『高値圏から再び反落。西側諸国との関係悪化リスクもリラの重石』
〇今週のトルコ円、週初7.55まで上昇後、週後半にかけ7.33まで下落
〇露土首脳会談による西欧諸国との関係悪化懸念、トルコ6月経常収支の悪化等が背景
〇テクニカルには上方に複数のレジスタンスポイント控え、強い売りシグナルも成立、地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズも、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料揃う
〇トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):7.15ー7.65
今週のレビュー(8/8−8/12)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初7.53円で寄り付いた後、早々に週間高値7.55円(7/28以来の高値圏)まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、@ロシア・トルコ首脳会談に端を発した西側諸国との関係悪化懸念(プーチン大統領とエルドアン大統領はロシアのソチで会談し、エネルギーや貿易分野の協力拡大を合意→トルコがロシアに制裁回避の手助けを行う場合、西側諸国はトルコに懲罰的な措置を講じる可能性あり)や、Aトルコ6月経常収支(結果34.6億ドルの赤字、予想34.0億ドルの赤字)の予想比悪化、B米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りが約3週間ぶり高水準となる2.90%へ急上昇→新興国からの資本流出懸念)が重石となり、週後半にかけて、週間安値7.33円まで下落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間8/13午前3時30分現在)では、7.43円前後で推移しております。尚、今週は一部メディアよりサウジアラビアが最大200億ドル規模のトルコ国債購入やトルコへの預金実施の可能性が報じられましたが、市場の反応は限定的となりました。
来週の見通し(8/15−8/19)
トルコリラの対円相場は、8/2に記録した約7ヵ月ぶり安値7.24円をボトムに反発に転じると、今週初に一時7.55円まで上値を伸ばしましたが、結局週末にかけて反落する冴えない動きとなしました。上方に複数のレジスタンスポイントを控えていることや、日足ベースで強い売りシグナル(一目均衡表三役逆転、弱気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の下落トレンド)が成立していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱い(下落トレンド継続中)と判断できます。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシアとトルコが急接近しているため、西側諸国との関係悪化に繋がる恐れ)や、A米FRBによるタカ派傾斜観測(次回FOMCでの75bp利上げ観測は後退するも、米当局者からは依然としてタカ派的な発言が相次ぐ状況)、B上記Aを背景とした米長期金利の上昇圧力(米長期金利の反転上昇→ドル建て債務を多く抱えるトルコの資本流出圧力)、
Cトルコ中銀の金融緩和継続方針(トルコ7月消費者物価指数が前年比+79.60%と、約24年ぶり高水準を記録したにも係わらず、トルコ中銀はエルドアン大統領の方針に背くことが出来ず7ヵ月連続で政策金利の据え置きを実施)、Dトルコ経済の先行き不透明感(深刻なインフレ発生と景気後退懸念)、E経常赤字と財政赤字の双子の赤字(構造的なリラ売り圧力)、Fリラ売り防衛能力の脆弱さ(外貨準備残高の乏しさ)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は8/18に予定されているトルコ中銀の金融政策決定会合に注目が集まります。
上述の通り、トルコ中銀は強烈なインフレ環境にも係わらず、利上げには踏み切らない可能性が高いことから、同イベント通過後の失望売りに警戒が必要でしょう(先般発表されたインフレレポートで今年末のインフレ見通しが前回の42.8%から60.4%へ上方修正されると共に2023年末のインフレ見通しも前回の12.9%から19.2%へ上方修正されたため、一部でトルコ中銀が来週の会合でサプライズ的にインフレ警戒姿勢を滲ませるのではないかとの見方が広がっています。このため、インフレへの警戒感を示す発言や、利上げの選択肢に関する発言が出てこない場合は、失望感からリラ売りに拍車がかかる恐れがあるため、来週は週後半以降のリラ急落リスクに注意が必要)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.15ー7.65
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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