ドル円見通し 大上昇一服で145円手前から調整安、3/31や6/16に近い動きか(週報9月第二週)

9月7日高値144.98円から9月9日安値141.49円までは3.49円の急落だが、前述の2例に近い短期的なふるい落としと思われる。

ドル円見通し 大上昇一服で145円手前から調整安、3/31や6/16に近い動きか(週報9月第二週)

ドル円見通し 大上昇一服で145円手前から調整安、3/31や6/16に近い動きか

〇先週のドル円、145円に届かずに一旦利益確定売り優勢週末一時141.49円まで下げ142円台後半で越週
〇日銀の実弾介入の可能性は低いものの、口先介入や円安水準への牽制等警戒しての円買いドル売りか
〇ユーロ22年ぶり安値0.9862ドルから8日ECB後にパリティ超え、9日夜は1.0188ドルまで切り返す
〇主要国利上げの中日銀は出遅れ、ドル円の上昇基調の土台、日米金利差変わらず
〇143.25円を下回るうちは9日夜安値割れから141.00円前後への下落余地あり
〇141.49割れを回避する場合143.25円超えから上昇再開、144円、145円を試す動き

【概況】

ドル円は9月7日夜に144.98円を付けて2021年1月6日底102.57円以降の高値を更新したが、145円に届かずにいったん利益確定売り優勢となり、9日午前にかけては144円を挟んだ揉み合い推移が観測。昼過ぎに岸田首相と会談した黒田日銀総裁の発言、夕刻にかけてユーロやポンド、豪ドル等が反発したこともあり19時台安値で141.49円まで下げた。9月7日夜高値からの下げ幅は3.49円に拡大したが、9日夜には米セントルイス連銀のブラード総裁が9月FOMCでの0.75%利上げ支持を表明するなどで米2年債利回りは14年ぶり高値へ上昇したこともあり、142円台後半へ持ち直して越週となった。

【日銀総裁の口先介入】

日銀の黒田総裁は岸田首相と会談、為替動向や国内外の経済情勢などについて意見交換したが、会談後に黒田総裁は「急激な為替の変動は企業経営を不安定にし将来の不確実性を高めるので好ましくない」、「1日に2円も3円も動くのは急激だ」と述べ「今後とも為替動向を注視していく」と述べた。
日銀総裁と首相の会談は6月20日以来。岸田首相から日銀に対しての指示や要望はなかったというが、夕刻には松野官房長官が「最近の為替相場は明らかに過度の変動、継続ならあらゆる措置を排除しない」と述べており、市場は実弾介入については現実的ではないとみているものの口先介入や円安水準への牽制等がエスカレートする可能性もあると警戒してポジション調整的な円買いドル売りに動いたというところだ。

9月8日には政府・日銀・財務省が3者会合を開催、その後に財務官が「市場動向や急速な円安を高い緊張感もって注視する」と述べたが従来からのトーンと変わらず市場の反応は鈍かった。
日銀は新型コロナウイルス対応策での社債担保等による資金供給や中小企業への無利子無担保融資等により8月末時点で策で32兆円の資金提供を行ってきたが、これを次回の日銀金融政策決定会合で終了することが検討されているとの報道もあった。

【ECBの大幅利上げ継続とQT開始姿勢、主要国の中でマイナス金利の日銀は出遅れたたま】

欧州中銀(ECB)は9月8日の定例理事会で政策金利を0.75%引き上げたが、次回会合では量的金融引き締め(QT)開始について議論される模様。9月9日には加盟国中銀総裁達による大幅利上げ継続支持発言も相次いだため、ユーロドルは9月6日夜に付けた22年ぶり安値0.9862ドルから8日の利上げ決定時に1.00ドルの等価をいったん超え、9日夜には1.0188ドルまで切り返している。米FRBに対しては大幅に出遅れている状況だが、インフレが深刻化する中でのエネルギー不足による不況入りへの懸念が拡大していても大幅利上げを継続してインフレを抑えたいとの姿勢が強まっており、等価割れの水準に対しては短期的に売られ過ぎとして修正高となっているものの、8月後半からは日足チャートで見れば1.00ドルを挟んだ持ち合い相場にとどまっている中での反発という印象だ。

米FRBによる9月FOMCでの大幅利上げ見通しも強まっており、セントルイス連銀のブラード総裁は9日に「9月20-21日の次回FOMCでは3会合連続での0.75%利上げを支持する」と述べている。またウォラーFRB理事も9日に9月FOMCでの「大幅利上げを支持する」、「少なくとも来年初めまでは利上げを行う必要がある」とし、「6月の時点では政策金利のピークを4%近くと想定していたが、インフレが緩和しないか一段と上昇するなら4%を十分上回る必要がある」と述べている。

