6月27日高値からの下落一服、日足は8円を割り込んでの持ち合い
〇トルコリラ円、7/12夕刻7.86まで安値切り下げるも、7/13早朝7.90へ持ち直す
〇対ドル、7/12高値17.40到達、深夜には17.25まで戻しドル高リラ安に一服感
〇ユーロの一時的パリティ割れによるドル高感、対ドルでのリラ売り圧力に
〇エルドアン政権による各種リラ防衛策、効果は見えずリラ安からの脱却難しい状況か
〇7.90以上での推移中は上昇余地ありとし、7.94超えからは7.98前後への上昇を想定する
〇7.86割れからは7.82前後を目指す下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の7月12日は7.94円から7.86円の取引レンジ、13日早朝の終値は7.90円で前日と変わらず。
6月18日安値7.59円からの上昇が6月27日高値8.37円で一巡となり、ユーロ安を先導役としたドル高によりドル高リラ安が進行してドル円も137円到達後の調整で下落したために7月6日夜に7.83円へ下落したが、7月8日夕刻への下落では6日夜安値と同値にとどまってダブル底を形成し、参院選での与党大勝によりドル円が11日午前に一段高したところで7.94円へ反騰した。
ドル円は11日夜に137.75円まで高値を切り上げたもののその後は失速となり12日深夜には136.46円まで下落、ドル/トルコリラはユーロが1ユーロ1ドルのパリティを一時割り込んだことによるドル高局面で売られたためにトルコリラ円は12日夜にこの日の安値となる7.86円まで下げたが、ユーロが下げ渋りに入ってドル高感が緩み、ドル円も136.50円割れから買い戻されたことで13日早朝には7.90円まで持ち直した。
ドル円の歴史的な大上昇の継続感がトルコリラ円にとっては大きな支えではあるが、景気後退懸念が強まる中で為替市場全般がドル高優勢の動きとなり、特に欧州景気減速懸念が強まると対ドルでのリラ売り圧力も続くため、円安とリラ安の力比べが続く状況にある。
【ドル高リラ安にやや一服感】
ドル/トルコリラの7月12日は17.40リラから17.25リラの取引レンジ、13日早朝の終値は17.30リラで前日終値の17.36リラからは0.06リラのドル安リラ高だった。
6月29日のECBフォーラムにおけるパウエル米連銀議長による「景気よりも物価抑制」発言が欧米のリセッション入りへの懸念を強めたことでユーロが大幅下落に陥ったことでドル高感が強まる中でドル/トルコリラもドル高リラ安基調が続いてきた。
6月24日夜に外貨保有企業に対する新規融資規制策が発表されたところで狼狽的なドル売りリラ買いが発生したために6月22日安値17.40リラから6月27日高値リラへ一時的に反騰したものの、この政策の影響も長続きしないとして再びドル高リラ安基調へと進み始め、7月11日には17.40リラをつけて6月27日への下落幅を解消した。
7月12日は夕刻にユーロが1ユーロ1ドルのパリティを一時割り込んでドル高感が強まった局面で17.40リラをつけたが、11日高値と同値としたものの高値更新へは進めず、ユーロが持ち直したことでドル高が緩んだために深夜には17.25リラまで戻し、ドル高リラ安にも若干の一服感をもたらしている。しかしユーロは下げ渋り程度にとどまっており先安感はぬぐえず、米国の金融引き締め姿勢の強化に対して高インフレ下でも利上げを拒否するトルコの金融政策に対する不信感は継続しており、リラ安一服後にはリラ売り攻勢が再開しやすい状況には変わりないと思われる。
【リラ安に対する有効策は乏しい】
昨年9月から12月にかけてトルコ中銀は4会合連続の利下げで政策金利の週間レポレートを19%から14%へと大幅に引き下げたが、その結果、トルコリラ円は6.17円の史上最安値まで暴落し、インフレ率は利下げ開始当時の10%台から6月には消費者物価の前年比で78.62%、生産者物価では138.31%へと悪化した。その後も利上げによるリラ防衛を拒否してトルコ中銀は6会合連続で政策金利を据え置いてきた。
リラ建て預金の為替差損を財務省が補填する政策や、外貨保有企業が基準以上の外貨を保有している場合にはリラ建ての国内金融機関からの新規融資を禁止する政策の発表等、金利調整以外のリラ防衛策を決定してきたが、それらに対する市場の反応は一時的なものにとどまってきた。
エルドアン政権とトルコ中銀は現状においても利上げ姿勢は皆無と言え、これに対して格付け大手のフィッチレーティングスは7月9日にトルコのソブリン債務格付けを従来の「B+」から「B」に引き下げ、見通しを「ネガティブ」とした。
各種のリラ防衛策にもかかわらず外貨準備高は増えず、公然非公然での市場介入によるリラ安抑制についても3月11日の1ドル15リラを突破したところから16リラ、17リラ台へと切り下がりが続いており、市場介入等の効果は見えない。
