ドル円の急落調整で5日ぶり反落、ドル/トルコリラの下落基調は続く
〇トルコリラ円、9月7日高値7.95到達、ドル円急落に伴い9日夜安値7.75まで下落
〇ドル高リラ安は継続、9日も終値ベースで最安値更新、取引時間中最安値18.36へ迫る
〇エルドアン大統領、外貨準備高増に自信との報道あり、ただしネット外貨準備高は大幅な過少状態
〇9/22次回トルコ中銀会合、8月に続き小幅な利下げか
〇8月消費者物価上昇率は前月比やや鈍化、利上げによる景気テコ入れを試みる可能性も
〇ドル円上昇再開の場合リラ円も追従しやすい、7.87を超える場合は7.90円台前半を目指すとみる
〇7.75を割り込む場合は7.60円台後半への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の9月9日は7.90円から7.75円の取引レンジ、10日早朝の終値は7.81円で8日終値の7.88円からは0.07円の円高リラ安だった。
8月2日以降はドル円の急上昇と連動した動きを続け、9月5日から8日までは4連騰の上昇となり9月7日には高値で7.95円をつけて7月18日以来の高値水準としたが、ドル円が9月7日夜高値で144.98円をつけて145円に迫ったところで行き詰まったために8日は新たな高値更新へ進めず、9日はドル円が日銀と政府による円安への牽制発言等から19時台安値141.49円まで急落したためにトルコリラ円も同時刻に7.75円まで急落した。ドル円がその後に142円台を回復したためトルコリラ円も7.80円台まで戻したが、9月7日高値7.95円から9日夜安値7.75円まで0.20円の下落幅となり、9月6日午前安値7.70円からの急上昇幅の0.25円に対して8割を削った。
週間では9月2日終値7.69から0.12円の円安リラ高だった。
【ドル高リラ安継続、終値ベースの史上最安値更新も続く】
ドル/トルコリラの9月9日は18.25リラから18.20リラの取引レンジ、10日早朝の終値は18.23リラで前日終値の18.23リラと変わらずだが、小数点3桁での終値は18.233リラで前日終値の18.228リラからはわずかにドル高リラ安だった。
週間では9月2日終値18.18から0.05リラのドル高リラ安だった。
8月18日のトルコ中銀による予想外の利下げ決定から1ドル18リラの壁を超えてリラ安が進行し、12月23日以降の取引時間中の最安値を9月2日安値18.26リラで更新した後は新たな安値更新を回避しているものの、日足終値ベースでの史上最安値更新は日々わずかずつではあるもののジワジワと続いており、9月9日も最安値で終了している。18.24リラから18.26リラにかけてのゾーンでは底固さを見せており通貨当局がリラ安へのブレーキをかけている印象もあるが、徐々に取引時間中の史上最安値である昨年12月20日の18.36リラへ迫っている状況が続いている。
【エルドアン大統領、外貨準備高増に自信】
9月8日夜に発表された週次の外貨準備高はネットで140.8億ドルとなり8月26日時点の126.2億ドルから増加して8月19日時点の138.8億ドルを若干上回った。これに関してエルドアン大統領は「友好国がサポートしてくれている」と述べて外貨準備高が確りした水準を保てるとの自信を示したと地元紙が9月9日に報じている。
ネットの外貨準備高は8月序盤に61億ドルまで急減して20年ぶりの低水準に陥っていたところから倍増しており、大統領は「順調に外貨準備高は増加に転じ、中銀を強くしている」とした。
トルコは現時点で中国、UAE、カタール、韓国と通貨スワップ協定を締結しており総額は280億ドル規模とされるが、この他にサウジとの通貨スワップ協定締結を目指し、イスラエルやエジプトとの関係改善を進めている。また先日はロシアとの通貨スワップ協定も望んでいるのではないかとのロシア紙報道もあった。
ただし、トルコ中銀によるスワップ取引市場を介してのドル売りリラ買いは9月7日時点で445.2億ドルとされており、ネットの外貨準備高は大幅な過少状態にある。
【9月22日の次回トルコ中銀MPCでの追加利下げは?】
9月22日の次回トルコ中銀MPC(金融政策委員会)では8月に続いて追加利下げがあるのかどうか注目される。まだ市場の事前予想はまとまっていないものの、8月18日にトルコ中銀が政策金利を予想外に14%から13%へと小幅引き下げたが、その後にエルドアン大統領が「利上げは必要ない」として利下げ政策の継続姿勢を示したことにより、8月が小幅な利下げだったことも踏まえて9月も連続で小幅な利下げとなる可能性も考えられる。