9月6日には豪中銀が0.50%利上げ、7日にはカナダ中銀が0.75%利上げ、8日にECBが0.75%利上げを決定する中で日銀はまだマイナス金利状態にとどまっている。口先介入での円安けん制は今後もさらにエスカレートすると思われるが、政策金利の差、欧米との長期金利差、輸入インフレによる経常収支悪化等によるファンダメンタルズに即した円安が投機筋の円売り攻勢でやや急速に進んだとはいえ、歴史的な円安基調は変わらないと思われる。

【米2年債利回りは15年ぶり高値水準、ダウ連騰】

9月9日の米10年債利回りは前日比変わらずの3.32%だったが9月7日に3.37%へ上昇したところから8日に3.20%へ下げて再び戻している。30年債利回りは前日比0.03%低下の3.45%となったが、6日に2014年5月以来の高値水準となる3.51%を付けて8日に3.36%まで下げてから戻しているところだ。
2年債利回りは前日比0.05%上昇の3.56%となり2007年11月以来凡そ15年ぶりの高値水準へ上昇している。原油相場等の下落により来年は利上げペースも落ち着くか頭打ちで高止まりになるとの思惑により、2年債はまだFRBによる利上げピークを想定して上昇の勢いを維持しているが、10年債や30年債はやや鈍化の兆しも見えるところだが、米長期金利上昇基調による日米金利差というドル円の上昇基調の土台は変わらないと思われる

一方でNYダウは前日比377.19ドル高と上昇、7日から3連騰となり、8月16日からの大幅下落に一服感が見られる。ナスダック総合指数は前日比250.18ポイント高と上昇し、8月26日から6日までの7日間続落から3連騰で戻している。

注:ポイント要約は編集部

【今年3月31日や6月16日への短期急落調整時に類似か】

【今年3月31日や6月16日への短期急落調整時に類似か】

ドル円は7月14日高値139.39円から8月2日安値130.39円まで9.00円の大幅下落となったところから切り返して一段高に入り、8月2日安値から9月7日高値144.98円まで14.59円の上昇幅となった。ここまでの上昇角度は今年2月24日のウクライナ戦争勃発時から5月9日高値にかけて急上昇したところに近いものがあるが、その時は3月28日高値で125.10円を付けたところから3月31日安値121.26円まで3.84円の短期的な急落調整が入ってから切り返して一段高しており、5月24日安値から7月14日高値まで急上昇した時も、途中の6月15日高値135.58円から6月16日安値131.48円まで2日間に4.10円の急落調整が入っている。
9月7日高値144.98円から9月9日安値141.49円までは3.49円の急落だが、前述の2例に近い短期的なふるい落としと思われる。3月31日への急落時並みとすれば141.14円、6月16日への急落時並みとすれば140.88円という下値計算値となるので週明けに141円割れを見る可能性にも注意するが、143.25円を超えるか9月7日夜高値からの下げ幅の半値戻し以上へ切り返す場合は短期的な調整安を消化して次の上昇期に入り高値更新へ向かう可能性が高まるのではないかと思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月9日夜安値141.49円を下値支持線、143.25円を上値抵抗線とする。
(2)143.25円を下回るうちは9日夜安値割れから141.00円前後への下落余地ありとみるが141円以下へ下げる場面あれば買い拾われやすいとみて、その後に142.50円を超えるところからは上昇再開の可能性を優先する。
(3)9月9日夜安値割れを回避するかわずかに割り込んでも切り返す場合は143.25円超えから上昇再開に入った可能性ありとみて144円試しとし、144円超えからは9月7日夜高値144.98円を超えて145円台へ向かう流れとみる。145円前後ではもう一度売られやすいとみるが、143.25円以上での推移なら高値更新を目指す上昇基調での推移が続きやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/12(月)
休場、中国、香港
15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 -0.6%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.9%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 2.4%、予想 1.9%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・物品 (6月 -228.47億ポンド、予想 -223.50億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支・全体 (6月 -113.87億ポンド、予想 -113.00億ポンド)
21:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
26:00 (米) 財務省3年、10年債入札