欧州景気後退懸念が強まっていることも、欧州への輸出拡大期待を削ぎ、世界規模の感染再拡大の兆候も観光収入の回復を頭打ちにする懸念をもたらしている。ウクライナ戦争及びロシア制裁も長期化すればするほどにトルコ経済への悪影響を拡大すると懸念される。
インフレ深刻化が国民生活を厳しくしていることは来年6月とされる大統領選挙でのエルドアン大統領再選にも暗雲をもたらす。
トルコ経済が一段と力強さを増し、昨年来のインフレが落ち着き、リラ安を武器に輸出と観光収入が拡大して経常収支も改善すれば、リラ安からの脱却も可能だろうが、世界規模のリセッション懸念がトルコの楽観的な経済見通しをつぶしかねない状況と思われる。
7月11日と12日は犠牲祭でトルコは連休だったが、13日は失業率、14日には鉱工業生産と小売売上高の発表がある。トルコ中銀の金融政策決定会合は7月21日。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月6日夜と8日夕の両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしたとして、サイクルトップ形成期を7月12日午前にかけての間と想定してきた。
7月12日午前時点では7.87円割れから弱気サイクル入りとしたが、12日夜に7.86円までいったん下げたために7月12日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして13日夕から15日夕にかけての間への下落を想定する。
ただし、7月12日夜から反騰しているため、ボトム形成期を短縮して強気サイクル入りする可能性も考えられるため、12日午後高値7.94円を超えないうちは7.88円割れから下げ再開とするが、7.94円を超える場合は新たな強気サイクル入りとして15日午後から19日午後にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では、7月12日夜からの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜きかえしているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開として遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は7月12日夜に40ポイントを割り込んだところから60ポイント到達まで戻しているので、50ポイント以上での推移中は上向きとし、7.94円超えからは70ポイントを目指す上昇を想定する。ただし50ポイント割れからは下げ再開として30ポイント台への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.88円を下値支持線、7.94円を上値抵抗線とする。
(2)7.90円以上での推移中は上昇余地ありとし、7.94円超えからは7.98円前後への上昇を想定する。7.97円以上は反落警戒とするが、7.92円以上での推移なら14日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)7.88円割れからは弱気転換注意とし、7.86円割れからは7.82円前後を目指す下落を想定する。7.84円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、7.88円を割り込んでの推移なら14日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7月13日
16:00 5月 失業率 (4月 11.3%)
7月14日
16:00 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.0%)
16:00 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 10.8%)
16:00 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.7%)
16:00 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 14.7%)
7月15日
17:00 6月 財政収支 (5月 1439.8億リラ)
7月19日
16:00 7月 消費者信頼感 (6月 63.4)
7月20日
20:30 週次 外貨準備高 7/8時点 グロス (7/1時点 597.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 7/8時点 ネット (7/1時点 75.1億ドル)
23:30 6月 中央政府債務 (5月 336億リラ)
7月21日
20:00 トルコ中銀MPC(金融政策委員会) 週間レポレート (現行 14.0%)
注:ポイント要約は編集部
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