トルコリラ円見通し ドル高リラ安続くもドル円の一段高に押し上げられる
〇トルコリラ円、為替市場全般のドル高進行から、7/11午前高値7.94へ上昇
〇一旦7.87まで下げるもドル円の一段高により持ち直す、7/12朝7.93を超え7/11午前高値に迫る
〇対ドル、ユーロドル一段安等によるドル全面高で新興国通貨が売られ、7/11安値17.40をつける
〇欧米等主要国の金融引き締めによるリセッション懸念深刻化、ドルの買い戻し優勢・新興国通貨安に
〇7.90以上での推移中は上昇余地ありとし、7.94超えからは7.98前後への上昇を想定する
〇7.90割れからは弱気転換注意とし、7.87割れからは7.82前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の7月11日は7.94円から7.87円の取引レンジ、12日早朝の終値は7.90円で先週末終値の7.88円からは0.02円の円安リラ高となった。
ユーロドルやポンドドルが一段安となり為替市場全般のドル高が進んだためにドル高リラ安基調は継続したが、参院選での与党大勝を受けてドル円が11日午前に137.27円へと一段高となり、さらに夕刻から夜にかけてのドル全面高により137.75円をつけて2021年1月6日底102.57円以降の最高値を更新、1998年8月11日天井147.63円の翌月以来24年ぶり安値を更新したため、トルコリラ円は円安に押し上げられて午前高値で7.94円をつけ、夕刻にかけていったん7.87円まで下げた後もドル円の一段高により持ち直した。12日朝には7.93円を超えて11日午前高値に迫っている。
【ドル高全面高で6月27日への上昇分を解消】
ドル/トルコリラの7月11日は17.40リラから17.26リラの取引レンジ、12日早朝の終値は17.36リラで先週末終値の17.27リラからは0.09リラのドル高リラ安だった。
大手格付け会社のフィッチレーティングスが7月9日にトルコのソブリン債務格付けを従来の「B+」から「B」に引き下げ、見通しを「ネガティブ」としたことによるリラ売りに加え、ユーロドルの一段安等によりドル全面高の様相が強まったことで資源通貨や新興国通貨が総じて売られ、ドル/トルコリラも6月27日からの反落を継続して7月11日は安値で17.40リラをつけて6月24日の外貨保有企業への融資規制発表によるリラ買いによる反騰分を解消、6月22日安値と同値として昨年12月23日以降の最安値に並んだ。
6月23日安値まで往って来いとなったためにその後は下落一服でやや戻したものの、昨年12月23日以降のリラ安は3月11日に1ドル15リラを付けたところまでを一段目とし、6月22日までを二段目とし、6月27日から三段目に入り、三段下げへ発展しつつある印象だ。
【リセッション懸念深刻化でドルの買い戻し優勢、新興国通貨安に】
欧米等主要国によるインフレ対策としての金融引き締めがリセッションを招くとの懸念が強まっている。特に6月22日と23日にパウエル米連銀議長が上下院の議会証言でリセッションに言及し、6月29日のECBフォーラムにおいて「景気よりもインフレ対策」と言明したことで金融市場の不安を助長している。
米国での金融引き締めが景気拡大へのブレーキとなること、欧州ではロシアの天然ガス供給停止によるエネルギー不足や電気ガス料金の高騰等による景気後退への危機感が強まっているが、そこに中国の感染再拡大による規制強化再開への懸念も重なっている。
ユーロドルは7月8日夕刻に1.0070ドルまで安値を切り下げたところから米雇用統計を通過して1.020ドルに迫るところまでいったんは戻していたが、7月11日早朝から下落して8日夕安値を割り込み12日早朝には1.0032ドルまで安値を切り下げて2008年7月15日天井1.6035ドル以降の最安値を更新し、2002年12月以来20年ぶり安値となった。
ポンドドルは1.1863ドルまで安値を切り下げて2020年3月20日にパンデミック発生ショックで付けた安値1.1404ドル以来の安値とし、豪ドル米ドルは昨年2月天井以降の安値を更新している。
NZドル米ドルも昨年2月天井以降の安値を更新、南アランドも2021年6月以降の最安値を更新するなど、メジャー通貨と共に新興国・資源輸出国通貨が売られている。
金融緩和による過剰流動性が新興国などへの投資へ向かっていたものの、金融引き締めにより投資マネーの逆流が始まっているが、トルコリラも新興国通貨の中でファンダメンタルズが弱く、インフレ深刻化でも利上げをしない金融政策への不信感が先安感を助長しているといえる。
特に欧州はロシアからの天然ガス供給がメンテナンスを理由にストップしており、ロシア制裁に対する対抗措置として供給停止が長期化する懸念も強まっているが、トルコにとっては欧州向けの輸出や観光収入への影響も無視できなくなるのではないかと懸念される。
7月21日の次回トルコ中銀MPC(金融政策委員会)まで間があるが、6月24日の外貨保有企業への国内金融機関による融資制限等によるリラ防衛策はかえって企業の財務を悪化させかねず、利上げを拒否してまた新たな奇策が飛び出すかもしれないが、フィッチレーティングによる格下げに続いて大手格付け機関がトルコの見通しをネガティブとして強調し始めればリラ売りが勢い付く可能性もあると警戒したい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月6日夜と8日夕の両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしている。サイクルトップ形成期は8日の日中から12日午前にかけての間と想定されるのですでに反落注意期にあり、7月11日午前と12日朝の両高値でダブルトップを付けた可能性もある。
7月11日夕刻安値7.87円を割り込まないうちはサイクルトップ形成期の延長入りによる上昇余地ありとするが、7.87円割れからは弱気サイクル入りとして13日夕から15日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、7月11日午前の上昇から遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは下げ再開とみて安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が早まると注意する。
60分足の相対力指数は7月11日午前の上昇で70ポイントを超えたが12日朝の上昇時では60ポイント台序盤にとどまっており弱気逆行の気配となっている。このため65ポイント超えからは上昇再開とするが、50ポイント割れからはいったん下げに入るとみて40ポイント割れへ向かう流れと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.87円を下値支持線、7.94円を上値抵抗線とする。
(2)7.90円以上での推移中は上昇余地ありとし、7.94円超えからは7.98円前後への上昇を想定する。7.97円以上は反落警戒とするが、7.92円以上での推移なら13日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)7.90円割れからは弱気転換注意とし、7.87円割れからは7.82円前後への下落を想定する。7.82円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、7.87円を割り込んでの推移なら13日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7月13日
16:00 5月 失業率 (4月 11.3%)
7月14日
16:00 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.0%)
16:00 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 10.8%)
16:00 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.7%)
16:00 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 14.7%)
7月15日
17:00 6月 財政収支 (5月 1439.8億リラ)
7月19日
16:00 7月 消費者信頼感 (6月 63.4)
7月20日
20:30 週次 外貨準備高 7/8時点 グロス (7/1時点 597.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 7/8時点 ネット (7/1時点 75.1億ドル)
23:30 6月 中央政府債務 (5月 336億リラ)
7月21日
20:00 トルコ中銀MPC(金融政策委員会) 週間レポレート (現行 14.0%)
注:ポイント要約は編集部
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