来週の米FOMCにらみつつ荒っぽい値動きも
〇先週のドル円、年初来高値超え145円手前まで急伸後に調整の動きで141円半ばまで下げる
〇ユーロ/ドルはザラ場ベースで0.9864まで下落し年初来安値を一時更新
〇黒田日銀総裁「急激な為替変動は企業の不確実性高め好ましくない」とコメント
〇20-21日に予定される米FOMCを念頭に入れつつ今週も基本的にはドル高傾向が続く見通し
〇今週のドル/円予想レンジは、140.50-144.50
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルがさらに続伸。再び年初来高値を超え一時144.99円と、145円手前まで上昇する局面も観測されていた。
前週末は、ロシアのガスプロムが「3日朝まで」としていた欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム1」の稼働停止を延長すると発表したことが話題に。一方、中国四川省の成都市がロックダウンを延長すると発表したことが、サプライチェーンに与える影響などとともに懸念されていたようだ。
そうした状況下、ドル/円は寄り付いた140.10円レベルを週間安値に右肩上がり。前週記録した高値140.80円をアッサリ超えるとストップロスを巻き込みつつ、あれよあれよという間に145円寸前までドルは急伸している。しかし、心理抵抗でもある145円にとどかなかったこともあり、その後はやや調整と思しき動きが優勢に。141円半ばと目先高値から3円を超えるなかなか大きな下げを記録したのち、週末NYは142円台を回復し越週となった。
また、ユーロ/ドルは結果として持ち直したものの、週のザラ場ベースでは0.9864ドルまで下落し、年初来安値を一時更新している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「ロシア情勢」と「円安けん制」について。
前者は、点検終了期限切れとなる3日を迎えてもガス供給は再開されなかった「ノルドストリーム1」について、ロシアのペスコフ大統領報道官は「欧州ガス供給危機を引き起こしたのは西側諸国」などと責任転嫁したうえ「経済制裁が解除されるまで、欧州へのガス供給を停止し続ける」と強気のスタンスを示していた。完全に政争の具にしている感を否めない。一方、ロシアが実効支配するザポロジエ原発はIAEAによる調査が開始されたものの、依然としてロシア軍と思しき砲撃が続くなど前途は多難。実際、「砲撃で送電線が切断された」や「核燃料や放射性廃棄物の貯蔵施設など複数の建物に大規模な損傷を確認」といった報道も伝えられるなど、幾度となく危険な兆候が取り沙汰されていた。続報を含め、今週も引き続き動静には要注意だ。
対して後者は、円全面安が続くなか、米財務省報道官が「イエレン財務長官は7月の訪日時から為替のスタンスは変わっていない」と述べ、依然として為替介入には慎重なスタンスであることを示唆。市場の円売り安心感を醸す結果に。その後、「財務省・日銀・金融庁の3者会合開催」や「岸田首相と黒田日銀総裁が会談実施」といった報道が相次ぐなか、後者において黒田氏から「急激な為替変動は企業の不確実性高め好ましくない」、「一日に2円も3円も動くのは急激な変化」−−といったコメントが発せられると、週末にかけての円買戻しを誘発していた。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円相場は、なかなかの荒れ模様。週明けスグの安値140.07円から約5円上昇するも、そののち3.5円下落し、再び1円ほど戻して週末NYを大引けている。基本的なドル高基調は今週も継続すると予想されるなか、引き続き荒っぽい相場展開には注意が必要かもしれない。また、先週は最終的に値を戻し、「パリティ(1ユーロ=1ドル)」を回復したとはいえ、依然として予断を許さないユーロ/ドルの動きなどにも注目だ。
依然として、市場筋による各国の金利情勢に対する関心は高い。先週は7日にカナダそして8日にはECBがそれぞれ「0.75%」の利上げに動くなか、米国もいまだ積極的な利上げスタンスにあることが明らかとなった。パウエルFRB議長やウォラーFRBからは強気コメントが実際に聞かれている。20-21日に予定される米FOMCを念頭に入れつつも、日米金利差拡大観測などもあり、今週も基本的にはドル高傾向が続く見通しだ。たとえ調整が入ってもドルは底堅く推移するとの見方も少なくない。
テクニカルに見た場合、ドル/円は起点を8月2日130.40円と考えても、1ヵ月強で14円を超えるドル高・円安が進行したが、さすがに145円を前に一旦上げ止まった。1998年高値の147.64円も依然として視界内に捉えられているものの、先週高値などでドルは今週も上げ渋る動きとなるのかに注目だ。超えれば当然147.64円を目指す展開となりそうだが、先週観測された下押し3.5円はたとえ調整にしても「底が浅い」との声も多い。果たしてどちらに動くのか、次の一手には要注意。
今週は、8月の消費者物価指数や同小売売上高、9月のミシガン大消費者信頼感指数速報値などの発表が予定されている。ただ、いわゆる「ブラックアウト期間」で米通貨当局者発言が制限されるため、それがどの程度市場動意に影響を及ぼすのかしっかりと注視しておきたい。
そんな今週のドル/円予想レンジは、140.50-144.50円。ドル高・円安については、まず143円そして143円半ばなどをめぐる攻防に注目。超えれば144円半ば、そして年初来高値144.99円がターゲットに。
対してドル安・円高方向は、先週安値の141.51円が最初のサポートとして意識されている。底堅いイメージもなくはないが、しっかり下回ると140円割れも否定できない。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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