ユーロ 米国景気後退も視野に上下とも限定的(週報7月第4週)

先週のユーロドルは、ECB理事会が最大の注目材料でしたがコンセンサスの0.25%よりも大きい0.5%の利上げに動きました。

ユーロ 米国景気後退も視野に上下とも限定的(週報7月第4週)

米国景気後退も視野に上下とも限定的

〇先週のユーロドル最大の注目材料、ECB理事会はコンセンサスより大きい0.5%の利上げに
〇今週のFOMCは景気後退リスクによるドル安反応となりそう、ユーロドルでもドル安の動きか
〇パリティ割れで目先の下値は見たため先週下げ止まった1.01台前半がサポートとなりやすい水準
〇レジスタンスは5〜6月に何度も試した1.03台半ばで上値を抑えられやすい
〇今週は1.0125レベルをサポートに1.0325レベルをレジスタンスとする週とみる

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、ECB理事会が最大の注目材料でしたがコンセンサスの0.25%よりも大きい0.5%の利上げに動きました。ラガルドECB総裁は最終的な金利水準は変わらないとしながらもインフレ抑制のために利上げを継続としたことで、米国同様に年内は速く大きく利上げが行われていくこととなりました。

個人的には初回利上げは0.25%からと思っていたのですが、タカ派のECBメンバーによる大幅利上げ要求が思った以上に強かったと言え、まずはゼロ金利、9月にはプラスへと利上げが続くこととなります。また今回の理事会ではイタリアなどの一部の経済が弱い国に配慮してTPI(伝達保護措置)という名称の債券買い入れ措置を導入しました。これは残存期間1年から10年の債券を金融政策の伝達に対するリスクの深刻さにより買い入れ規模を決定するもので、PEPPの再投資とは別枠であるとしました。

大幅な利上げに比べてTPIはわかりにくい部分はあるものの、イタリアを対象国として想定しているが補助的な措置であり、使う必要が無ければ使わないことが望ましいが、必要があれば躊躇なく使うとしました。一部のエコノミストはTPIの効果は限定的だとしているものの、ECBとしても新措置発動で効果なしとは出来ないでしょうから、初回発動後にどのような動きとなるのかを見守りたいところです。

そして今週はFOMCでの0.75%利上げが確実視されていますが、ECB理事会後の動きを見ていると、FOMCでも利上げによるドル高反応よりも景気後退リスクが広がる思惑によるドル安の動きのほうがありそうな反応ですから、ユーロドルでもドル安(ユーロ高)の動きになりやすいと言えそうです。

テクニカルには、いつもの日足チャートをご覧ください。

米国景気後退も視野に上下とも限定的

テクニカルにはきれいな動きとなっていて、年初来高値からの下降チャンネルの中での動きを続けています。7月安値は6月高値を起点とした逆N波動(ピンク)の161.8%エクスパンション0.9943と重なり、その後の動きは6月下旬の戻り高値と7月安値との半値1.0282で止められています。

パリティ割れで目先の下値は見たため、先週の押しで下げ止まった1.01台前半がサポートとなりやすい水準です。いっぽうでレジスタンスは5〜6月に何度も試した1.03台半ばで上値を抑えられやすいと言えます。今週は1.0125レベルをサポートに1.0325レベルをレジスタンスとする週を見ておくこととします。

今週のコラム

今週もユーロ円の日足チャートです。

米国景気後退も視野に上下とも限定的 2枚目の画像

先週時点ではユーロ円は上目線で見ていましたが、ECB理事会を経て大幅利上げが逆に欧州の景気後退リスクを考えさせると同時に、米国でも今後景気後退リスクに直面する可能性が強まってきたとの見方からユーロドルは横方向、ドル円は下げとユーロ円も下げやすい地合いへと転じてきました。

テクニカルな目途はいくつかあるものの、6月下旬高値を起点とした逆N波動(ピンク)を考えると61.8%エクスパンションの137.73、7月安値の136.85といった水準があります。まずは137円台後半、下げ止まらない場合には136円台後半と下方向に余裕を見たレンジを今週から来週あたりに試しやすい流れとなってきたようです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

7月25日(月)
17:00 ドイツ7月ifo企業景況感

7月26日(火)
 (特になし)

7月27日(水)
15:00 ドイツ8月消費者信頼感 ☆
15:45 フランス7月消費者信頼感
27:00 FOMC結果発表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆

7月28日(木)
15:45 フランス6月PPI
18:00 ユーロ圏7月消費者信頼感
21:30 米国4〜6月期GDP速報値 ☆

7月29日(金)
14:30 フランス4〜6月期GDP速報値 ☆
15:45 フランス7月CPI速報値 ☆
16:55 ドイツ7月失業率
17:00 ドイツ4〜6月期GDP速報値 ☆
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP速報値 ☆
18:00 ユーロ圏7月CPI速報値 ☆

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

7月18日(月)
ユーロドルは押しを挟みながらも上昇する一日となりました。6月0.75%利上げの記事を書いたWSJのフェドウォッチャーが7月FOMCも0.75%という記事を書いたことがドル売りの材料とされ、ユーロドルもNY前場に1.02台乗せを見ましたが、引けにかけては1.01台半ばへと押して引けました。

7月19日(火)
ユーロドルは東京市場では動意薄の展開が続いていましたが、欧州市場序盤にECB関係者が今週の理事会で0.5%利上げも協議との発言が入ったことを受けて急速にユーロ買いの動きとなりました。欧州市場昼前には1.0269レベルの高値をつけ、その後は若干上値も重くなったもののNY市場では高値圏でもみあいのまま引けました。

7月20日(水)
ユーロドルはECB理事会を控えポジション調整は一巡した感もありましたが、0.5%利上げを見込む向きが増えていてユーロ買い要因とされるいっぽうで、利上げペースの加速は欧州景気後退を加速させる悪材料となり、木曜のECB結果待ちという流れでした。他にもイタリアの政局不安やノードストリームの修理点検後にガス供給が再開するのかといった不安もあり全体としてはユーロ売りの材料が多い一日となっていました。

7月21日(木)
ユーロドルはECB理事会までは1.02前後でのもみあいを続けていましたが、予想を上回る0.5%の利上げに動いたことで発表直後は1.0278レベルの高値をつけました。しかし利上げを加速するとしながらもラガルドECB総裁が最終的な金利水準は変えないと発言したことで元の水準へと押し、景気後退リスクも強いことから引けにかけては発表前の水準でのもみあいへと戻しました。

7月22日(金)
ユーロドルは東京市場では動きが鈍かったが欧州市場に入り発表された経済指標が弱かったことを受けてユーロ売りとなったものの、同時に米金利下落によるドル売りの動きも強まったことでじり高となりNY市場前には下げ始める前の水準へと戻していました。NY市場では米金利低下の動きによるドル売りに引っ張られてユーロドルも上昇、1.0255レベルまで買い戻された後にやや押しての週末クローズとなりました。

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