9月5日に発表された8月の消費者物価上昇率は前年比80.21%となり7月の79.6%を超えたが、前月比は7月の2.37%から1.46%へとやや鈍化し、生産者物価上昇率の前年比は143.75%となり7月の144.61%から若干低下した。年末にかけてこれらの伸びが鈍化傾向を示すとエルドアン政権と中銀が判断すれば、小幅ずつの利上げにより融資を助長して景気のテコ入れに効果があると判断する可能性はあるのではないかと思われる。
しかし、主要国は「景気よりも物価抑制」の姿勢で大幅利上げを続けており、新興国もそれらの動きに追従している現状を踏まえれば、利下げしてもまだ高金利状態とはいえトルコ金融政策姿勢への不信感からリラ安を加速させかねないと思われる。
【当面はドル円次第】
ドルトルコリラにおけるドル高リラ安基調は継続しているものの、それを超える変動率でドル円が動いているため、トルコリラ円は7月後半から現在までドル円の動向に同調した動きを続けている。
8月2日安値7.27円を起点として9月7日高値7.95円まで上昇したところで一服しているが、ドル円が短期的な調整安を消化して一段高に入るようならトルコリラ円もドル円への追従で7.95円を超えて8円を試す可能性があると思われる。
8月2日からのドル円の上昇角度は今年2月末から5月にかけての間への上昇期に近い勢いであり、トルコリラ円は3月11日安値7.76円から4月28日高値8.87円までの間をドル円に追従して上昇した。ドル円が5月末にかけて反落したところでトルコリラ円も5月26日安値7.71円まで下げ、その後にドル円が一段高したところで6月27日高値8.37円まで戻したもののドル高リラ安が勝ったことで6月の反騰は鈍くなり7月14日にかけてのドル円の上昇へはついて行けなかった。
現状はすでに1か月のジリ高基調にあるが、3月11日から4月28日にかけても1か月強の戻りに終わっていること、ドル円が一段高に入っても上昇速度が鈍りつつドル高リラ安が現状よりも加速し始めるとトルコリラ円の上昇も一巡となり、4月28日から下落に転じた時に近い動きとなる可能性もあるのではないかと注意したい。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月9日夜安値7.75円を下値支持線、7.87円を上値抵抗線とする。
(2)ドル円の上昇再開感が強まればトルコリラ円も追従しやすいところのため、7.87円を超える場合は7.90円台前半(7.90円から7.95円)を目指すとみる。7.94円以上は反落警戒圏とするが、9月9日夜安値割れを回避しつつ7.83円以上での推移なら当面は高値試しを続けやすいとみる。
(3)7.75円を割り込む場合は7.60円台後半(7.70円から7.65円)への下落を想定する。その場合は8月7日高値からの下落が二段下げに入るため、8月2日からの上昇一巡による下落再開感が強まると注意し、特にドル高リラ安が勢い付く場合には下げ足が早まる可能性もあると警戒する。
【当面の主な予定】
9月12日
16:00 7月 失業率 (6月 10.3%)
16:00 7月 経常収支 (6月 -34.58億ドル、予想 -36億ドル)
9月13日
16:00 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 15.2%)
16:00 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 8.50%
16:00 7月 小売売上高 前月比 (6月 -0.7%)
16:00 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 5.5%)
9月15日
17:00 8月 財政収支 (7月 -640億リラ)
20:30 週次 外貨準備高 9/9時点 グロス (9/2時点 723.0億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 9/9時点 ネット (9/2時点 140.8億ドル)
9月20日
23:30 8月 中央政府債務 (7月 362.1億リラ)
9月22日
16:00 9月 消費者信頼感指数 (8月 72.2)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 13.0%)
20:30 週次 外貨準備高 9/16時点
注:ポイント要約は編集部
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