9/13(火)
08:50 (日) 7-9月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (4-6月 -0.9)
08:50 (日) 7-9月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (4-6月 -9.9)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前月比 (7月 0.4%、予想 0.3%)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前年同月比 (7月 8.6%、予想 8.9%)
09:30 (豪) 9月 ウエストパック消費者信頼感指数 (8月 81.2)
10:30 (豪) 8月 NAB企業景況感指数 (7月 20)
15:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 7.9%、予想 7.9%)
15:00 (英) 8月 失業保険申請件数 (7月 -1.06万件)
15:00 (英) 7月 失業率・ILO方式 (6月 3.8%、予想 3.8%)

18:00 (独) 9月 ZEW景況感 (8月 -55.3、予想 -60.0)
18:00 (欧) 9月 ZEW景況感 (8月 -54.9)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (7月 0.0%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 8.5%、予想 8.1%)
21:30 (米) 8月 CPIコア指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 CPIコア指数 前年同月比 (7月 5.9%、予想 6.1%)
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) 8月 月次財政収支 (7月 -2111億ドル)

9/14(水)
07:45 (NZ) 4-6月期 経常収支 (1-3月 -61.43億NZドル、予想 -47.01億NZドル)
08:50 (日) 7月 機械受注 前月比 (6月 0.9%、予想 -0.6%)
08:50 (日) 7月 機械受注 前年同月比 (6月 6.5%、予想 6.6%)
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 1.0%)
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -1.8%)
13:30 (日) 7月 設備稼働率 前月比 (6月 9.6%)
15:00 (英) 8月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (7月 0.6%、予想 0.6%)
15:00 (英) 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 10.1%、予想 10.2%)
15:00 (英) 8月 CPIコア指数 前年同月比 (7月 6.2%、予想 6.3%)
15:00 (英) 8月 RPI(小売物価指数) 前月比 (7月 0.9%、予想 0.6%)
15:00 (英) 8月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (7月 12.3%、予想 12.3%)

18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.7%、予想 -1.0%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 2.4%、予想 0.1%)
21:30 (米) 8月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (7月 -0.5%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月] 9.8% 8.8%
21:30 (米) 8月 PPIコア指数 前月比 (7月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 PPIコア指数 前年同月比 (7月 7.6%、予想 7.1%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計

9/15(木)
上海協力機構(SCO)首脳会議 9/16まで、ロシア・トルコ首脳会談
07:45 (NZ) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 -0.2%、予想 1.0%)
07:45 (NZ) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 1.2%、予想 0.0%)
08:50 (日) 8月 通関貿易収支・季調前 (7月 -1兆4368億円、予想 -2兆3900億円)
08:50 (日) 8月 通関貿易統計・季調済 (7月 -2兆1333億円、予想 -2兆851億円)
10:30 (豪) 8月 新規雇用者数 (7月 -4.09万人、予想 3.50万人)
10:30 (豪) 8月 失業率 (7月 3.4%、予想 3.4%)
13:30 (日) 7月 第三次産業活動指数 前月比 (6月 -0.2%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 8月 WPI(卸売物価指数) 前月比 (7月 -0.4%)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調済 (6月 -308億ユーロ、予想 -325億ユーロ)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調前 (6月 -246億ユーロ)
18:15 (欧) デギンドスECB副総裁、講演

21:30 (米) 9月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (8月 -31.3、予想 -15.0)
21:30 (米) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.0%、予想 0.0%)
21:30 (米) 8月 小売売上高・除自動車 前月比 (7月 0.4%、予想 0.1%)
21:30 (米) 9月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (8月 6.2、予想 3.0)
21:30 (米) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 -1.4%、予想 -1.2%)
21:30 (米) 8月 輸出物価指数 前月比 (7月 -3.3%、予想 -1.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.7万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 147.3万人、予想 147.8万人)
22:15 (米) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 0.6%、予想 0.1%)
22:15 (米) 8月 設備稼働率 (7月 80.3%、予想 80.3%)
23:00 (米) 7月 企業在庫 前月比 (6月 1.4%、予想 0.6%)

9/16(金)
休場、メキシコ、マレーシア
北大西洋条約機構(NATO)会合 9/18まで
11:00 (中) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 2.7%、予想 3.2%)
11:00 (中) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 3.8%、予想 3.8%)
15:00 (英) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.3%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 -3.4%、予想 -3.7%)
15:00 (英) 8月 小売売上高・除自動車 前月比 (7月 0.4%、予想 -0.7%)
15:00 (英) 8月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (7月 -3.0%、予想 -3.4%)
18:00 (欧) 8月 HICP(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 9.1%、予想 9.1%)
18:00 (欧) 8月 HICPコア指数改定値 前年同月比 (速報 4.3%、予想 4.3%)
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (8月 58.2、予想 59.5)

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