ドル円 145円乗せ失敗で調整局面入り(週報9月第2週)

先週のドル円は、週初から円独歩安の展開となり、ドル円だけでなく主要なクロス円においても円が全面安の展開となりました。

ドル円 145円乗せ失敗で調整局面入り(週報9月第2週)

145円乗せ失敗で調整局面入り

〇先週のドル円、水曜に1998年以来の円安値を144.99レベルまで伸ばす
〇週初から円独歩安、ドル円だけでなく主要なクロス円においても円が全面安の展開に
〇年始のレートをベースに計算すると変動率は27.4%、変動相場制移行後3番目の変動率
〇短期的にはすぐに直近高値の144.99レベルを超えていくことは難しそう
〇今週は141.00レベルをサポートに144.00レベルをレジスタンスとする流れとみる

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初から円独歩安の展開となり、ドル円だけでなく主要なクロス円においても円が全面安の展開となりました。火曜には東京前場の安値140円台前半から143円台まで大台を4つも変え、翌水曜には1998年以来の円安値を144.99レベルまで伸ばしました。145円台にはドル売りオーダーがあったことに加え、145.00にはオプション絡みのオーダーもあったようで防戦売りに押されることとなりました。

週後半はドルの利食い売りが出る中自律反転的に下げ始める動きもありましたが、財務省、金融庁、日銀による三者会談で円安についての話し合いが行われるとのニュースと金曜の黒田日銀総裁による円安けん制発言とで金曜には一時141.50レベルまで押したものの、週間安値には全く届かない展開でした。

本邦サイドで円安懸念を示してもインフレ率が高い米国にとってドル高は輸入物価を抑える効果があり、11月の中間選挙を前に現行水準で介入を認めることは無いでしょう。個人的には160円を超えるようであれば初めて検討する可能性があるかもしれないと考えますが、まだまだ先の話です。

そうなると、このまま1998年高値(147.65レベル)を上抜け、150円、160円と円安が進行するのかというとそこまで単純でも無さそうです。ひとつは日柄的な問題で9月10日から10月2日までは水星逆行期間となり、上下に振れやすくテクニカルなターゲットも効きにくい時間帯となります。この間にはFOMCもありますが、この間に1998年高値はトライしない可能性が高いと考えます。

そして、今年に入ってからのドル円の変動幅です。1月安値が113.47レベルでしたから既に31円52銭も円安が進行していて、これを年始のレートをベースに変動率を計算すると27.4%にもなり、変動相場制移行後3番目の変動率です。まだ9月中旬であることを考えると、変動相場制移行後最大の変動率を記録する可能性は極めて高そうです。ちなみに過去最大の変動率は1979年の29.4%でした。

このように短期的にはすぐに直近高値の144.99レベルを超えていくことは難しそうですが、年内ということになると2022年が変動相場制移行後最大の変動率の一年になるのではないかという気がします。

短期的には今週はFOMC前の週でもありますので、テクニカルに見て行きましょう。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

テクニカルにきれいな動きにした上で、ここからの動きを考えるため、前回の起点から変えて8月安値を起点とした上昇N波動(ピンク)としています。すると127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションが145.02となり、先週高値144.99とほぼ一致しています。短期的な高値をつけたと考えて良いので、今度は押しの安値135.83を起点に先週高値とのフィボナッチ・リトレースメントを計算すると38.2%押しが141.51と先週安値141.50レベルと一致します。

テクニカルな各点はこれらで良さそうだと確信を持って、青の平行上昇チャンネルの中で、先週安値と高値の間で上昇N波動の100%エクスパンションとなる143.05をもみあいの中心と考えることが妥当に思えます。ただ、日柄的に今週は特に振れが大きくなりやすいため、下値には一層の注意を払っておいた方が良いように思います。

そこで、今週は38.2%押しと半値押し140.42の間となる141.00レベルをサポートに144.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておこうと思います。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

9月12日(月)
**:** 香港・中国市場休場
15:00 英国7月貿易収支、鉱工業生産
16:00 トルコ7月失業率
16:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
21:00 シュナーベルECB理事講演

9月13日(火)
**:** トルコ市場休場
09:30 豪州9月消費者信頼感
10:30 豪州8月企業景況感
15:00 ドイツ8月CPI
15:00 英国8月失業率
16:00 トルコ7月鉱工業生産
18:00 ユーロ圏9月ZEW景況感
21:30 米国8月CPI ☆

9月14日(水)
15:00 英国8月CPI ☆
18:00 ユーロ圏7月鉱工業生産
20:00 南ア7月小売売上高
21:30 米国8月PPI ☆
23:30 週間原油在庫統計

9月15日(木)
07:45 NZ4〜6月期GDP
08:50 本邦8月貿易収支(通関)
10:30 豪州8月失業率
15:00 ドイツ8月WPI
15:45 フランス8月CPI
18:00 フランス7月貿易収支
20:00 ポルトガル中銀総裁講演
21:30 米国8月小売売上高、輸入物価
21:30 米国9月NY連銀製造業景況指数 ☆
21:30 米国9月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
21:30 米国新規失業保険申請数
22:15 米国8月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国7月企業在庫

9月16日(金)
11:00 中国8月鉱工業生産、小売売上高
15:00 英国8月小売売上高
17:00 フィンランド中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏8月CPI
23:00 米国9月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

9月5日(月)
週明けのドル円はユーロドルがギャップダウンで始まったことからドル買いが先行したものの実需のドル売りも出た様子で仲値過ぎには週末水準まで押しが入りました。その後はじり高となりNY前場には140.66レベルの高値をつけましたが、米国が休場となっていたことから動きは鈍くレンジも57銭に留まりました。

9月6日(火)
ドル円は早朝に一時的に押しが入った動きを除き終日円安の動きが続きました。米金利上昇、米国だけでなく主要国との金融政策の方向性が違うことを材料にクロス円でも円独歩安の展開となり、仕掛けの円売りから141円、142円、143円と大台を4つも見ることとなりました。材料より円売りしかないという心理から行くところまで行かないと円安が止まらない雰囲気でした。

9月7日(水)
ドル円は昨日も欧州市場昼頃まで一貫して円売りが続きました。144円と145円にオプションがらみのオーダーが入っていると伝えられ、144円はあっさりと上抜けたものの、145円を目前に大台を試し切れず高値は144.99レベルまで。NY市場ではユーロドル買い戻しの動きもあってドル円は143円台半ばまで下押しして引けました。

9月8日(木)
ドル円は終日144円を挟んで方向感が出ませんでしたが、東京後場には財務省、金融庁、日銀による円安対応への三者会談が開かれることを警戒した円買い戻しの動きが見られました。NY市場前には143.32レベルまで水準を下げていましたが、NY市場ではパウエル議長が改めて引き締めの長期化について言及したことから144.44レベルまで買い戻され、その後は引けまで144円近辺でのもみあいとなりました。

9月9日(金)
ドル円は週末前のポジション調整を中心に東京前場からドル売りが先行、米金利低下や黒田日銀総裁による円安牽制発言も手伝って欧州市場昼頃には141.50レベルまで水準を下げました。その後は米金利が上昇に転じ、NY市場ではFRB関係者によるタカ派発言も続いたことから142円台半ばから後半でのもみあいでの週末クローズとなりました。

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