーロドルは米金利上昇によるドル高(ユーロ売り)とユーロ円での円売り(ユーロ買い)の動きが重なり、前日安値を下回る動きとはなったものの、引けにかけては戻したことで始値比では24pipsほどのユーロ安に留まりました。いっぽうユーロ円は、139円台半ばから141円台後半へと2円を超える円安となり、円独歩安の印象を強める動きとなっていました。

9月7日(水)
ユーロドルはNY市場までは0.99を挟んで上下する動きとなっていましたが、ロシアはエネルギーを武器にしない、部品が揃えばノルドストリームはすぐに再開する、ノルドストリーム2の計画再開にも前向きといった話が伝えられ、欧州天然ガス市場が下げると、ユーロドルは高値1.0011レベルとパリティを回復しそのまま高値圏での引けとなりました。

9月8日(木)
ユーロドルはECB理事会を前にしてパリティ前後でのもみあいを続けていましたが、ECB理事会でコンセンサス通りの0.75%利上げが発表され1.0030レベルの高値をつけました。しかし、イベント通過で利食い売りも出る中でラガルド総裁が会見で引き締めは今回も含めて2回より多く5回より少ない、0.75%は標準ではないと発言したことで0.9931レベルまで売りが広がりました。その後別のECB関係者が次回も0.75%の可能性はあるとの発言に引けにかけては買い戻しが目立ちパリティに近づいての引けとなりました。

9月9日(金)
ユーロドルは前日ECB理事会における大幅利上げと今後も利上げが続くであろうとの思惑が改めて意識されユーロ買いが先行、ドル円でのドル売りの動きも手伝って欧州市場序盤には1.0113レベルの高値をつけました。その後は根強い景気後退懸念と週末前のポジション調整とで1.00台半ばでのもみあいのまま引けました。

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